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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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イケメンな隣人の距離が近すぎるから離れて欲しい

作者: たたふた
掲載日:2021/06/19

初めての投稿ですが、読んでいただけると幸いです(^^) 疲れた日にこんな隣人がいたら思いっきり甘えたいと共感してくれれば嬉しいです。

ぜひぜひお楽しみください~~~


恋愛って意外と不自由なんだってことに、三十路になって気が付きました。いや、若い頃は根拠のない自信があったから、バレンタインデーとかクリスマスとかめっちゃ期待してましたけれど。


そりゃー期待しますよ、期待しちゃ悪いかよ。高校のときにいくつかチョコは貰ったけれど、お返し目当ての義理チョコで落胆したのを覚えている。ホワイトデーまでに「おいこばやし、お返しはディズニーの年パスな~」って何度も言われたが、もうその時点で確実に本命チョコの線はとっくに消えている。


大学はマンモス大学で、特にサークル活動もせずぼっちで過ごしていたため、知り合いという知り合いがいないのも悲しすぎる。


1番仲が良かったのは学生課のおっさんだ。

同級生の誕生日や好物なんてしらないが、おっさんのは知ってる。誕生日が近くて話が盛り上がったのを思い出すと、つくづく涙が出てくる。マジでそれくらいしか人と話した記憶がない。


まあ、大学生のときから薄々感じてたけれど、オレは重度のコミュ障だ。そんなオレがコミュ力おばけの陽キャと戦って彼女が出来るだろうか。せいぜい数合わせで飲み会に誘われるのが関の山だろう。


…いや、てか誘われたことが無かった。


誘われても興味ない振りをして断りそうな気がする、オレのことだし。だから彼女がほしくても作り方が分からない訳で。朝起きたら部屋に可愛い子がいないかなとか思うけど、居た試しがない。


何もしないで彼女が出来たら1番楽なのになあ…


彼女は可愛い系もいいけど、ゲームに出てくるような女戦士のキャラクターみたく美形だと最高かな。一緒に暮らしてくれたら絶対に幸せだわ。


なんていうの、お姉さんタイプ?あーでも癒し属性のキャラも捨て難い。うわー、課金して出てこないかな。


「…あー、やばい 休日が終わる………」


バイトでおばちゃんの代わりにシフトに入ったから、久しぶりに平日の休みが取れたのだが、ゴロゴロしていたら13時を過ぎていた。


そう言えば朝起きてから水を飲んだ以外何も食べていない。さすがに空腹に耐えきれなくなってきた。耳につけていたイヤホンをはずして、布団から出る。


(………ん?何だかうるさいな…)


横になっていたときは分からなかったが、隣から物音がする。しばらく前に人が出ていってから空室が続いていたはずだが、誰か引っ越してきたのだろうか。


静かなのが気に入っていたのにと突然の変化に口を尖らせた。スーパーが職場なため店内は四六時中騒がしく、仕事中は棚へ商品を陳列していても買い物客に話しかけられたりと気分的に落ち着けない。


そのためゆったりと自分の時間を満喫できる環境は貴重だったのだ。…まあ、そんなに顔を合わせることもないだろうし別に良いか。


壁に掛けていたキャップを手にして適当に被った。買い物ついでに近所をぶらついたら、ちょっとはクオリティ・オブ・ライフが高くなりそうだ。

適当にそこらへんにあった小銭をポッケに入れて、ボロいサンダルをひっかけた。


ドアをあけて外にでると雲のない良い天気で、人目につかないよう被った帽子も日除けとして活躍しそうだった。エレベーターホールに向かっていると、ちょうど前から人が歩いてきた。


(うわ、背ぇ高いな………)


「こんにちは。あの、いま505から出てこられましたよね?」


「っ!?」


「506に越してきた者です。今日からよろしくお願いします」


「え、あ、は、はい」


な、なんなんだコイツは。いきなり喋りかけてきた?!


