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第171話 瞬きの窟(10)

 このダンジョンのクリア条件は、レインボードラゴンに導かれた先で演奏を行うか、レインボードラゴンを倒すことによるという。ただ、演奏となる要件を満たせるのは初回踏破パーティのみ、それ以降のパーティーにはその権利が全くなくなるというなかなかの鬼畜仕様であったことを閃閃から教えてもらう。

「僥倖僥倖。天様、本当にあなた様が来てくれたおかげで命が救われました。とはいえ、初回で倒されていたとしたら私たちはそのまま命が尽き、その後の冒険者たちの相手は私たちの情報をもとにした劣化コピーがするだけですが。明日にはここに私たちを模した虹竜がポップアップするかと」

「声帯を得た我らの歌、自分でも楽しみにしている。上手く歌えるといいな」

 閃電もはにかむような笑顔を見せながら、そう言っている。

 ただ2メートルの身長のせいで、上空から音が降ってくるようなイメージだ。


 大体2キロぐらい歩いた場所で虹竜レインボードラゴンは立ち止まる。

 そして手をつないだと思ったら、子供の手遊びと自らの拍手を合わせたような舞を披露する。拍手音がとても子気味良い。それを眺めていると地面が盛り上がり、結構大きなステージが湧いてきた。真ん中には非アクティブな【転送魔方陣】。どうみてもこれ、全員参加型なのでは?

「兄さん、何か、楽器持ってきてる?」

「いや、ない。」

「私、楽器とかってピアノとクラシックギターだよ?」

「俺はエレキギターとボーカルはやったことはある。あとライブハウスで歌ったこともある」

「初耳なんだけど」

「いや、男児の通る道だろ」

「全員じゃないでしょ。しかも兄さん歌が上手かった記憶があまりないんだけど」

「そこはさすがに今の歌聞いてから判断しろよ」

「わかった」

 で、何で参加したらいいんだろうか。セッションがいいとはいっていたが。悩んでいたらアオくんたちが会話に乗ってきた。 


「そういえば僕が師匠に貰ったこの楽器ヴァイオリンっていうんですね。これ、師匠のコピー魔法実験の産物なので見よう見真似で弾いてみたんですけど、音をだすのがやっとだったのが、少しマシになってきた感じです」

「オレのこの笛はチーズのいた世界ではない世界から試しに引っ張ってきた楽器。試しに吹くぐらいしかしてなかったから音程が安定しない」


 そして加わってくる、魔女さん。

「楽器が欲しいのか?実験で探知できた異世界の楽器を結構コピーして遊んでいたことがあってな、割となんでもあるぞ。凍結魔法を行使する前だったから、何でもやり放題だったからな」

 といい、手に取り出したのは神楽鈴。しゃらん、と鳴らす。のはいいとして神社からコピーしたんかい罰当たりな…。

 

 そして突然”幼馴染”に声をかけだす。

「気配を消してさっきから黙っている、たいそうな二つ名をもった魔法使い?会話に入っておいでなさいよ」

 魔女さんの挑発的な物言いから、件の魔法使いを見ると、背中を向け、しゃがみ込み小さくなっている。これはもしかしなくても、音楽が苦手…?

「私の事はほっといてくれ!君の事は!大好きだけど!」

「師匠、分割した記憶すこしもどして恐怖心がなくなったのはいいんですけど、もうちょっと加減というか」

「そんなものは知らないし心得ない。まだ戻していない私の記憶は小さな箱が9個、大きな箱が1個じゃが、こう、ちょどいいのを引き当てて戻したのう!やったね!」

 ほんとブレないなこの人。でもちょっとかわいそうなので、話題をずらすという助け舟をだす。


「魔女さん、私ピアノが欲しいです。あと、兄にはエレキギターとアンプを。あとついでにあればタンバリンをください」

 さて、どんな楽器が出てくるか。


「いいぞいいぞ、ステージに出すぞ。」

 そう言うと、なんてものをコピーしたんだというような我が世界のピアノがステージ上に。ギターはこれ、有名なやつっていうのが2本現れた。タンバリンに至ってはここはカラオケか?というぐらいなバラエティに富んだそれが、4種類、無造作に置かれる。

 そのうち1本をもって魔法使いさんのところにいく。


「タンバリン、使ったことがあります」

「いや、ない。そもそも楽器もうたもリズムもトラウマでしかない。怖い」

 魔法使いさん、見たこともない怯えた顔をしている。いでたちのせいでどこぞのロックミュージシャンみたいになっていると言うのに。

「■■は鈴のような声で歌うんだ。もう何百年も聞いてはいないけど、楽しみではあるんだが、私自身の歌がその…かなり…」


「魔女さんもしかして、大昔、いじってない?かわいそうなぐらい小さくなってるよ!」

「ああ、うん。そこそこ。さすがにかわいそうなのともうすぐでみんなに知れるとおもうから詳しくは言わないが、まあ、聞けばわかるぞ」


 さあ、どっち方面で音がとれないんだこの人は。

 

 そんなことを思っいつつ、ピアノの音を出してみる。さすがにすごいいい音。ちょっとだけ簡単な練習曲を引いてみると、本当にいい音が奏でられてくる。そして問題が発生していることに気が付く。

「これ、未調律なのでは…?音が細かくずれている」

「転写してからずっと私の倉庫に放置だしな、そうかもしれない」

「テヘっじゃないですよ?勿体ない。しかも調律師もいないから、ハンマーもない。音合わせられないじゃないですか」

 

「それは、なおぜるぞ?」

「え?」

「ここは魔法と剣の世界じゃよ?」

 そう言うと軽く杖をふる。いつの間にかタクトみたいな杖に持ち替えている魔女さん。そしてその杖をふるったと同時に正しい音に調律がなされた。

 そこで気持ちよく、正しい音で1曲弾いてみる。やりすぎるとまたずれるし。


 そして周りを見遣ると、虹竜の2人は準備オッケーないでたちで発声練習をしている。他のみんなも思い思いに楽器をいじっている。


 魔法使いさん以外は。これはさすがに救わないと。

 

 「魔法使いさんは、歌とかは気にしなくていいのでこのタンバリンでも振るっていてください。こういう使い方だと、リズム感に自信がなくてもまあ大丈夫ですよ?」

 振るって音を出す方法をレクチャーしてみる。一応声もださないが頷いて受け取ってくれたので、良かったとおもう。

 ここまでトラウマになるほどのダメージ埋め込んだの、想像するに、魔女さんなんだろうな。

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