64.抗生物質と
最近すっかり定時退社が体になじんできたので、家に帰ってさっと家事を済ませて、
ログインして、妖医に会いに行く。
「白い猪の皮持ってきました」
「それだ。早速〔抗生物質〕の作り方を教えてやりたいが、その前に<治療>スキルのレベル上げるか」
「え?じゃあ、先にレベル上げの方法教えてくれれば、レベル上げながら猪攻略したのに」
「聞きに来れば、教えたんだがな。折角スキル取得しても育てなきゃ意味無いのは当たり前だ」
「確かに、それはそうだった」
「まずは、猪が出る山に動く植物がいる。そいつらを狩って苔を手に入れるといい。〔緑苔〕〔薬草〕〔青茸〕で、〔治療液〕が作成できる。それが基本だ」
日頃<採集>で、その辺りの材料は結構な量持っている。苔も猪狩りの合間に何となく狩って持っていたので、一個作ってみる。
「それだ。使用してみるといい」
「どうやって使用するんです?」
「手に持って『キュア』と唱えてみろ」
作ったばかりの〔治療液〕を手に持って掲げ、
「キュア」
瓶の中身が徐々に減り、全部無くなった所で、エフェクトが体を包む。
「もし、HPが減っていれば、それで回復するぞ。使う材料を変える事で回復量も変わるが、その辺は自分で試すか、色々と調べてみるんだな」
「は~なるほど。じゃあ、一旦これでスキル育ててきます」
「ついでだから、先の分も教えておこう。〔麻酔〕と〔中和剤〕と〔濃縮治療液〕だ」
「それは、前に医精から聞きました」
「そうか、医精に会っていたんだったな。じゃあ、その辺を作って、スキルレベルを上げてくるといい。はじめは〔治療液〕だぞ」
「分かりました。ありがとうございます」
ん~じゃぁ、材料あるだけ作って、苔花狩って、山の<採集>ポイントで、薬草や何か集めますか。
中々、思ったようには進まないもんだな。まあ、仕方ないか。
生産に精を出し、山の方に狩りと<採集>に行く。
この辺りの魔物は罠を使えば全然大丈夫。
余裕、余裕と調子乗っていると、大体失敗する。
猿を誘い出す為に、ぽいっと罠の毒芋をそこらに放った所で、まさかの猪も釣れて、木陰に苔花もうろうろしてたし、
あっこれ駄目だと思いながらも諦めずに戦い続け、なんとかかんとかボロボロで、勝てた。
自分は防御力も攻撃力も無いんだから、慎重に行動しないといけない。
しかし、そんな反省も吹き飛ばし、思わず叫んでしまった。
「なんじゃこりゃぁ!!」
HPがほとんど残って無かったので〔治療液〕を使ったのだが、今までのポーションやバンテージの比じゃない回復量。
バンテージみたいにずっと回復し続ける訳じゃないけど、これは凄い。
流石、医を目指して手に入れるスキルだけあるな。
戦闘前はバンテージ、ヤバイと思ったら〔治療液〕で、これは早々死に戻りしないぞ!
でも、ダメージ食らわない方が重要だから、やっぱり慎重に行動しないと。
自分は探索職。
探索職は敵を素早く発見して、準備して、罠を回避するのが仕事らしいので、慎重さが自分の武器の筈。
数日、<治療>スキルのレベル上げに勤しんだが、流石にスキルのレベルアップも時間がかかる様になってきた。
よく考えたら、何レベルになったら作れるのか聞いてなかったので、数日振りに妖医を訪ねる。
「ん?スキルレベルを真面目に上げているようだな」
「それなんですけど、何レベルまで上げればいいのか聞いてなくて」
「ああ、すぐには作れないから、作り方だけ教える」
「ええ・・・じゃあ何でレベル上げるように言ったんですか?」
「最低でもレベル3になって、他者への治療が出来る様にならねば意味が無いと思わないか?」
「なるほど、レベル2までは自分にしか使えなかったんですね」
「そう言うことだ。作り方は培養と抽出なんだが、道具もスキルレベルも足りないから、とりあえず見ておけ」
そして〔抗生物質〕の作り方を教わり、一個貰う。
「ありがとうございます。これで病魔を倒してきます」
「問題はどうやってその病魔がその子供にとりついたか。あてはあるのか?」
「勘ですが、その家には父親がいなさそうだったので、母親かと・・・そして医者に見せているのに原因不明という事は医者も怪しいかと」
「そうか、心の弱い者が考えそうな事だな。きっちり問い質してやるといい。それがその家族のためだ」
「はい、そうします」