「お会い出来て良かったです。ほら、今日は平日ですからお部屋にいないだろうと思っていたんです」


「は、はあ」


「私の部屋って角部屋なので、505の方だけがお隣なんですよ。だから挨拶をしたいなと思ってまして」


返事をするのに精一杯で、内容は全く聞いていなかった。どんなことを言っていただろうか。506とか話してなかったか?そんなことを考えて困惑した表情を浮かべていたのだろうか、目の前の男性に急に申し訳なさそうにされる。


「あ、すみません。お出かけに行かれる途中でしたよね。お引き止めしてしまいました。また今度挨拶させていただきます」


「ど、どうも」


いや挨拶は今してもらったんだが。ぺこっと会釈をしてそそくさとエレベーターへ足を動かした。


「それではよい1日を」


もう十分だって、と心の中でツッコミを入れた。人と話して一気に休日感がなくなってしまったので、美味しいものでも買って食べることにしよう。この時間なら近所の惣菜屋も混んではないだろう。


…あと、気持ちをリセットする為に散歩は少し長めにしたい。河川敷でも通って帰るか。




ーーガチャッ


「………よかった~~~」


散歩から帰ってきて無事あの人と顔を合わせずにどうにか部屋に戻れたのでほっと胸を撫で下ろした。散歩中も玄関先での出来事が気になっていまいち気分転換にならなかった。


買ってきたおかずをキッチンの台の上に置く。久しぶりに店に行ったら食べたことのない料理がたくさん売られていて、結局気になるものは全て持ち帰ってきてしまった。


いくら何も食べていないとはいえ、この量は食べきれない。よく考えたらそこまで好きじゃないのも買ってしまった気がする。


…あー、やはり。さやえんどうが入っているやつが紛れ込んでいた。くそ、ミスってしまった。


嫌いな野菜が入っているものは端に避けて、肉がはいっている惣菜をレンジにいれた。温めている間にすることもなかったので、ぼーっとオレンジの光を見つめて立っていた。


レンジは何分に設定したっけ、あぁ2分か。


うーん、待っている間ヒマだな。


…どうでもいいけど、さっき話しかけてきたあの人はオレの部屋の隣に移ってきたということなんだろうか。ほとんど下を向いていたからあまり顔を見ていなかったが、声からして男性だろう。背も高かったしきっとそうだ。



ーピンポーン


いやな予感がする。もしかしてさっき会った不審者がまた来たんじゃないのか?インターホンをチェックすると眼鏡を掛けた男が立っていた。


誰だか分からず困っていると、男性が喋り出した。


「こんにちは、506に引っ越してきた者です。…玄関のドアが閉まる音がしたので帰られたかと思いまして、改めて挨拶に来ました」


さっきの今ですぐに来るか、普通?変な人だなと思ったが悪い人じゃなさそうだし、居留守をしたらさすがに可哀想な気がした。


というか帰ってきてるのがバレているから居留守は出来ないのだが。


挨拶といっても3分くらいだろうから、先に片付けてしまうのが賢明だろう。


チーンとレンジが鳴り一瞬後ろ髪を引かれたが、仕方がない。平穏な昼メシの為だ。鍵を開けに玄関へ向かった。



「…こんにちは」


ドアを開けると紙袋を持った人がそこに立っていた。うん、たしかにさっき会った人はこれくらいの身長だった気がする。


「あ、どうもすみません、お帰りになったばかりなのに。これ、引っ越しの挨拶にそうめんを用意したんですが、さっきは渡しそびれてしまったので。良ければどうぞ。」


「あ、どうも…ありがとうございます」


なんだ、そういうことだったのか。


律儀に挨拶の品をくれるなんて今どきいないだろうに。そうめんなら茹でればすぐに食えるし、食欲がないときでも食べれるから結構好きだった。相手の目的も分かって安心し、ふと彼を見る。


