73.上級タンク
一旦村に戻りバルムンク君と別れ、道具の補充をした後ログアウト。
そして時間を決めてまた待ち合わせてログイン。
なんとも、ゲームってのは年齢を越えて今更普通に友達になれる不思議な世界だ。
バルムンク君が何歳か分からないけど、結構若そうだからな~。
二人で森に向かおうとすると、森の入り口に大柄でがっちり装備を整えた男が一人。
「あれがタンクですよ。S.S.さん」
「あれがタンクか~」
「見たこと無い装備ですけど、こだわりを感じる意匠から見ても確実に中級以上、下手したら上級かもしれませんね」
「へ~なんでこんな初級ゾーンに居るんだろ?」
「それはちょっと分かりませんね」
「じゃあ、聞いてみようか」
「え?」
分からない事があれば、聞いてみるのがいい。勿論一度自分で考えてみるのも大事だ。
最近はネットで何でも調べられるから、つい何でも調べてしまいがちだが、それが正しいかどうかは分からない。
間違ってるかもしれない情報だと理解した上で、その情報をどう扱うかが大事な訳だ。
しかし、人から聞いた情報と言うのは、ネットのように、ついつい鵜呑みにするものではなく、
もしかしたら嘘を教えられてるかもしれないと言う一定の警戒心の元に聞く情報になる。
仮に人の言う事すら何も考えず、全部信じるのだとしたら、相手を完全に舐めている。
人ならば皆色んな事情を抱えているのが当たり前なのだ。全て善意で完全に相手の為になる情報を確実に提供できるわけ無いだろう。
そもそもその人の情報源が正しいとも限らないのだから。
だから、直接見に行く、実験してみる、聞いてみるが大事になってくる。
「すみません!上級者とお見受けしましたけど、初級者ゾーンに何かあるんですか?」
「え?ああ、ちっとこの奥に用があってな。見たところ初級者の様だが、このダンジョンはやめて置いた方がいいぞ」
「ああ、やっぱり木が強いからですか?」
「いや、木はそれなりのアタッカーかタンクが居ればなんとでもなるだろうが、ここのダンジョンボスが厄介でな。初級者殺しとも言われてる」
「ああ、そうなんですか。ところで、そんな場所にどんな用があって来たんです?」
「そのボスに用があってな。そのボスってのが強力な火の術を使うんだ。後半になると使う魔物が増えるクリムゾン系って奴なんだが、それに対応する為に火耐性の装備を手に入れたんで性能実験って所だな」
「ああ、初級ゾーンのまだ対応可能な相手が強力な一撃を使ってくるから、それで装備を試そうと、理解できましたありがとうございます」
「いや、いいさ」
上級タンクの人と一旦別れ、バルムンク君の所に戻る。
「性能実験だってさ」
「らしいですね。まあ自分達は斧を探すだけだし邪魔にならないようにやりましょう」
そう言って、二人でダンジョンに入ろうとすると、
「いや、初級者はやめておけって言ったろ?」
「でも、斧を探さなきゃいけないので」
「ああ、クエストなのか。まあボス攻略するんじゃないならいいけどよ。もし木に苦戦するなら一緒に行ってやろうか?」
「自分はありがたいけど」
「自分も助かります」
と、言うわけで、上級タンクさんといっしょにダンジョン攻略。
初めのうちは自分達の動きを確認するように観察してたタンクさん。
でも、いつでもタンクさんと代われるという心の余裕で、なんとも気楽な狩りになった。
普段だと自分が崩れるとバルムンク君がしんどいだろうなと気を張っているから、気が楽になるだけ大分違う。
そして、自分達の動きを大体把握したのか、タンクさんが参戦すると一気に楽になる。
全部攻撃受けてくれるので、何の憂いも無く攻撃に集中できるとか本当に助かる。
バンテージで合間合間に回復してるが、そもそもダメージ量が少ないので、ぐいぐい進んでしまう。
「うん、回復、罠はずし、敵発見と非戦闘時のサポート役に、属性付与、MP供給の戦闘サポートか。しかも二人とも中距離攻撃持ち。罠と拘束も助かるし、こんな多芸タイプが何でこんな所でくすぶってるんだ?」
「いや、自分は一応上級パーティに入れてもらってるんですけど」
「自分は生産職の子達と一緒に行動してる事が多いです」
「ああ、基本の能力が低いから修行か!いい心構えだな。パーティの力を自分の力と勘違いしないで、高め続けるのはいい事だな」
「ところで、一個気になったんですけど、そのクリムゾン系ってのは相当強いんですか?」
「そりゃな。俺みたいなタンクでもごっそりHPいかれる大技よ。単体に超ダメージのデスクリムゾン、範囲大ダメージ攻撃のクリムゾンフレアとかな。一時的に術耐性を上げて、更に火耐性の装備で固めてやっとって所さ。ここのボスはプチクリムゾンって言う術だが、それでも初級者じゃ一撃でHPを持ってかれる」
「ああ、それで初級者殺しなんですか」
「そうだな。だから俺達みたいな上級者が装備の実験の為に使ったりしてるボスなんだ」




