47.霧の中の出会い
折角アドバイスを貰ったので、坑道の街から外に出て、山中の森をのんびり散策。
出てくるのは猿と猪、どちらもいきなり飛び出してくるが、進むときにちゃんと<診察>さえ使っておけば、全然怖くない。
結構手前から隠れているのが分るし、まるで待ち構えているようなので、面白い。
自分としてはHPの低い猿の方がやりやすいかな~。
髭もじゃのおじさんは素早くて厄介だって言ってたけど、拘束できる自分からしたら、別に問題でもない。
出来るだけ隙のない様に手数を意識して戦闘するようになってから、ダメージをくらう事が減ってきた。
時折休んでご飯を食べるが、この街に来てからはモコが金属ばっかりいじって、ご飯を作ってくれないので、バザーで買ったおにぎりを食べてる。
一応、エナジードリンクだけは山ほどあるからいいんだけどさ。
折角〔猪の肉〕が手に入るんだから、何か作ってくれてもいいのにな。
ちなみに猿から取れる〔柿〕は渋柿だったので、まずかった。
木が多く視界は悪いが<薬剤>に必要な草とか茸、蜂蜜とか、虫とかも色々手に入るので、自分に優しいフィールドだな。
ふと、光っている場所を<採集>すると〔混迷草〕ってのが手に入った。
ふーむ、色々草毟ってきたが、これは初めてかな?
そして、唸り声が背後から聞こえる。
犬?かな。濡れて毛がべったりくっついた細い犬だが、目玉が飛び出しそうなほど真ん丸くギョロついている。
相手が飛びかかってくるのに合わせて『バインドウイップ』
素早そうな相手にはこれが一番手っ取り早い。
動きが止まった所で『目潰し』『足切り』『ダブルスタブ』斬る斬る斬る。ここでちょっと離れると丁度拘束が解けるが既に相手は動けない。
鞭の連続攻撃で倒しきった。
<採集>すると〔妖犬の皮〕×2と〔妖犬の牙〕×1を手に入れた。
なんで濡れてたのかな?と思ったら、いつの間にかうっすら霧が出てた。
そう、霧だ。いつの間にか紛れ込んでたらしい。
しかし、精神状態異常が起きてるのかな?今一状態がよく分からない。
そのまま慎重に探索しているとさっきの濡れた犬が襲ってきたり〔混迷草〕〔睡魔草〕なんかが手に入る。
そして、遠目に焚き火を発見する。
近づいていけば案の定、人がいた。
まあ、人もいないのに火が出てたら山火事だし、危ないよな。
全身濃い緑の服。尖った帽子に赤い羽根飾り、裾の短いローブ状の服。しかし、ちょっと浮世離れしているというか街の人とは違って見える。
「やぁ、他人と会うのはどれ位ぶりかな、もし急いでないなら話でもしないか?」
そう言うとその人の正面にある丸太を指すので、そこに腰掛けた。
「はじめまして、こんにちは」
「はじめまして。僕達の様な妖魔でもないのに霧の中に入ってくるなんて珍しいね」
「妖魔ですか??」
「そう、霧中に住み着き、霧と共に移動する。人の精神を狂わせる霧の中で出会う妖しげな存在故に妖魔と呼ばれてる。でも実際は君たちと変わらないよ。少し術への耐性が強い位かな」
よく顔を見れば、妙に整っていて人形じみた雰囲気は感じるが、それ位だ。
寧ろ、静けさと優しさと思慮深い雰囲気が好印象の格好良いお兄さんだなって感じ。
「さっき、他人と会うのが久しぶりって言ってましたけど、やっぱり霧の中に住んでるからなんですか?」
「好き好んで霧の中に住んでいるけど、別に霧から出られないわけでもないよ。ただ僕には僕の生き方があるそれだけさ」
深く聞いちゃいけないことかな?ちょっと焚き火を見つめ、沈黙を楽しむ。
「君はいいね。その剣鉈と静けさが気に入った。一個だけ質問に答えてくれないか?人生ってなんだと思う?」
「分りません。ただ一生懸命できる事やってきましたけど、なんか間違ってたみたいで・・・」
「そう、僕もそうだ分らない。だから一人になった。しがらみから逃れ余計な物を全て取り除いた自分と向き合って、少しだけ分ったのは人生とは生きるって事、何をしようが何を思おうが、最後は生存意欲があった」
「しがらみの所為で、生きる事が辛くなったりするもんですけど」
「そうだね、いろんな事で頭の中がごちゃごちゃになって、どうしようもなくなる。だから自分にとっての軸が必要なんだ」
「それが生きるって事ですか?」
「そう、まずは最低限今日を生きる。もし君にも軸が必要なら、僕の分かった事を教えてあげよう」
「自分は不器用で、自分自身の道って言うのを見つけられなかったんですが、もし教えていただけるなら」
「じゃあ、君の持つスキル<剣鉈><道具作成><採集>これらを混ぜて<生存能>にしてあげよう」
「サバイバルって料理とか必要そうですけど」
「<料理>はおいしい物を食べたいって言う欲求であり、それもしがらみだよ。草木を枕に布団にして、最低限食べれる物を手に入れる。その程度の技能さ。今まで通りの事は出来るし、生産の成功率も上がるし、手に入る素材の量も増える。食事や水分補給をした時に多少HP、SPが回復する様になる」
「ありがたいですね。スキルも圧縮できるし、助かる事しかない」
「そう?後そうだ『ナイフパリィ』これも教えておく。全てを受け留め成長できれば素晴らしい事だけど、時には受け流す事も大事さ。その剣鉈で相手の攻撃を払えば発動する。確率は君と相手の技ステータス次第だ」
そういって、音も無く立ち上がり、すっと霧の中に消えて行き、いつの間にか霧も晴れた。
しかし、スキルもテクニックも妖犬の素材も残っているから、状態異常で夢を見ていたわけでは無さそうだ。