「、うわっ」


「? どうかされましたか?」


「い、いえ特に……すいません…」


びっっっくりしたー、スゴいイケメンだった。

俳優か何か芸能関係の仕事をしているのだろうか?髪は肩までの長さだったが端正な顔立ちのために違和感がなかった。鼻は日本人らしくない高さで、眼鏡の奥には男の自分から見てもきれいな一重の目と長いまつ毛が輝いていた。


柄にもなく観察に夢中になっていると、いつの間にか浮石さんの顔が目の前にあった。


「お名前は表札にある小林さんで合ってますか?」


「、は、はいっ、こばやしです!あ、あの?!」


「はい?」


「いやっ、ちょっと距離が近くて…その、びっくりして………」


あまりの近さにたじろいだ。長年ぼっちでコミュ障のオレには拒絶反応レベルの距離であった。


「あれ、癒されないですか?」


「えっ、いやされる………?」


「はい」


ニコッと微笑みかけられる。そして何を思ったか上着の内ポケットから紙を出して差し出してきた。


名刺かと思って手にしたが、折りたたまれたチラシであった。開いてみると「カウンセリング」の文字が目に入る。カウンセラーをやっているのか?


「私、浮石(うきいし) (じゅん)と申します。個人で診療所を開いてまして、主に傾聴によるカウンセリングをさせてもらっています。アロマの効果についても最近は勉強しておりまして、診療所にはいくつか私が調合した香料を置いているんですよ」


「えっと、ちょっ…と…、距離が………」


勢いに押されて2歩後ろに下がる。そうでもしないと浮石さんと顔がぶつかりそうだった。


「、おかしいですね、私の所に来る女性の患者さん方はこの距離感が癒されるとおっしゃってくれているんですが…」


「そ、それは………浮石さんがかっこいいからでは…」


「ああ、それはないですよ。恥ずかしながらこの年まで浮ついた話が一つもないんです。距離と癒しの関係についてですが、個人的には近寄ることによって声の響きが変わり、人間にとって落ち着く音になっていると考えているのですが」


うわ、自覚がないイケメンだ。厄介すぎる。どうせ学生時代とかはファンクラブみたいなのがあって、女子が共同戦線を張ったりしてたからモテなかったとか勘違いしてんだろ。それかイケメンな奴の謙遜か真っ赤なウソかどれかだ。


あと浮石さんのとこの患者は顔目当てで通ってるな、これは。


ピー ピー ピー


そんなことをしているとちょうど奥から機械音がしてきた。しまった、レンジを開けないままこっちに来てしまったから鳴っているのか。


当然そんなことを知らない浮石さんは心配そうに尋ねてきた。


「、あの、お部屋からタイマーのような音が聞こえましたが…大丈夫ですか?もしかしてお忙しかったですかね…?」


「ちょっと昼飯をレンジにかけたまま出てきただけで、別に…」


「お料理の最中でしたか」


「あ、いや、近くの店で買ってきただけなんですけど」


「ああ、それはすみません。お邪魔でしたね」


「いえ、全然………あ、良ければ何かいりますか?あの、例えばさやえんどう入りの炒め物とか………」


「え、いいんですか?」


「いやっ、嫌ならぜんぜん…無理に貰わなくていいですけど………」


あわよくば在庫処分が出来ないかと言ってみたが、どうだろう。あんな野菜、オレがどんなに寝ぼけていても間違って食べたりしないだろう。


「いえ、そんな。私さやえんどうが好きなんですよ、良ければぜひいただきたいです」


「そ、そうなんですか…偶然ですね~、はは」


言えない、嫌いなものを押し付けただけだなんて。後ろめたさを感じつつその場に合わせて笑った。しかしまさかもらってくれるとは、世の中なんでも言ってみるものである。


「それじゃあ」と浮石さんの気が変わらない内にと惣菜を取りに行く。


「すいません、それではお邪魔します」


「!!?」


浮石さんから目を離すと、彼も後ろからついて部屋に付いてきてしまった。


(…いっ、今さら戻ってくださいとか言いにくい………!)


