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L.L.~迷宮人生~  作者: 雨薫うろち
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番外『死線』

 - 定時退社させられる少し前の話 -


ふと感じた違和感。なんで、製造部の日比野さんがまだこの時間まで働いているんだ?


先月なら分かる、しかし今週はおかしい。


そう、今週は彼女が10代から推している、推しキャラの誕生日のはず・・・。


しかも続編映画が放映されたばかりの筈。確か永遠を生きるヒロインのハッピーエンドで終わったとか。


そう先月なら、生誕のお金を稼ぐ為にちょっと残業した所でおかしくも無い。


しかし、今週は・・・なにがあった?もしかしてヒロインが推しの主人公と結ばれて、熱が冷めた。もしくは決着がつき、次の推しを見つけるまでの冷却期間?


だとすれば、踏み込むことではない。


製造部に行ってみるか。


一応、確認だけはするべきだ。本人の問題なら踏み込まない、


しかし会社側が残業させているなら、彼女の事情を知らずに残業を求めているのなら、さり気無く止めねば。


当然彼女だって誰彼構わず、推しの話をしている訳ではなかろう。


そして、製造部に着くと皆慌しくしている。なんだこりゃ?聞いてないぞ?


「一体、何があった?」


「な!お前なんでここにいる!」


「何でじゃありません!どういうことですか、これは。もしかして社員に残業を強制したり・・・してませんよね?」


「くっ嗅ぎつけやがったか。一応残業も交代制にしている。それでもギリギリなんだ」


「理由になってませんよ。皆それぞれに家庭をはじめ背負っている物があるのです。大切な人が誕生日の人だっているでしょう?それを残業強制だなんて」


「分かってる。日比野さんだろ・・・だが一人だけ先に帰したりしたらそれはそれで目立って、今後会社に来づらくなる。だから誕生日当日はちゃんと交代で早く帰れる日にしてあるさ」


「そうですか。しかしこれだけばたばたしている状態なら、なぜ他の部署にヘルプ出さないんですか?」


「お前にばれない様にだよ。もし耳に入ったら、倒れるまで残業するだろ?本当に今はそういう状況なんだ」


「なんでそんな事に?」


「それは俺から説明しよう」


「高橋製造部長!別に自分は上司でもなんでもないですし、追求する立場にもないですが、これは異常ですよ?」


「そうだな、俺だって受ける前に内容は確認するが、相手は昔からの付き合いのある会社、その会社が社運をかけるって言うんだ」


「じゃあ、自分達は命を掛けるしかないですね」


「そう言う事だ。知られちまったら仕方ない。手伝ってもらえるか?」


「水臭いですよ。一応自分も製造部の機械は一通り使えるんですよ?」


「おっ先に着てたのか、今回は無理させないように内緒にするって聞いたが?」


「営業部の高田!お前は聞いてたのか?」


「当たり前だろ、うちだって好き好んで受けてきたんじゃない。長い付き合いと向こうさんの本気が伝わったからだろ」


「あれ??二人とも早いじゃん!」


「人事部の梅田!お前もか?」


「そりゃ、長く世話になってる俺たちならいざ知らず、若い社員が強制的に残業させられてるんだぜ?そりゃあ手伝いに来るだろ」


「で?作業量的には二徹?三徹?」


「いや、それ以上だ」


「四徹か・・・自分も死線を越える時が来たか~。話にしか聞いた事ない黎明期の危機の数々、自分達も将来後輩達に『そんなの嘘だ~』って言われる時が来るのかな?」


「いや、最近のやつは皆優秀だから、話したら馬鹿にしないまでも、呆れられるぞ?」


「それもそうだな。さあて、やるか~」


「こら、三馬鹿!」


「「「あっまささん御疲れ様です」」」


「あんたら、上司に届けも出さずに勝手に残業して!何考えてるんだい!」


「いや、自部署の残業じゃなくてヘルプですから・・・」


「だったら、それをちゃんと上司に説明しな!もちろんあんたらの上司は全て知ってるけどね!それでも報告の義務があるのは分かってるだろ?愚痴は聞くけど甘えは駄目だよ!あんたらだって良い年齢なんだ。下に示しがつかないよ!」


「「「すっすみませんでした!!」」」


「さて、夜になったら夜食作りに来るから、それまでがんばりな!」


「え?いや、そんな・・・コンビニとか行くんで・・・」


「そんな物で力がつくかい!ここぞという時ほどおかんの飯を食え!後あんたらの仕事は部長連中が肩代わりするから、集中してここで作業しな!あんたらが、集中してやれば、ずっと早く済むだろ」


「いや、流石にそこまでは!ちゃんと自分の業務は自分で!」


「はっ!若造が何言ってんだい!あんたらの仕事くらい片手間で出来ないで、何の部長だい!とにかくあんたらは、ここを任されたんだよ!がんばんな」


「「「はい!」」」


「あっ後、日比ちゃんのフォローはアタシがしておくから安心しな」


いつか追いつかねばならない背中は大きく、永遠に追いつかないのでは無いかと錯覚させられる。


ここは『株式会社花沢工房』


当たり前のように時代がかかった台詞が飛び交う旧態全とした企業。

それでも社員達はその一員として今日も命を燃やしてる。

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― 新着の感想 ―
[一言] オタクの内容さえバレてる家庭的な会社 慣れちゃったら、出られないよね~ これ以上の居心地は見つからない…………… 真夏と、真冬に2連休取る子とかも居るんだろうな(笑)
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