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L.L.~迷宮人生~  作者: 雨薫うろち
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89.怪しいようで怪しくない通り

 酒場で<心術>の師匠と別れ、再びオークションの街の雑踏へ。


 相変わらずヒトが多すぎてしんどい街だ。他の場所にすれば良かったという思いと、潜伏するのには丁度いいかもしれないという思いで揺れ動く。


 気がついたらまた屋台近くのベンチに座っており、何とか宿屋だけでも見つける方法はないかと思案している所に、


 「あれ!S.S.さん!鉱山の街に行くって聞いたよ?」


 心細い自分にモコの声の幻聴が聞こえてきた。そんなに追い詰められているのだろうか?


 「こっちだよ!S.S.さん!」


 ……ベンチの隣の屋台でご飯売ってたのがモコだった。追い詰められすぎてそんな事にも気がつかなかったとは……。


 「やぁ、鉱山の街の<心術>の師匠に会いに行く予定だったんだけど、寧ろ向こうが用事でこの街に来てたから、用事は済んだんだけど。問題が……」


 「え?何々?」


 「なんかヒトが多すぎて、どこがどこなんだか分からない」


 「あ~確かに私も初めは戸惑ったけど、結局この広場が中心みたいだから、ヒトの流れに乗ってれば勝手にここに辿り着くよ。冒険者事務所は広場の入り口にあるし、冒険者事務所からちょっと細い道に入れば宿もあるから大通り避ければいいんじゃない?」


 流石若いだけあって順応性も高い。とりあえずアドバイスにしたがって冒険者事務所に行こう。


 それからゆっくり慣れて行けばいい。自分はおじさんなんだから、自分のペースでいいさ。


 なんか急に気楽になったらお腹が空いたので、モコの店で買い食いをしてから宿に泊まろう。


 「モコは何を売ってるの?」


 「猪鍋!たまたま味噌を売ってる人がいたから味噌味の鍋!」


 「屋台で鍋って、中々思い切ったね」


 「でも、なんかモツ煮込みとか売ってるの、地元の御祭りで見た事あるし、別にいいかなって」


 「なるほどね~。じゃあ自分それ買って宿屋行くわ。今日はそれ食べて寝る」


 「そっか~!雑踏で疲れたんなら仕方ないよね。またね!」


 モコと別れ、広場をゆっくり一周するように冒険者事務所を探して回る。


 やっと冒険者事務所を見つけ中に入り、隅っこでココに鉱山行きキャンセルの件をメールしたのと同時に、タイミングがいいのか悪いのか、バザーのお姉さんから連絡が入る。


 どこにいるのか聞かれたので、冒険者事務所とメールを返信すれば、殆ど待たずに現れる辺り、土地勘があるのだろうか?


 「ほら、頼まれてた素材の換金。なんだい疲れた顔して」


 「雑踏に迷って疲れちゃった」


 「そうなのかい?慣れないとそういう事もあるか。まあ早めに休んでゆっくり慣れるんだね。ちなみに例のあいつはてんで別の方向に向かったらしいよ」


 「ああ、女の子に声掛ける人?なんで動きが分かるの?」


 「そりゃ商人仲間に聞いたのさ。横のつながりもアタシらの武器だからね」


 「なるほどね~。さて!自分は宿屋を探すよ」


 「そっちの裏口からでな。そっちの方がヒトが少ないから楽に歩けるよ」


 「ありがとう!それじゃ!」


 言われた通り裏口から出れば、確かに道幅は狭いが、人通りは少ない。


 さっきよりいくらか楽な気分で、道を歩いているが、どれが宿屋かいまいちよく分からない。


 でもまあ、何とかなるだろうとどんどん進んでいくと、ちょっとした市場のような場所に出てしまう。


 雑然と店先がそのまま店になっているような。八百屋のような作りとでも言うのだろうか。


 「おい、兄さん掘り出し物があるぜ?正規のルートじゃちょっとお高い品もうちじゃあ安く手に入るどうだい?くっくっく」


 「……正規のルートじゃないとなると違法行為ですか?それは流石に不味いですよね」


 「おうおう、文句があるならどこでも別な店で買えばいい!おとといおいで!」


 「いや、警察に通報します」


 「ん~ちょっと待とうぜ!兄さんここらのやり方を知らないってことは、この街に来るのは初めてだな?」


 「そうですけど、不正は不正ですので」


 「いや、分かった。本当は仕入れルートは言わないモノだが、初心者の兄さんだけにはこっそり教えてやろう。今回の掘り出し物は引退した冒険者の収集品でな。田舎に土地を買うのに投げ売りした物なんだ。それで安くなってるって言うわけあり品だ。勿論中には中古の物もあるし、そこはお客さんの目聞き次第って言う。ちょっとした博打感が味わえるって訳よ」


 「正規ルートではないけど、違法でもないって訳ですか」


 「そういう事だ。往々にしてそういうグレーな商品を扱ってる店が集まってるのがこの一角。お上も黙認してる地域だから、野暮な事はしない方がいいぜ」


 「は~理解できました。ありがとうございます。じゃあ自分も何か買っていこうかな」


 「お!話が分かるじゃねぇか。何か希望はあるのか?」


 「ん~~~~忍者っぽいの」


 「あるぞ!撒き菱だ。踏むと痛いだけの実だが逃げる時なんかは役に立つぞ。<罠>持ちだったりすると威力倍増だ」


 「じゃあ、それ買います!」


 という訳で、怪しいお店で撒き菱を買ったが、まあ中古だろうとなんだろうと逃げる時に使えればいいのだから、いい買い物だ。


 いつでも撒ける様に撒き菱ポシェットも作ってもらわないと駄目かな~。


 そして、怪しい小道に宿のマークがあるので入り込んでみると、完全に建物の間の奥まった場所に電気の点いた受付。


 完全に建築法とか無視してそうだけど、大丈夫なのかな?


 「いらっしゃい。一晩100ゴールド。鍵はちゃんとかけないと何が入ってきても知らないよ?」


 「何がって、なんですか?」

 

 「ふぅ……大きな声じゃ言えないが、うちの爺さんがちょっとボケてきちゃって夜中に宿の部屋に入っちゃうかもしれないんだよ」


 「そういう事でしたか、お察しします。鍵かけて休みますね」


 そう言って、部屋の鍵を借り、一人で猪鍋を食べてからログアウト。


 当分はこの宿周辺を拠点にしよう。ヒトが少なくて過ごしやすいし、意外と皆気さくで色々教えてくれるし、いい場所だ。

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[一言] 夜中にお爺ちゃんが忍び込む(笑)宿
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