75.プチクリムゾン
しばし休憩の後、再び木が歩き回るゾーンへ、
くまなくMAPを回った筈なのに、斧が無い!
「もう、こうなるとボスの間しか可能性は無いんだが、本当についてくるか?」
「已むを得ないですよね」
「うん、やるだけやってプチクリムゾン喰らったら、運が悪かったと思いますよ」
「そうか、ここのボスはプチクリムゾンて言う強力な術を使う代わりに、本体はそう強くないからなやるだけやってみるのもいいか」
そうして、明らかにボス間と分かる大部屋に進む。
そこに居たのは一匹の紫の幼虫。芋虫だが、なんとも綺麗な色だ。
そして、なんとフィールドの隅の切り株には斧が無造作に突き刺さっていた。
「あっ!」
と、思わず近寄ろうとした所で、視界が真っ赤に・・・。
「おい!馬鹿!一撃目は範囲内に一番最初に入った奴をノーモーションで狙うんだよこいつは!」
「ああ・・・S.S.さーーーん!」
真っ赤な煉獄が体を包み込み。視界の全部が真っ赤だ。
「あっつい!ナニコレ!あっつい!」
「はぁ・・・?」
数秒間ダメージを貰い続けやっと火が消えた。
「ああ、ビックリしたー。ホントこういう急に熱いのとかやめて欲しい」
「いや、大丈夫なのかよ?」
「え?あっ!凄いダメージ貰ってる。これはバンテージじゃ駄目か『キュア』」
手に持った〔治療液〕の中身が徐々に減っていく。
「何してるんだ?」
「回復中だからちょっと待って」
「そうか、じゃあ俺は少し前に言って、次のプチクリムゾンが溜まるまで待つぞ」
そう言いながら、幼虫から少し距離を取り盾を構える徐晃さん。
液が全部無くなり、HPが一気に回復した。
「ふいぃぃぃ驚いたわ~」
少し遠回りして、切り株の斧を引き抜いた。後はこれを樵さんの所に持って行くだけか。
「いや~初めて見る派手な術でしたが、よく耐えられましたね」
「ん~多分、自分はステータスは心技だし、妖獣の皮で術耐性も上げてるからそれでじゃない?」
「ああ、最初からS.S.さんが耐える計算でこのクエストを振られたのかもしれませんね」
「え?なんで自分が耐えられるって樵さん知ってるの?」
「え?ええとあの木を倒して木材手に入れる手練の樵さんですからね」
「ああ~なるほど~。やっぱり只者じゃないのかあの樵さん。ならなんで自分で取りに来なかったんだろう?」
「ええ・・・そりゃ、斧が無くちゃ樵もただの人ですよ」
「なるほどね~。そりゃあそうだ」
そんな会話をしていると徐晃さんがプチクリムゾンを喰らってた。
「うん、なるほどな。やっぱりこの火耐性防具は悪くない。実験は終わりだ倒しちまうか」
「徐晃さんだいぶダメージ食らってる?」
「そりゃな。プチとは言え、クリムゾン系だ。寧ろそのステータス帯で耐えるお前が意味分からんよ」
「そ?じゃあ、倒すのはバルムンク君に任せて回復しようか『キュア』」
徐晃さんに〔治療液〕を使用。
バルムンク君が青いエフェクトを纏わせた剣で、幼虫を切り刻んでる間に、徐晃さんを回復。
結構回復できたが、全然足りないか。
やっぱり上級者、HPの総量が多いのかな~。
「おいおいおいおいおいおい・・・」
「何?おいおいて」
「いや、なんだよ!この回復量!何やったんだ?」
「キュアだけど?」
「だけど?って、ええ・・・一応俺のHPの総量はプレイヤーの中でもそれなりの物の筈なんだがな・・・」
「まあ、S.S.さんて何かよく分からないけどそんな感じですよ」
そんな話をしていると、妙に艶かしく光る黒い木箱が現れた。
罠を操作し、鍵を開け、開いてみると出てきたのは紫色の胸甲。
明らかに自分が装備出来るような物では無いので、バルムンク君にそのまま譲る。
「え?これまで自分でいいんですか?」
「うん、装備出来ないもの貰ってもしょうがないもの。使ってよ」
「ああ、確かに軽甲なら使えます。ありがとうございます」
「いいさいいさ!幼虫にとどめをさしたのバルムンク君だし」
そして大部屋の奥に進み、魔方陣を無視して更に奥の小さな石碑に向かう。
「おい、戻らないのか?」
「奥に隠し部屋があるからちょっと待って」
「そんなものあるのか?」
『ハサミはハサミでも、何も切れなくて、便利でもなくて、ただただ痛いハサミって何?』
「なぞなぞか?」
「なんですかね?」
「板ばさみかな」
奥へと続く道が開かれる。




