56.病魔
「どうしたの?モコが慌てるとか珍しいじゃん?」
「いいから!」
そう言って、街の中の一軒の家に自分とココを連れて行くモコ。
普通に扉を開け、
「お邪魔します」
と言って入っていく、モコ。
住人は優しそうな奥様で、ニコニコと自分達が二階に行くのを見送っている。
「ねぇ、モコ知らない人の家に入っちゃったら、まずくない?」
「ちゃんと声かけてるから大丈夫だよ。ここはAIのおうちだし、何も言われなかったでしょ?」
「ああ、AIも家ってあるんだね~。受付のお姉さんとかいっぱい家持ってるんだろうな~」
「それでね、この家には病気の子がいるの。でもお医者さんは皆異常は無いって言うんだって!だからS.S.さん連れてきたの」
「なんで?」
「だってS.S.さん医を目指す者なんでしょ?マッチョな鹿に会ったって聞いたよ?」
「そうだけども、まだ何も手に入れてないよ?」
「だけど、医を目指してたら何か分るかもしれないじゃん」
そんな話をしつつ、二階の部屋の扉をノックして、入っていくモコ。
「あっまた来てくれたんだ!」
と小さな女の子が上半身を起こして迎えてくれた。
「うん、こっちはココで、こっちがS.S.さん!それでさ、体のどこが悪いかまた教えてくれる?」
「別にお医者さんはどこも悪くないって言うの、でもお外に出たり、遊んだりするとすぐに具合が悪くなっちゃうの」
え、それは何かあるでしょ?なるほど、やぶ医者か!
「でも、ちゃんとした街のお医者さんが、何もないって言うんだよね?」
「そう、でも、私も皆と遊びたいのにすぐ苦しくなっちゃうの」
こんな小さな子が友達と遊べないなんて・・・そんな事あっていいのか?
脳をフル回転させろ自分、仮に医者が犯人じゃないとしたら・・・母親?娘を束縛したいあまり、少量の毒を混ぜ続け・・・、
となると共犯が医者!
ココがなんか不審そうな目で自分を見てくる。
自分に任せろ!と意思を込めて視線を返せば、首を振って応えてくる。
「あの僕から質問なんだけど、何でもいいから身の回りに変な事って無い?」
「うーん、夢を見るの、ピエロみたいな変な格好した男の子が『君の命はとても美味しいから、長く付き合おう、本当は一気に全ていただきたいけど・・・』って」
何を暗示した夢なんだろう?命を削られてるんじゃ無いかって言う不安から来る・・・。
ぴこーん!
また変な音がした。
「なんか変な音した」
「ほら!やっぱりS.S.さんなら何とかなると思った!クエスト出たんでしょ?」
「まずは内容を確認したらどうです?」
「でも、誰にも何も頼まれてないよ?」
「頼まれなくてもクエスト出る時はあるから!早く早く」
「でも、頼まれてもいないのにクエストっておかしいじゃん。報酬と引き換えに仕事するのがクエストなのに」
「あれですよ、ゲームの世界なので、世界から選ばれた使命なんですよ」
なるほどな、そんな事もあるんだなとカードをみれば、
「『病魔と妖医』だってさ」
「ふむ、つまり夢に出てくるのが病魔で、それを倒さなきゃならないと、その為には妖医と言うヒトがキーマンになってるって所でしょうね」
「そうなの?医者が共犯じゃなかったの?」
「なんで、そう思ったのか、分らないんですけど、とにかくクエストを進めましょう」
「え?受けるの?あまり人様の家庭の事情に首突っ込むのとか・・・やっぱり公的機関とかNPOとかに連絡した方がいいんじゃ?」
「公的機関に連絡して解決する問題ならS.S.さんのクエストとして出てこないですから」
なるほど、これはゲームが自分なら解決できると依頼してきたって訳か!
誰からも頼まれてないんじゃなくて、この世界そのものから選ばれてしまった使命!そう言うことだろう。
必ずこの子の家庭環境を自分が改善してみせる。
「よし!じゃあ、まずこの子を別のお医者さんに見せよう!」
「なんでそうなりましたか?」
「セカンドオピニオンって知ってる?この街のお医者さんが分らない病気でも、もしかしたら専門が違えば原因は分るかもしれない!」
「いや、だからですね、原因は十中八九、病魔でそれを倒さなきゃいけないんですよ」
「うん、病魔って言うのは病気をイメージして具現化したものでしょ?だからその直し方を探さなきゃいけないんじゃないの?」
「その通りなんですけど、絶対何か勘違いしてる時の言い方なんですよね」
「大丈夫!なんか分野の違いそうなお医者さんに心当たりあるよ!」
「念のためどういった方なのか聞いてもいいですか?」
「霧の中に町があってそこにお医者さんがいるんだよ。まだ会った事無いけど、妖魔のお医者さんだから多分、分野が違うと思うんだよね」
「いや、はい・・・そのヒトですね。絶対何か勘違いしてる筈なのに、なんで正解に辿り着くんだろこの人」




