55.妖獣の皮で新装備
推しの卒業くらい・・・大手を振って行ったらいいじゃないか!
だって、もしかしたらその推しとは二度と会えないかも知れないんだよ?
金輪際別の道を歩むかも知れない推しの最後の姿を何で見送っちゃいけないんだ。
推しなんて所詮は赤の他人。
でも、何故赤の他人を推すのか?
少ない時間を裂き、生活でいっぱいいっぱいの筈の給金を裂き、何故推しを推すのか?
何の得も無い、ただ推しの為だからとその言葉を残し、ギリギリを生きるヲタクと呼ばれる人達を
自分は心の底から尊いと思う。
人は他人の為にどこまで出来るのか、無償の愛とは何なのか、それを考えさせられる。
結論を聞けば、推しのおかげで生きてこれたからと言う。
確かに辛いことばかりで、生き辛いこの世の中に希望をくれたのが、推しだというなら、
その推しに尽くすのが、当然と言う人もいるのかもしれないが、
そんな鮮烈な生き方が、自分を惹きつける。
何もない自分だから、尽くすべき何かを見つけた人達が、羨ましくも思える。
生活のためだからと働く人達が、何故推しを推す事すら自由に出来ないんだろう?
そんな事を考えつつ、街に戻る。
偶然、ココに出会ったので使えそうな素材を渡す。
「相変わらず、S.S.さんは変わった物を集めてきますね」
「そう?普通に拾った物ばかりだけど?」
「いえ、この前猪や猿で色々作ったばかりで、申し訳ないんですけど、装備更新しません?」
「別にいいよ。いらないものは冒険者事務所に売ってくるし」
「この街にもバザーはあるので、使わない装備品なんかは売れると思いますよ?」
「じゃあ、作ってる間に売ってきちゃうね」
そして、皮類は全部預けて、バザーに向かう。
なんか、お姉さんがモヒカンのお兄さんと大声で話をしてる。
あれが、噂の厄介な客かな~と、近づいてみると、
「ほら!お得意さんが来たから、アンタはアタシが買い付けた装備品を売りに行ってきな!」
「それはいいんす姉御!しかし姉御に近づく不届きな輩に一発かましてやらないと納まりがつきませんぜ!」
「まぁ、アタシだっていつまでも逃げ回ってる訳には行かないと思ってるけどね、でもうちは商人ばかり、戦闘力は皆無なんだから、もっと大手と渡りをつけなきゃどうにもならないだろ」
えっと、声を掛けてもいいのかな?
「おいコラ!何みてんだ!」
と、モヒカンがいきなり凄んでくる。自分は何もしてないのに・・・。
「何やってんだい!お得意さんだってんだろ!
悪いね。前に言ってた変なのが最近しつこくて、また移動してきたばかりなんだ。このモヒカンはうちのクランメンバーだから、気にしないで」
「そう、大変だね。自分がいる時は現れないのに、どんな人なんだか?」
「ふん、ちょっと戦闘が強いからって、相手が何でも言うこと聞くと思ってる最低野郎だよ」
「そっか~戦闘が強いとかそう言うのじゃ、自分は役にたたなさそうだね。ごめんね」
「何言ってんだい。いつも贔屓にしてくれる普通のプレイヤーが一番ありがたいっての。それでまた色々持ってきてくれたんだろ?」
「うん、ダンジョンで手に入れた武器防具だけど」
「全部買い取るよ。ダンジョン品はリーズナブルで、尚且つ扱いやすいからね」
「んじゃ、任せるわ」
そう言って、ダンジョンで手に入れた物を根こそぎ売る。正直肉と皮くらいしか使わないのだし売ってしまおう。
そして、丁度荷物がすっきりした所で、ココがバザーに顔を出す。
相変わらず、行動の早い少年だな。
「いたいた!出来ましたよ!新装備」
「早かったね、どんな感じに仕上がったんだろう」
「腹案はあったので、試させてもらいました。まず、蜥蜴はベルトにしました。しかも前回と違ってバックルを青銅で作ったんですよ」
「それはつまり、ステータスの心に補正がかかるベルトって事?」
「その通りです!さらに鰐皮は結構なサイズだったので、シャツにしました」
そして、渡される、蜥蜴の皮のベルトと鰐皮のシャツ、
これはなんとも、危険な香りだ。到底堅気が着れる服じゃない。
まさか、今回のテーマはデンジャラス?
「この爬虫類の皮ってやつはなんとも大人で危険な香りがするね」
「そうでしょう?今回のテーマはセクシーです!大人の色気出して行きましょう。セクシー&インテリジェンス」
セクシーがテーマだったか、なるほど言われてみれば、ヨーロッパのモデルとかが着てそうだ。
自分に似合うとは思えないのだが?しかし、折角作ってもらったものだし、ありがたく使わせてもらおう。
「これ両方とも術耐性が付いてるし、もしかして物防も今までより強い?」
「ええ、鹿と比べれば強いですよ。とは言え服ですので、鎧ほどの効果は得られませんけど」
「自分は<外衣>だもん仕方ないよ。ステータスの心上げて補強するしか無いね。寧ろ火とかぶつけられてもダメージ少ない方が助かる」
「アンタさぁ、前から思ってたけど変な構成だね。探索職って事は魔物がいる危険地帯に入るはずなのに、技の要求値が高い鞭を使うは、術抵抗と心重視するは、それでいて魔とか力みたいな攻撃的なステータスはなんか気にしないみたいだし、鎧使わないんじゃ体も低いんだろうし」
「なんか変かな?罠とか外すには技が必要だし、術って飛んでくるから怖いじゃん」
「まあ、そう言われれば、そうなんだろうけど。まあ、アタシは戦闘職じゃないし、余計な事言っても仕方ないか。その使わなくなった装備品、見たところ変わってはいるけど、クセも無さそうな良品みたいだし、引き取ろうか?」
「あっじゃあ、お願いします」
そして、お姉さんと別れ、ココと話しながら街を歩いていると、
向こうからモコが手を振りながら駆けてくる。
「いたいた!S.S.さんちょっと手伝って!」




