第14話 ナットから隣国への出立（１）
魔女さんからのお達しで、最初の隣国へ行く方法について「徒歩」が提案された。
そもそもナット王国は外部から見えることもなく、認知されることもないため、森の中から現れ、森の中に去っていくみたいな感じとなるらしい。
具体的に言うと西側からナットに侵入すると、ナットを素通りして東側に出る仕組みということだった。
あわせてマップも手渡されたので位置を確認すると、地図上の『ナット王国』に認識阻害が発生しているのか、おおよその位置のみしか確認できない。
王国名が認識ができなくなっていることを考えると、もしかして名を失ってるのは国もなのかもしれない。
誰かに聞こうにも復興を進めないことにはまったく誰も国について思い出せないうえに、泊まった時に見せてもらった王城に残されていた諸々の文献ですら自動改ざんされて名前にかかる部分については全面マスキングされているような有様だったので、とりあえず段階的に復興してさえいけば認識阻害は徐々に取り除かれていくだろうとの魔女さんの見解なので、第一歩を踏み出す。
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いきなりこの世界に単独放り出すのは忍びなかったのか、旅のお供に魔女さんの双子の弟子の内の一人、私の家にもきてくれた双子兄のアオくんが付き合ってくれることになった。
私の実力ではまだ他人のステータスは見れないので、どのぐらいアオくんが強いかはわからないうえに具体的にどんな武器を使うのかも知らないけれど、魔女さん曰く「護衛」らしいので、きっと強い（はず）。
弟子の双子（弟）のイオくんは魔女さんの身の回りの世話係で、生活全般のお世話から秘書業務までこなしているという。
そして、どちらかというと前衛バトルスキルをもっているのはアオくん、後衛バトルスキルを持つのはイオくんで、双子ながらの【ミラーリング】というスキルで二人のレベルは共有、アオくんのレベルがあがれば連動してイオくんのレベルも同レベルまであがるという仕組みらしい。
ただそれはスキルやバトルスタイルまでには波及するものではなく、目指す方向性が違うので、スキルはまったく取り方が違うと言っていた。
地図をみてもわかるのだけれど、ナットの国境から隣国の王城の城下町の入り口までは大体徒歩で１日ぐらいとのことなので、家にあったタイヤが太い電動アシスト自転車、要するにファットバイクで行っても良いかと聞いて見たところ、まず王さまに叱られた。
復興した国が商売していくにあたって強みになるよなものの異国への持ち込みは極力秘匿していてほしいらしい。
国が凍結していても、商売っ気を出してくる。
正直オフロードな道が続くので、こう、タイヤの大きな乗り物でサクっといきたいところではあったのだけれども、そう言われたのであれば仕方がない。
そしていよいよ、隣国への旅のはじまりはじまり。
ナット王国から外に出たところ、草原の真ん中に走る簡素な道が続いていた。このまま一本道で隣国までで繋がっているそうで、物流についても馬車であっという間、といった感じだったのだろう。
今日の晩ごはんの材料キットにしてイオくんに渡し、私の分の食糧および牛ちゃんたちから搾った大量の生乳は【無限フリースペース】に保管。
【無限フリースペース】内は電気は通っていないものの、明るさの設定に加え、保管する箇所により時間と温度、湿度のを設定ができることが判明。ういのゆっくりスペースは温度が26度で普通の時間の流れ。野菜や肉、生乳類は時間停止で保管するため温度設定なし。他に、家で冷凍していた肉屋魚類は冷凍のまま場所を移した。そして、狩りで得た糧については熟成を試しているので熟成庫の環境をつくり保管。熟成が完了したら時間停止に変更する。
要するに、使い方がまだちゃんとわかっていない【時間干渉】スキルが今はほぼこの【無限フリースペース】内のみに活用されている状況となっている。
実際【時間干渉】スキルは使用の方法によっては結構危険もはらむため、今は【無限フリースペース】内で条件付けして活用していくにとどめたほうがよいだろう、と魔女さん談。
モヤ王は魔女さん以上に国の要となっているため城から動くことができないため、魔女さんとイオくんが国境まで見送りにきてくれた。
「達者でがんばれ。わたしの魔法はこの世界どこにでも大体及ぶからいよいよ困ったときは強制帰還魔法を行使してよいからな、アオ。」
「■■様、ありがとうございます。ではいってきます」
「アオくんにお世話になります。レベリングと状況確認、いってきます！」
「元気に、いってらっしゃい」
ナットを後にし少し歩みを進めると、手をふる魔女さんとイオくんの姿が認識阻害がはたらきあっという間に見えなくなる。
【無限フリースペース】に思いつくだけ全部入れ、手回り品のみバックにつっこんだ軽装で、ういにリードとハーネスをつけ、帽子をかぶせたうえで散歩するような出立となった。
安全な場所で散歩させ、ある程度いったら休ませてということが道程でできてしまう。
ちなみに今日のジャージはオレンジだ。