幸いにも寝室の部屋は閉めていたので、散らかっているあの惨状は見られずに済んだ。不幸中の幸いと言うやつだろうか。あれはマジで他人に見せられない。



「あ、こ、これです。どうぞ」


キッチンに着き、置いてあった炒め物を渡す。


…ま、まあまあ、すぐ帰るでしょ。

いいじゃん、そうめんもくれたんだし。


「わあっ、美味しそうですね。どこのお店で買ったんですか?」


「商店街の入り口のとこで…」


「へー、今度行ってみます。あ、今少し食べてもいいですか?」


超前言撤回、この人はっきり言わないと帰らないな。つか、家となりだろ。めっちゃ近いじゃん。帰ってから食べるのはダメなのか?


「で、でもっソレ、温めてないので冷たいですよ」


「大丈夫です、熱いものが苦手なのでこれ位がちょうどいいです」


そういうことじゃない。帰って欲しいんだって。普通分かりそうなものだけど天然なのかな、浮石さん。


しかし気の弱いオレは店で貰ったフォークを渡してしまうのであった。ああくそ、言いたいことをはっきり言える大人になりたい。


「じゃあいただきます。…ん、おいしい!特にさやえんどうがシャキシャキしてますね!」


「はは、美味しいですよね…」


きっとオレがさやえんどうの美味しさを理解できる日は一生来ないが、ここは同調しておいた。


さあ、一口食べたらもうここに用はないだろう。

そうめんありがとう、そしてさようなら。


「小林さんも食べないですか?レンジで温めてたんですよね」



「(あなたが帰った後に食べようと思ってました)………はい、食べます」


色々と諦めてレンジを開け、惣菜を取り出す。どうせオレは言いたいことが言えないんだ、従っていた方がいっそのこと楽だ。容器をレンジから出し、しょぼくれながら豚バラ肉を口に運ぶ。朝から何も食っていなかったので、格別のうまさであった。


「ッ~~~うまー」


「ははっ、美味しそうに食べますね」


超ド級のイケメンがオレの顔を見て笑った。空腹だったとはいえ、人の前でオーバーリアクションをしてしまった、恥ずかしい。


浮石さんは炒め物が気に入ったのか、キッチンでの立ち食いにも関わらずショリショリと炒め物を食べ続けていた。帰る気配は一向にしない。


………どうしよう、食べてる間の話が持たないぞ。


「…あ、あのー、浮石さんってアニメとか見ますか」


二切れ目の豚バラを口にしながら質問をした。他の話が見つからなくて、彼が知らなさそうな話題にしてしまった。


「アニメですか?多少なら見ますよ」


「え、そうなんですか。な、なんだか意外ですね…」


適当に振った話題に思いがけず広がりが出てちょっとだけ嬉しくなる。


「患者さんとのカウンセリングの時におすすめを教えて貰ったりするんです。私自身の息抜きにもなりますし、好きですよ」


「オ、オレもアニメ見るんですよ、特に馬車で旅をしながら世界を旅する勇者達の話が好きで。その、立ち寄った場所で取れる果物をジャムにして思い出を忘れないようにするのが結構面白いんですけど…」


「………それって『ももジャム冒険記』ですか?」


「えっ、知ってるんですか!?」


予想外の展開にテンションが上がる。


「いえ、あらすじを知ってる程度で、そこまで詳しくは知らないです。申し訳ありません」


「ぜ、全然大丈夫です!というかむしろ知ってるなんて驚きました。リアルで話せる人がいなくてめちゃくちゃ嬉しいです」


こんなサブカルチャーに縁の無さそうな人がオレの好きなアニメを知っているなんて!普段はTwitterのカギ垢で仲間内と盛り上がるくらいしか語り合う場所がなかったから、自然と口調も早くなっていく。


