番外『猫狂い』
-プログラマーA手記-
はぁ、はぁ、はぁ・・・
膝にかかるブランケットをもみしだき、気持ちを落ち着けようと呼吸を整える。
もう、何日になるだろうか?愛しの家族に会えないのは?
毎日、日付が変わるまで残業。
会社がこのソフトに社運をかけているのは分るし、年齢的にもまだ無理は利く。
寧ろそんな年齢で、会社からそう遠くない都内のマンション、それもペット可を買う事が出来たのは会社の待遇のおかげだし、ありがたい事この上ない。
しかし・・・しかしだ!
マンションを手に入れ、やっと迎えた家族、友人宅で生まれたばかりの姿をみて一目惚れした最愛の家族。
よっちゃん。
これから物心ついて私に甘え、私を家族として認めてくれるであろう。今。
何故?何故引き離されねばならない?
もちろん一人・・・一匹?家に残すような残酷な真似はしない。
友人宅に申し訳ないがもう一度戻ってもらっている。
はぁ・・・はぁ・・・
もう駄目だ。こんな体温も感じないポリエステルで満足できる訳が無い!
あっ・・・課長の微妙に薄くなった頭・・・アッタカソウ・・・?
駄目!!!
今、席を立ち上がって課長の頭を撫で回す所だった。
はぁ・・・よっちゃん。
普段は全くこっちに見向きもしないのに、、深夜に私の布団を踏み踏みして、隣に寝るよっちゃん。
機嫌がいいときだけ、お腹のふわふわの毛を吸わせてくれるよっちゃん。
なんで、猫って太陽の匂いがするんだろう?
いや、駄目!毛の事を考えたら、またおかしくなっちゃう。
はぁ、ぷくぷくでふにふにの肉球・・・。
なんで?あんな可愛い物がくっついてるの?
あれ?課長のちょっと薄くなった頭・・・ぷにぷにしてる???
だっめーーーー!
もう、駄目だ。我慢の限界だ。ちょっとだけでいい、愛しの家族と会わせて・・・。
もしくは、よっちゃんと一緒に仕事させて・・・。
ちょっといたずらはするけど、あんなに可愛いんだもの皆の癒しになる事間違いなし!
フロア中をうろうろとして、疲れて棚の上でうとうとするアメリカンショートヘアの子供を幻視する。
時々、私の膝の上に乗っかってきたり、キーボードを打つ手を邪魔したり、
「ほら~よっちゃんチュールだよ~」
「ん?ちゅーる?」
課長が急に話しかけてきた!
「なんだ、寝ぼけてるのか?最近根つめてるし、大変だと思うがくれぐれも気をつけてくれよ?」
「あっはい!」
どうやら、妄想が口から出ていたみたい。
は~会いたい!会いたい!愛しの家族!
あれ・・・?課長の頭グレーと白の毛並みじゃない?ちょっともふもふしてもいいんじゃなかろうか?
あれ・・・?
あれ・・・?




