43.心術
「まぁまぁ、遠慮せずに上がっていきなよ!こんな山奥にヒトなんてめったに来ないからさ、歓迎するよ!」
そう言われ、家の中に促されるが、結構簡素な作りの家だ。
広くはあるが、家具は部屋隅に配置されている。
その中で、リビングテーブルと椅子があり、掛ける様に促されるので、椅子のひとつに座るとお茶を出してもらう。
「で?なんでも聞いていいよ!ほら!色々気になるだろ?」
「え?ええと・・・このお茶とても香ばしいんですけど、どこで手に入ります?」
「そのお茶は少し先の町で手に入る穀物を使ったお茶だ」
ああ、麦茶か、道理で飲みやすい。
「じゃなくて~!女一人でこんな所に住んでる訳じゃん?」
「術の研究してるんですよね?聞いてます」
「そう!術の研究なの!それで、そうなったら、次に知りたくなるのは?」
「あ~・・・え~??若そうに見えるのにお酒とか飲んでもいいんですか?」
「若く見えるけどお酒飲んでもいい歳なの!ドワーフだから小さいの!」
「ドワーフ?」
「ちょっと背が低いが、体は強く、暑さにも強い、男は髭もじゃ、酒好き、金属加工が得意な奴が多い種族だ」
「へ~!そんな種族がいたとは初耳です!」
「うん、種族の事が分った所で、さ。そろそろ聞こうよ。私が何を研究してるか」
「何を研究してるんですか?」
「よく聞いた!私が研究する術は思念を力にする術!そう<心術>だ!」
「へ~」
「へ~じゃないよ!凄いんだよ!心の力を物理の力に変えるんだよ?」
「サイコキネシスですか?」
「念動力ではない!例えばアンタの武器ちょっと攻撃力が足りないな・・・しょぼん。とかなってないか?」
「なってますね」
「だろ!そこで<心術>だよ!サイキックアームを使えば、攻撃力の基礎値に補正がかかるんだよ?」
「それは加算ですか?」
「加算だよ!」
じとっとした目で、髭もじゃのおじさんを見る。
「うん、ここに連れてきたのには理由がある。しかし、嘘は一つもついてないぞ」
ふーん、まあ、確かに自分には加算のタイプの術が必要なのだろう。にしてもな。
「まあ、待て!見たところ武器も防具も基礎値が低いタイプのようじゃないか<心術>は役に立つぞ!」
「まあ、その為に術で補強しようとは思ってますけど」
「そこで<心術>だよ!この術の凄い所はステータスの心の値で出力が上がるのだ!」
「・・・!?つまり術防御を上げながら、攻撃力や物理防御力が上がる?」
「正解だよ!中々に察しがいいな!そして見たところアンタは技重視なんだろ?でも、そろそろ防御も上げて行きたい。でも、鎧装備じゃない・・・と言う事は!」
「心を上げて、術防御を上げながら<心術>で物理防御も補強する?」
「正解だ!もう、覚えるしかないよね!」
「うーん、ところで、そんなに都合のいい術なのになんで、自分を連れ込むような事をしたんです?」
「い、いや・・・連れ込むとかそう言う・・・」
「すまんな、可愛い妹が折角、術を完成させたというのに学びに来る者がいなくてな、こんな形になってしまったが、別に悪意はないんだ」
「そうでしたか話を聞く限り、いい術みたいなのに・・・でも心を鍛えるにはどうしたらいいんだろう?あと今使ってる<字術>も育てたいし・・・」
「<字術>を育てる?<字術>は解放した文字の数だけ補正が乗算されるから、鍛えるじゃなくて、解放するのみだぞ。魔のステータスが必要ないからアンタみたいな近接戦闘職が使うには丁度いい代物さ」
「ああ、だからおススメされたのか!後は心を鍛える方法さえ分れば<外衣>のおかげでMPにも余裕あるし、取得してもいいかな!」
「それなら安心しな!この術の凄い所は術を使うだけで心が育つっていう所さ!普通だと術ダメージや精神の状態異常を食らわないと上がらないのに!」
「それは・・・お得ですね!
「よし!決まりだ!基本セットサイキックアームとサイキックアーマー!合わせて20000ゴールドだ!」
「お金が無いので、帰ります!」
「なんで?!」
「入門の街でバッグをアップグレードしたらお金なくなっちゃった」
「グハ!!!兄ちゃん!」
「分った!俺が一肌脱ごうじゃないか!」
「どうするんです?」
「お前さんと会った街のダンジョンを周回しよう!俺が手伝えば、サクサク進める事間違いない!」
「いいんですか?!」
「いいぞ!ただし、この場で術を買っていけ、そして金が貯まるまで一緒に行動しようじゃないか!」
「自分は何も異存無いですね」
「ヤッター!!!じゃあ早速付与するよ!サイキックーーーーー!」
両手を自分にかざす女の子、手から光が出て体中に纏ったかと思うと<心術>が使える様になっていた。
髭もじゃのおじさんとの帰り道、猿が出たのでサイキックアームを早速試してみたが、思った以上の効果だ。
「〔青銅の腕輪〕と<外衣>の補正分じゃないか?」
ああ!そうか、自分は既に心を上げる運命だったのか。




