76.斧クエスト終了と
ぐっ・・・、これは開発者Bさんの後輩か?
そりゃ事情も分からず、ただただ仕事を押し付けられ、あまつさえ人のミスや失敗の尻拭いを押し付けられれば、参ってしまう。
気持ちは分かる。そして上司同様に世話になってきたんだから、と言う気持ちも分からなくは無い。
しかし、それでも消化しきれない物を耐えて我慢し続ければ、いつか爆発する時が来るだろう。
そうなってからじゃ遅いんだ。そりゃ世の中には代わりはいくらでも居るなんて、個人を一切無視した発言を平気でする人もいるがそんな事は無い。
自分でそう思って奮起するのはいいかもしれないが、他人がそんな事を言えばそれは完全に他者を軽んじた発言だろう。
最初のダンジョン開発者Bさんの手記以来、ダンジョン奥に書かれた文書を読む事にしているが、
これがもし、取引先の社員達が口に出したくとも出せない苦しみだとしたら・・・。
ここは、やはり本気で動く事を検討しなくては・・・。
「どうしたんだ、深刻な顔して考え込んで」
「いや、何でもないです」
「しかし、こんな隠し部屋があったんだな。文字読めるようなスキルがあった場合の小ネタ部屋みたいな感じか?」
「まあ、開発者のプライベート話なんかがちょっと書かれてるだけですけど」
「へ~、じゃあ攻略情報とかではないんだな。やっぱり<解読>なんかははずれスキルか」
「いや、<字術>とか使うには先に習得する必要あるスキルですけど?」
「ああ、そうだったな」
そんな話をしつつ、部屋を戻り陣に乗って、ダンジョン入口近くまで瞬間移動。
村に向かいつつ、
「しかし、偶には初心に戻るのも大事だな。いまだに知らない事がいくらでもぼろぼろ出てくるぜ」
「そういうものですかね?それなら自分も偶に戻ってくるようにします」
「寧ろ自分たちの方が上級者さんに色々教えていただけて助かりました」
「いや、そりゃ先行プレイヤーとして当然だと思ってるからな、人によるだろうが、ゲーム全体が盛り上がらない事には、折角遊べて強くなれたところで、サービス終わっちまったらそれで終わりだろ」
そして、村にたどり着くと待っていたかのように樵さんが立っていたので、斧を渡す。
「うむ、これだありがとう。つまらない物だが、お礼にこれをやろう」
そう言って、代わりに渡されたのは意味深な木彫りの棒。
「これなんですか?」
「俺の出身地のお守りみたいなものだ。もし嫌じゃなかったら鞘にでもしてもらうといい。剣士の方は少しだけ回避が上がる雲の文様を刻み付けた。そっちの探索者は蛇だな。怪我や病気を治したりする能力が少しだけ上がる」
「なるほど、厳密にはアクセサリーには入らない部分で補正があるとか、悪い物じゃないですね」
「少しだけって事は劇的に効果があるメインの装備ではないよってことかな?」
「多分そういう事でしょうけど、隙間を埋めるよなものだし・・・」
「悪くはないか」
「本当に面白いなお前達、そんな微妙に使える装備とか中々無いぞ?運がいいんだか、検証組や先行組がざるなのか・・・」
「それで、徐晃さんはこれからどうするんですか?」
「そうだな、火耐性の実験で寄っただけなんだが、正直お前達面白いしな」
「普通ですけど?」
「いや、断じて普通じゃねぇ。レベル帯に対して異常な術耐性と謎の回復手段」
「確かにS.S.さんはちょっと変ですよね~」
「お前の方はある程度ネタが割れてるとはいえ、やっぱりおかしいからな」
「でも自分は攻撃力は中途半端だし、防御力も紙ですよ」
「それなら自分は攻防両方低いけど」
「でも、戦えるっていうか二人とも近接戦闘タイプじゃないか。逆に俺なんかは純戦闘タイプだからこその隙もあるからな」
「よく考えたら、拘束だけであれだけの手札があるタイプに、近中距離攻撃で力と魔の両方使ってくるタイプのコンビとかどうやって防げばいいんだ?」
「いや、2:2だったら、一人づつしか拘束できないし・・・」
「二人とも防御力低いんだから範囲高ダメージ技使われたら・・・」
「範囲攻撃の大半は鞭とか例外を除けば大半は術だからな。飛ぶ斬撃みたいな流派の武器術的な物もあるが術耐性高ければ防げるからな」
「それなら何で皆術耐性上げないんです?」
「いや、補助や回復が効かなくなる方がリスクが高いからだよ」
「ああ、そっか一瞬だけ術耐性高めたり、術同士をぶつけて相殺するのか」
「そうだな。一人を拘束してる間に二人でぼこぼこにされたら流石に辛いだろ」
「ああ・・・手数だけはあるから。本当にぼこぼこだ」
「えっと拘束して、足切って、目切って、完全に動けなくなったところで放置して、もう片方を二人がかりでぼこぼこか」
「なんで、そんな酷い事を思いつくんだろうな。まあいいや、これからどこに向かうんだ?」
「山の方ですね。自分は属性石の買い付けに、S.S.さんは<心術>の師匠に会いに」
「有名なはずれ術の筈なんだけどな・・・かなり初期で取得できるもんだから情弱御用達術って言われてる<心術>をきっとお前は使いこなしてるんだろうな・・・。いいや山まで一緒に行こう」
なんかもっさい男三人組で旅することになった。




