69.初級者コンビ
二人で、森の奥の焚き火跡を見つけ向かい合って座ると、霧がかかり始め、魔法剣士はそのまま項垂れて寝てしまう。
ふむ、ここは自分が何とかしないとな。
「やぁ、生きてるね。いい事だ」
いつか<生存能>を教えてくれたヒトがいつの間にか焚き火跡を囲むように座ってた。
「お久しぶりです。なんとかやってます」
「うん、旅をしたりしていると時折火が欲しくなると思う。丁度今みたいにね。後は煮炊きしたりしたりとか」
「ああ、今初めて火が欲しくなりました。いままでは日帰りで探索してたので」
「うん、そんな君に『着火』のテクニックをあげよう。焚き火やちょっとした爆弾なんかに火を着けるだけの何の攻撃力も無いテクニックだが君には必要な物だろう」
自分の剣鉈とはまた趣の違うナイフを引き抜き、片手で少しだけナイフの鍔を押し上げ鞘から刃を見せて、親指でまた鞘に戻すと、火花が散り焚き火に火がついた。
ナイフをライターの着火装置みたいに使ってるのか。
「便利そうですね。でもナイフを納めるだけで、そんなに火花が散るなんて凄いですね」
「うん、僕のお古だけどこれを上げるから、剣鉈の鞘にはめておくといい」
そう言うと何か石のような物を渡された。
剣鉈が納まるときにうまく当たるように鞘にくっ付けておく。
試しに、少しだけ剣鉈を抜き勢いをつけて戻すだけで、火花が散った。
別に熱いとかも無いし、これは便利だな。
「何かありがとうございました」
「いいさ。君が生きていたらまた会おう」
霧がすうっと消えていき、向かいの魔法剣士が目を覚ます。
「あれ?寝てました?」
「霧が出たからね。でも何も起き無かったよ」
「いつの間に焚き火に火がついたんですか?火をつけておけば、ここでもログアウトできるんですよ」
「へ~それは便利だ!火をつける方法習えて助かったな」
「自分は<与術>で火をつけられるんで、重宝されてました」
「まずは、何か温かい物でも食べようか。気持ちを落ち着けて話そう」
そう言って、鞄から猪肉のポトフを出す。味噌があれば味噌鍋風のスープにしたいって言ってたけどな。
「ああ、料理が出来るっていいですね。自分のパーティは生産系やってる人いないので、バザーで買うんですが、お菓子ばっかりで」
「お菓子を好きなだけ食べたい人が結構いるみたいだからね。おにぎりとかも頼めば作ってもらえるよ」
「そう言うの頼むのって、ちょっと気が引けるというか。コミュ力必要なので」
「断られるものだと思って普通に頼めばいいのに。要求したからって必ず叶えてもらえる訳じゃないけど、何が欲しいか言わなきゃ何も伝わらないよ?」
「それは、確かにそうですよね」
「それで、悩みって言うのは?」
「ええ、実はこの装備のおかげで、向こうから声を掛けてもらって、上級者パーティに入れて貰えたんですよ」
「それは良かったじゃない。初級者だから実力不足で悩んでるとか?」
「いえ、それは地道にやるしか無いかなと。他のメンバーも単独じゃ中級ゾーンも大変だって言ってたし、やっぱりパーティの役割分担が鍵になりますよね」
「じゃあ、上級者と言われる人達に能力を認められたんだから良かったじゃない」
「ええ、本当にありがたいんですけど」
「けど?」
「女性ばかりのパーティに入ってしまったので、それまで色々教えてくれた人達に嫌われてしまって」
「ああ、そりゃ・・・やっかみか、大変だね」
「別に何をされるわけでも無いんですけど、仲良くしてくれてた人達との関係に罅が入ったのが辛くて、つい一人で、修行と称して、ここらで狩をしてたんです」
「ん~どういう状態か分からないけど、うまくパーティに入れた事に対する祝福と同時にいじってるとかそういうのじゃないんだ?」
「分かりません。でも結構本気で、許すまじと言われている気がして」
「そっかー、それは辛いな。自分はそういうの余り気にしないから大丈夫だよ。別にもてるからって、好きな人と必ず一緒になれるわけじゃないしね。自分の知り合いでも好きな人との間を邪魔されて困ってるもてる奴とかいたな」
「別にもてる訳でも何でも無いんですけど。偶々必要な要素を持ってたってだけで」
「へ~自分は足りない物ばかりだからな~。それでも仲良くしてくれる人達はいるからありがたいけど」
「え?パーティ組んでるんですか?」
「いや、生産?の子達が色々教えてくれるんだ。自分が拾った物もって行くと買い取って、いい物と交換してくれたりするし、助かってるね」
「なるほど、生産パーティだったんですね」
「自分は探索者だけどね」
「なるほど、先行して危険を排除する役割なんですか!そういうのも重要ですよね。道理で火力低めだと思った」
「火力?焚き火の火弱かった?」
「いや、攻撃力の事です」
「ああ、そう言うことか!そうそう、自分だけ戦闘向きらしいんだけど、全然弱いんだ。攻撃力だと生産の子達の方が強いよ」
「へ~服装備で防御力も低そうなのに、初級者ゾーン単独で歩くなんて、何か不思議ですね」
「うん、色々使って何とか頑張ってるよ。もし、まだこの辺りうろつくなら一緒に行く?」
「いいんですか?自分は助かりますけど、正直自分も中途半端タイプで、単独がきつくて」
「分かった!自分は、森踏破して村やなんかを巡りながら山の入門者の街を目指すつもり。あそこには<心術>の師匠がいてさ」
「<心術>ってステータスの心が必要だった気が・・・?」
「そうだよ。自分は心技のステータス重視だから」
「ああ、それで、服と鞭装備・・・」




