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第179話 葡萄畑黎明譚(5)

 チーズさんの魔力は爆発的な発露もまあまあ得意だけれど、24時間持続といったこう、師匠が得意とするような永続魔法も適性がありそう。ただ、永続魔法は本当に魔力の総量が多くないと、続けることができない。

 

 でも、この世界に転写された直後から見ると、何にしても実力を伸ばしつつある。僕たちにはまだ及ばないながらも、この世界の中でいうとランクもレベルも伴ってはいないものの、名を取り戻した時にはかなり爆発的に伸びそう、なきがする。

 

 チーズさんの本名、実のところあにさんは覚えている、らしい。でも、人によってもたらされるのではなく、自分で思い出すことがプロセスとして重要らしく、思い出すまで口外しない、ついでに自分の本名も言ってしまうと連想してしまうから、言わないことにしている、って聞いている。ついでに全く意味がわからないが、救国の魔法使いもついでに本名を名乗って来ない。初めてできた親友が名乗った時に一緒に名乗るみたいなことを言っていた気がするが、何言ってんだコイツって思ったことは心に秘めておくけど顔に出ていたことは否定しない。


 ◇


 兄さんたちが葡萄畑管理人をチョイスしてきてくれたので、木材の乾燥が終わった時点で醸造所を作ってもらう。ただ、中身は空っぽなので収穫時期までにはなんとかしなくてはならないが、ハコモノを作ってもらえるのはありがたい。

 そして、その2家庭はすでに家を有しているので、魔女さんの転移魔法で家ごと基礎ごと転移することで話がついた。すでにこの家ですよーってことで、アオくんが家の四方を囲む魔石を置いてきてあるため、座標さえ決めてしまえば楽勝、とのこと。


 魔法使いさんの要求でキャンプ用の机と椅子をワイナリーの端っこに置いたところ、兄が明らかに自分の【収納】を使って持ち込んだと思うビールを飲みだした。ついでにアオくんと天くんはリボンナポリンと思しきドリンクを飲みだした。

「兄さん、ずるいんだけどー」

「お前こそ交渉してきた兄を労ったらどうだ!」

「そこは感謝してるけど!」


 確かに私が行ったところでここまで問題なく成果は出してこれないとは思うから、感謝はしている。してはいるんだ。でも冷えたビールはずるいと思うんだ。


「こんなかんじでよいか?」

 虹竜の2人はあっという間に醸造所を作ってしまった。横目にみていたけれど、完全に謎魔法でいきなり現れた、というわけではなくちゃんと順を追って建てられてはいたのだけれど、そのスピードが恐ろしかった。そしてなぜか水平だけは自分で確認していた。なんで。

「ありがとうございます!」


「そして、俺たちがするのはこの葡萄畑の管理、なんですね」

 そう、タツミさんが話しかけてくる。家ごと来てくれるとは何ていい人なんだ。

「あ、チーズ。ちゃんとその人たち【地】属性魔法と【植物魔法】の使い手だから、畑管理はイオに教わると早いとおもうぞ~」

「ユウ様!なぜご存知なんですか?私たちの魔法属性を」

 そこで兄があ、まずった。という顔をしている。他人のスキル鑑定は完全に高位の冒険者以外はギルドのみで取り扱われる、個人情報みたいなもの。

「俺、勇者だからうっかり見ちゃった。ゴメンゴメン」

「いえ、ユウ様が私たちの事を気にかけてくださっているだけでいっそ恐れ多いです」

 本当に畏まっているように見えるから、兄マジですごいな。


「育て方、見方などは私がマニュアルを作って記録魔石にいれておいたので、【ステータスボード】にインストールしておいてください。困ったときはメールで連絡ください」

 そう言って我らがチーム全員と、移住チーム全員に魔石を渡す。


 私のもつ【無限フリースペース】はものすごく便利だし、唯一無二だけど、この世界にいるみんなに与えられているこの【ステータスボード】もものすごい便利さだと思う。

 タブレット端末のようなパソコンのようなものが、容量無制限、自動アップデートで全部ついて回っているのがすごすぎる。これも開発者とかエンジニアとかいるんだろうか。剣と魔法の世界だけど?


 手始めに樽作ったりいろいろ必要かとおもったら、その辺はどうも兄がシラタマの職人さんにあたりがあるらしく、依頼してくれる、と言っていた。

「前から言ってるけどお前1人の仕事じゃないからな~みんなでやろうぜみんなで。でもまあ、醸造とか繊細な部分はお前に頼らざるをえないとはおもうけど」

「任せて任せて!まさかチーズ作るより先にワイン造ること人なるとは思ってはいなかったけど、やってみたかったからオッケーオッケー」


 そしてここで、兄ご一行様は明日の店舗の営業があるので、シラタマに帰還する。畑管理はイオくんに教わればいいし、私とアオくんはこの畑まわりの整理・管理、環境を確認しておかなければならないし、なにより王城に併設する温泉を見に行かなければならなかったわけだし。


 そこで意を決したように、虹竜が言いたいことを言い出した。 

「われわれは天様についていきたいのだが」

「天様はその”シラタマ”という国に行くのであれば、我らもついていくが」

「我々の王は、天様だからな」


 そういえばそうだったよね。

 どうするか相談だ。

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