57.妖医
「私も行ってみたい!」
「僕も行ってみたいです!」
霧の町の妖医に会いに行こうと思ったら、ココ、モコがわがまま言い出した。
「霧は精神状態異常の効果があるから、二人じゃ危ないよ」
「いや、まだ初級入ってすぐの街ですし、前の街で作るだけ作って一個も売れてない青銅のアクセサリーをフル装備しますよ!それで駄目なら諦めます」
「そんなにいっぱいあるなら売ってくれればいいのに」
「S.S.さんは遺跡でなんか宝石付きのいいやつ拾ってくるじゃないですか」
言われてみるとその通りだし、何も言えない。
仕方ないか・・・、二人を連れて霧の町に向かう。
二人とも青銅のアクセサリーをこれでもかと言うほど、くっ付けている。
指輪両手に二つづつ、ネックレスに両腕輪、両アンクレット、両バングル、サークレットにピアスに・・・。
まあ、町だし戦闘は無いから大丈夫か。
二人とも自分の背中に引っ付いて霧の中に入っていく。
綺麗に掃き清められた町。
真っ直ぐ少し大きめの病院か診療所だったかに向かう。
この前の受付の女性に声をかける。
「こんにちは!病気の娘を見つけたので、先生に会いたいんですけど」
「あら、そう、先生は今は奥にいるわよ」
と、奥に向かう扉を指差すので、向かおうとするが、背中の二人が顔を真っ青にして、硬直している。
「二人とも何やってるの?」
「いやいやいやいや、S.S.さん何と話してるんです?」
「お姉さんですけど」
「え~~~~~!骸骨が、お姉さんに見えるの?駄目だよ。S.S.さんもっとアクセ装備しよ?」
「あら、二人は心のステータスがちょっと低いみたいね。アクセで補正して霧の効果は無効化出来ても、基礎の心ステータスが低いのなら私達と話す資格は無いわ」
「ああ、そうなんですか。やっぱり妖魔って心ステータスに拘りがあるんですね」
「種族的なものかもね、簡単に揺らぐような心の持ち主を信じられないのよ」
仕方ない、震える二人を置いて、一人で奥の部屋に入る。
診察室のような部屋には一人の黒髪の男性、やはり人形のような綺麗な顔。
「ふむ、どこも悪いようには見えないが、どういったご用件かな?」
「病魔に憑かれた少女を助けたいので、診て貰いたくて来ました」
「ふむ、普通の医者では原因がつかめないから、妖魔の医者を頼ったと、正解だ。だが!断る!」
「何故!断る!」
「『何故断る』か、中々斬新な切り返しだな。気に入った。どうやら<治癒><診察><処置><調剤>と限界まで、育てているようだし、合成して<治療>にしないか?」
「断る理由は内緒?」
「霧の外に出たくない。外の心の弱い連中見てるとイライラする」
「お医者さんなんだから、優しい声の一つも掛けてあげればいいのに」
「精神科じゃないから・・・それに外の連中は何かと術で何とかしようとするが、我々は心が強くて効果が無い。そうなると薬や物理的手段になるが、外の連中はそれを嫌う」
「そっか、根本的に合わないんだ?それはそうと医精に医を志すように言われてるけども、今は病魔に憑かれた娘さんを助けたいんですよ」
「だから、<治療>を取得して、薬を投与すれば、病魔が姿を現すから、倒せば解決だ」
「自分医療免許もってないですけど」
「<治療>スキルを持っていれば問題ないから大丈夫だ」
「じゃあ、取得します」
「4万ゴールドだ」
財布をひっくり返して、じゃらじゃら何とか支払う。
「さて、病魔を娘から切り離すのに必要な薬はずばり〔抗生物質〕だ」
「なるほど!病原菌を薬で減らすと」
「病魔と娘をつなぐ経路を絶つ事で、病魔が姿を現すから殴り倒せ」
「自分はあまり戦闘強くないのですが?」
「病魔は弱いから大丈夫だ。だから寄生してちまちま生命力を吸うのだ。問題は素早いことだが、鞭を十全に使えるなら、問題なく捕えられるだろう」
「分かりました。じゃあその〔抗生物質〕の作り方を教えてください」
「うむ、山の方へ行くと猪がいるが、偶に背にカビを繁殖させたものがいる。その毛皮を持ってくるがいい」
「分かりました。行ってきます」
診察室から出ると、二人が震えながら待合室で座っている。
自分の顔を見るなり寄ってきて、背中に隠れてしまうが、そんなに怖ければ、先に帰ればよかったのに。
二人と一緒に街まで帰ると、やっと離れた。
「じゃあ、自分は山に向かうから」
「え?なんでですか?」
「背中にカビの生えた猪を探さなきゃいけないんだって」
「それで、あの娘助かるの?」
「〔抗生物質〕を作るのに必要なんだってさ。あとは出てきた病魔を殴り倒すだけ」
「そうなんだ。戦闘はS.S.さんに任せるね。今作ってるのが出来たら私も・・・」
なんにせよ、あの娘の家庭環境を救う為、猪狩りとしゃれ込みますかね。




