第168話 瞬きの窟(7)
戦場に返り咲き、兄との通信に介入する。
『これ、一体どういう状況?』
「未踏破の【自然発生】ダンジョンの初回踏破中、レインボードラゴンと戦闘中だよ!で、このドラゴン、言語が通じるか通じないか、わからないんだよね。体力がマックスで一番攻撃的な段階からかなり削ってはいるんだけど、ドラゴンということは天くんと同種でしょ?会話できるかどうか、試せないかと思って」
『天か~?いや、今日明日定休日組んでるから行こうと思えば連れて行けるけど、もれなく奴がついてくるぞ?それでもいいか?』
あ、魔女さんのトラウマ”救国の魔法使い”か。でも自分たちの力で倒してみせよという課題を出してきたのは魔女さんだ。自分たちの力ではないかもしれないけれど、天くんの力は借りたい。そもそもが魔女さんと双子がいずれも会話不能であることから【動物言語】では対応できないということだろう。ウララさんは【動物言語】のレベルが低いわたしと最初から会話が可能だったし。
もしかしたら、昔遊んだ弱らせて声をかけたら仲間になるゲームのように、希少種のレインボードラゴン、仲間にならないだろうかという下心があったりもする。
「なんとかなるように頑張るから、是非来てほしい!そうなるとあと2日間で踏破しなきゃいけないけど」
そう言っているとい兄の横にいつの間にか救国の魔法使いさんが登場。
『いっていいのかい?平原のドラゴンステージが来たと言う事はそれが最後のステージだろうから、明日までには間違いなく踏破できるでしょ。天、他のドラゴンと会えるみたいだよ~』
『よいの?よいの???アオにも会える??』
『会えるよ』
アオくんへのなつき方が本当にすごい。かくいうアオくんとイオくんは楽器演奏が長期化してきて結構汗だくで大変そう。
「何とか繋いでおくから、私めがけて転移してきて!」
『リョーカイ。転移ゲートに今から向かうから頑張って耐えといて』
「お兄ちゃんありがとう!」
戦況としては結構甘くはなく、ドラゴンの歌が途切れないように必死に楽器演奏をする双子。因みに私がたしなんだことがあるのは、ギターとピアノ。今この段階で何か助けになればいいが、全くなる気がしない。そもそもが【無限フリースペース】に楽器類全く入れてもいないし。タンバリンもカスタネットもない。「兄さん、天くん連れてきてくれるんですね」「やっぱりこのドラゴン、オレたちだと倒すことはできても、話すことはできない強さっぽくて」とグループチャットに書き込まれる。さすがに演奏中に喋るのは難しいし、音源の近くでしゃべると大声になるから、さすがに文字になる。
あとはなんとか、この演奏会を兄が来るまでもたせることがミッションとなった。
ちなみに音楽の内容というと、2人の演奏は多少の才能を感じさせるが手習いを少しこえたぐらいでそんなにいつも演奏に没頭しているわけではないのはわかる程度。要するに、まあまあ上手い。レインボードラゴンの歌については、ローレライみたいな恐ろしい感じはなく、なんだか楽しく声を出している、かといって下手でもないといった程度。要するに総じて可もなく不可もなく、普通。
結局私はやれることがあまりにもなさすぎて、手拍子で応援をした。




