34.医精
翌日、まだ次の方針も決まらぬまま、ログインしてしまった。
「S.S.さーーん」
ココは今日も元気だ。本当に仲間になって良かったと思う。ダンジョン攻略がままならない今、なにか素材集めなんかもいいかもしれない。何が欲しいか聞いてみよう。
「やぁ!ごきげんよう!」
「何を急にお嬢様みたいな話方してるんですか!例の鹿頭の事分りましたよ!」
「え?仕事早いな~。若い子のバイタリティって本当に見習わなきゃな~」
「何をのんびり構えてるんですか!どうやらですね、人間の体の一部を持つ魔物って、ゲームのヒントをくれる精霊らしいですよ」
「精霊?マッチョな精霊だから、筋トレの方法でも教えてくれるのかな?」
「それは分らないですけど、ちなみに鹿の精霊の情報はありませんでした」
「え?そうするとどんな精霊の目撃情報が?」
「例えば黒々とした美しい髪の犬」
「ハウンドじゃなくて?」
「ハウンドでは無いらしいです」
「ムキムキ黒マッチョの鹿」
「その情報はどうあがいても見つかりませんでした」
「なんで、自分の時だけそんな、怪しげなのが」
「多分類友だと思います」
「ルイトモ???」
「何にせよ、悪い存在ではないみたいなので、是非話してみてください」
「鹿マッチョと?」
「鹿マッチョとです」
ココが、スパルタなので再び鹿マッチョに会いに行く事にする。
とは、言え何の準備もしないほど迂闊じゃない。
まずは『ネックハンター』は『ネックハング』状態で、鞭を強引に引くと発生するらしい。
もう一つ『スライサー』は走り抜けながら斬りつけると抵抗も無く斬り抜けられる。使いどころは分らない。
ちなみに訓練場のおっさんは何も代わり映えしなかったのが、逆に癒された。
さて、いざ再びの鹿マッチョ!
地下一階も地下二階も余裕で抜けてしまった。
こういう時に限って!!
地下二階大部屋に辿り着いてしまう。
覚悟を決めて、大部屋に入ると、でかい鹿マッチョが仁王立ちをしていたので、思わず、
「でかい」
と呟いてしまうと、得意げにサイドリラックスを決める鹿マッチョ
よく見ると腕を怪我しているようなので<処置>をする。他人に<処置>をするのは初めてだったが、うまく出来た。慣れたものだ。
更に機嫌よく今度はバックダブルバイセップスを決めてくる。すると背中がざっくり斬られている。
誰かビビッて斬りつけたのだろうか?その傷も<処置>する。
「ふむ!結構な御手前で!」
鹿マッチョがしゃべった。
「お粗末さまでした」
「さて、医を目指す者よ!」
「目指してません。自分は古代の遺跡を探索するので」
「いや!お主はもう目指してる!いいじゃないか!医を目指しながら古代の遺跡を探索したって!」
サイドトライセップスを決める鹿マッチョ。
「まあ、別にいいですけど?それがどうしたって言うんです?」
「うむ、私は医を目指す者が少なすぎる現状を憂いた天からの使い、医精である!このまま行けばお主は確実に<治療>を手に入れるだろう。いや!手に入れて欲しい」
「はあ、まあ、特にこだわりは無いですけど、鞭は捨てませんよ?」
「鞭は捨てなくていい。そして<治療>を手に入れた時のために少しだけ、生産レシピを教えてやろう。そうすれば、きっと<治療>を手に入れたくなるだろう」
「そうですか?」
モストマスキュラーを決める医精
「そうだとも!まずは〔濃縮治療液〕これはパーティ全体のHPを回復できるぞ!更に〔麻酔〕これがあれば・・・」
「敵を眠らせることが出来る?」
「いや、予め使用する事で、局部ダメージによるデバフを避けることが出来る。例えば武器を持てなくなる部位破壊!目が見えなくなる盲目!強ダメージによる怯み!そう言った現象を感じなくなる」
「盲目はおかしい気もするけど、でもありがたい」
「そうだろ?さらに〔中和剤〕なら毒、猛毒、麻痺、酩酊、病毒、石化に至るまで、対応できるぞ」
「でも、事前に使用しておく必要がある?」
フロントラットスプレットを決める医精
「まあ、そうなんだけど、でも圧倒的回復力と状態異常耐性を得られると思えば、医を目指すのも悪くないだろ?」
「・・・うまい話しには裏があるかな?」
「くっ、<治療>の発動には全て時間がかかる。途中で攻撃を受けるとキャンセルされる」
「ああ<手当て>系の先のスキルか~、別にいいけど?今のところ困ってないし」
「そうか?!そうだろ!なら更にこっそり〔点滴〕の作り方も教えてやろう。これを使えば死に戻りのペナルティ回復時間が圧倒的に早くなるし、助かるぞ」
「え?死に戻りペナルティ?」
「そうだが?初心者の内は何もペナルティはないが、成長すればするほど、ペナルティは重くなる。お金を落としたり、ステータスを一定時間強制的に下げられたり」
「じゃあ〔点滴〕じゃ、ステータスにしか効果無さそう」
「まあ、その通りだが、でも医を志すのは悪くないだろ?」
「確かに、自分、医を志します!」
「よしじゃあ、ヒントだ<治療>には特殊な器具も必要になる<道具作製>を是非覚えておくといいだろう!最後に何か聞いておきたい事は?」
「なんで、そんなにムキムキなんですか?」
フロントダブルバイセップスを決めながら医精が言う。
「医者の不養生が一番いけないことだからだ!医者が健康でなくては誰も救えない!」
「さっき、怪我してましたけど?」
「HAHAHAHA・・・」
笑い声と共に消えていく医精。




