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第174話 瞬きの窟(13)

 ういは何が変化したのかはわからない状態であるが、元気そうにしている。いやほんと、一緒に異世界生活できる期間が増えたのは最高だと思うけど、一体何年生きるようになったのか。カニンヘンダックスは長い子であれば20歳を超えて生きてくれることはあるけれど稀だ。

 とにかくかわいいし嬉しいのでいっぱい撫でまくっていたらちょっと迷惑そうな顔をしている。


「最後に、このダンジョンに名前をつけて。名づけることによりこのダンジョンに【出口戻りの石】が発生し、リスクがすこし減少する」


「名前か~。何がいいかな」

 兄がなんか名づけることに乗り気だ。自分と魔法使いさんの名乗り名適当に決めてたのに。

 

「せんせんも、せんでんもキラキラしてるよね。キラキラ?」

 一緒に天くんも考えている。本当に親子のようだ。

 

「じゃあ…瞬きとか?」

 兄がそう言う。そういえば、アトルではダンジョンのことをなんたらの窟ってついてたから…。

 

「瞬きの窟ってどうだろう?」

 口を出してしまった。

  

「またたきのくつ?」

 どうだろうか。反応を気にしてみる。


「せんせん、せんでん、いいと思う?」

「天様が決められたものは最高です」

「天様は最高です。では、”瞬きの窟”としますね」

 意味合いの方向性がずれているよ、この虹竜。何をもって最高なのか。しかし天くんも生後1年も経ってないのにここまで成長するとは、幼少期を狙う天敵が多いんだろうな。人間の成長と比較すると、とりあえず育たないとヤられる感がある。

 そんなことを考えていたら、2人の竜は手を繋ぎ、繋いでいないほうの手を光る珠に乗せる。そうすると、ダンジョンの空気感が変わり、ここに存在する人数分の”出口戻りの石【瞬きの窟】”が生成され、配布された。

 それをみんなで受け取ると、またも【転送魔方陣】が現れ、そこに入るとミソノ山の山頂に転送された。実際未整備の山林であり、鬱蒼としているうえに木も下の方が丸ごと枝葉が枯れてない状態。蔓と蜘蛛の巣がまあまああり、要するにまあ、ホラー映画の樹海みたいな感じだ。


「我らがダンジョンに封じられて久しい間に、荒れたなあ」

「誰も立ち入らなかったのだなあ」


 虹竜たちは感想を述べている。でも実際、立ち入った人、木の根の隙間から落ちてかわいそうなことになってたよ。危険すぎてこの山に立ち入ることすらやめていたよ。

「お前たち、この山は神域だ。整備した方が運気があがる」

「初回はサービスで我々がやってやろう。ここを護った方が色々と、この世界にとって良いことがあるぞ。そもそもがここが未整備で長期間放置されていたことが大問題なのだが」


 いや、だから、立ち入れないほどの穴。とは思うけど、この竜たちはそれの存在を知らないわけだし、仕方がないか。変に言い訳してもめんどくさくなるだけだし、実際この山の整備をした方が良ことには変わりない。


「要するに、神域みたいなもの?」

「そうだな」 

「祠とか社とか、建てた方がいいのかな」

「なんだそれは?」

「そういうのが私たちの故郷にはあるので必要なのかな、と。ナットにはないのかな?」

 そこで顔を見合わせるアオくんとイオくん。

「そのような名前では聞いたことがないですね」

「初耳です」


 そこに口をはさむ兄。

「シラタマにはあった。あそこ日本に似た文化形成だから、ありとあらゆるものに神性を感じたり祀ったりする感覚というのは、全世界共通というわけじゃないからなあ、というのを俺はここ数年どころか体感30年ぐらいでよーーーく理解した」

「そうなんだ、でもやっぱりうっかり日本の尺度で考えちゃうよね」

「それは仕方がない。うちはうち、よそはよそ、ってことで」


 で、実際何をすればいいのか、虹竜たちに聞いて見る。

「日当たりがよく、森林が整備されている。それだけでいい。それだけで運気があがるだろう」

「まあ、吉祥の王子がいらっしゃるわけだし、これからの運気は右肩上がりになるだろう」


 そう言うと、虹竜は山頂の木に両手を当て、何かを祈るような動作をすると苔が減り、蔓もおどろおどろしい状態から少しまともになり、生えすぎた木は間引きされ、日差しがちゃんと地面まで及ぶようになった。

「こんな感じだな。抜いた木はこれからわいなりーとやらと温泉宿を建築するために必要となるだろうから、先ほど言っていた山の麓の葡萄のあるあたりに積んでおいた」

「くれぐれも維持を怠るなよ」


 半分脅しのようなセリフを吐きながら、環境がすごくよくなった。あとは、ダンジョンの入り口の整備となる。下山しながらあそこのポイントをどうするか考えながら小一時間、問題のない、虹竜により整備された山道を歩いていたら、問題のポイントに到達した。

 整備された、とはいっても木の根についてた苔が半減しているだけで、整備されたことによりよりより、その穴が目視できるようになった。

「これ、橋とかかけないと私と同じように落ちるだろうし、落ちる以外の方法をつくらないとダンジョンにも入れないよね」

「森を維持するといってもこの木の根を抜ける方法をつくらないとあの、かわいそうなことになった人たちと同じ末路になっちゃいますよね」

 アオくんが言う。足元から下5メートル、より見通しが良くなって結構怖い。


「お前こういうの得意だろ?」

「環境整備は、私の仕事ですね。いいですよ、私の願いを最高の形で叶えてくれたお礼にここは無償で」

「金取る相手いないだろ」

「そうですね」

 

 そう言うと、魔法使いさんは2メートルぐらいある杖を取り出し、地面にコツンと当てると、木の根の上にドーム型のコーティングを施行、これでもう落ちることがないね!

「で、ダンジョンへのゲートはどこに作ります?下のフロアに出口のゲートとなるマーキングはあわせてしておきました。」

「王様に相談するしかないんじゃないのかー?結構ここ高難易度だし」

「じゃあ、そういうことで保留しましょう」

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