「オレあのアニメがマジで好きで、一番好きなキャラがシモニスっていう強い子なんですよ。

シモニスはストーリーの序盤で主人公達と出会って、辛い環境から抜け出してパーティーに加わるんですけど、もう初めてテレビで流れたときは録画したのを5回は見ましたね。

その過程も本当に感動モノなんですけど、お気に入りは最終回ですよね。あれは反則ですよ。

普段は冷たい態度なのに、勇者が魔王と戦って勝ったあとに膝枕をするんです。あのシモニスがですよ?!労いとしてやってくれるんですけど、あんなの自分がされたら一気に疲れも吹き飛びますよ。

誰か現実にしてくれたらって思いますけど、そう甘くはないんですよねー。

膝枕なんてオレがされるワケないですし(苦笑)」


言い終わってハッと息を飲んだ。


マズい、ボルテージがMAXになっていて気がついたらオタクみたいな喋り方になっていた。絶対に100パーセントキモいって思われた、死んだ。人生終わった。


おそるおそると浮石さんの方を見ると、彼が予想外のことを言ってきた。


「…膝枕をされたいんですか、小林さん?」


「えっ?!」


「私で良ければ別にいいですよ」


いやいやいや、何故そんなことになる。


オレはアニメの話をしてただけじゃんか。だったらその延長線上の自虐ネタだって何となく分かるじゃん。


「そ、そんな…冗談ですよ。はは」


「そうだったんですか?でもよく患者さんから頼まれて、治療の一環として行ってますよ、膝枕」


「へっ?」


その言葉にピタリと動きがとまる。他の人であったら信じなかっただろうが、この人の言っていることは本当なのだろうと思える雰囲気があった。

つか、膝枕なんかイケメンじゃなかったらワンチャン通報されて犯罪で捕まるぞ。


「遠慮なくどうぞ。きっと安らげますよ」


普通初めて会った人にそんなこと言うヤツがあるか?

そう思う反面、「膝枕」という単語に現金にもオレの身体は反応していた。


テーブルの近くにあった座布団の上に正座をして膝枕の準備をされる。


え、もうこれって確定したの?



「さあどうぞ」


ふらふらと引っ張られるように浮石さんに近寄る。


このまま横たわればあのアニメの名シーンの膝枕が体験出来るのか?


そんなマジでか?いやでも男だぞ、野郎だぞ?!




ーぽすん、


「どうですか、寝心地は?」


(………やってしまった……)


オレの脚は硬いから正直期待していなかったけど、横になってみると浮石さんは男のクセに膝が餅のような感触をしていた。ふわふわモチモチの膝に心が溶かされていく。


え、どうしてこんなに気持ちいいの?

カウンセラーの膝ってみんな柔らかいの?


「…寝心地、いいです………」


特に辛いこともないのに、涙が込み上げてきた。


「それは良かったです。毎日お疲れ様です」


ヤバい、泣きそう。都会でこんなに人に優しくされた事ってあったっけ。


「最近はリモートでの回診も多くなりましたから、家にいることも多いかと思います。気が塞がったときは私を訪ねて下さいね」


ばちりと目を合わせつつも、穏やかに語りかけられる。


どうしてだろう、人と目を合わせるなんて最も苦手なことなのに。浮石さんの持つ魔力みたいなもののせいで、不思議と顔をそらすことが出来なかった。


「い…、いや、そんな………」


「我慢はストレスの素です。その時はお話、聞きますから」


「…はっ、」


言うな、言ったらぼっちとして積み上げてきたプライドが跡形もなく消えてしまう。この流れに飲み込まれるな!


思い出せ自分のペースを!!



「………………はい」


負けてしまった。惨敗、ボロ負けだ。所詮陰キャがこんなキラキラした人間に勝てる確率などゼロだった。


「ふふっ、お隣同士なんですから、もっと仲良くしていきましょうよ。ね、小林さん?」


人の気も知らないで…、と、浮石さんのことを恨めしく思った。

けれど起き上がればもう二度とこんな事は自分から頼めなさそうで、体調が悪いフリをしてあと少しこのままでいようと小学生のガキみたいな悪知恵を働かせたのである。

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