30.山羊と羊
扉を押し開けば、何か白いもふもふ空間。
てっきり大きい魔物がいるのかと思っていたのだが、羊が2匹、山羊が2匹。
無理deth、速攻脱出することにした。
2:1で勝てるかどうかって相手なのにどうすればいいのよ。
一先ず、街に引き返す。これは流石に対策を打たねばならない。
鞭の効かない羊と後ろから術を撃ってくる山羊。何て完璧な配置。
ん~いくら考えても手詰まりじゃないか。
どうしたものかと考えながら街をうろついていると、
「どうしたんですか?暗い顔して」
ココ、モコが二人連れ立って歩いていた。
「いや、ダンジョンに潜ってたんだけど。一番奥に羊が二匹と山羊が二匹いて逃げてきたんだ」
「そうだったんですか、確かに四匹もいたら、流石に逃げるしかないですね」
「うん、困ったよ。こんな所でダンジョン攻略が頓挫するなんて思いもしなかった」
「ちなみに僕は動物を直接殴ったり出来ないので、どれくらい強い相手か分かりませんけど」
「そっかー、そうだったよね。羊は鞭が効かなくて、山羊は火の玉飛ばしてくるんだ」
「それは、確かに手強そうですね。ところでダンジョンに潜っていたのなら〔山羊の毛皮〕は手に入りましたか?」
「うん、あるけど」
そう言って、溜め込んでいた〔山羊の毛皮〕を渡す。
「うん、これだけあれば・・・。手袋装備しませんか?」
「手袋?自分は割りと手先が使えないと困るから、やめておこうかな」
「腹案があります!指無し手袋です。それなら指先の動きを邪魔しないで防御力を底上げできるし、戦いが少しは有利になるんじゃないですか?」
「そう言われると、そうかも!!手袋作ってください!」
「任されました!」
そう言って、立ち去るココ。相変わらず仕事に取り掛かるのが早い少年だ。
「えっとさ~多分羊と山羊って割りと普通の戦闘職の人なら倒せるっぽいよ」
なんか、言いづらそうにモコが話しかけてくる。
「え?そうなんだ?でも自分は二匹が限界かな」
「へ~、近接職でもごり押しで行けるし、遠距離職でも倒せるらしいんだけどな~」
「何でだろう?でも自分は戦闘職じゃないらしいよ?探索者だから」
「ああ、そっか!罠見つけたり外したりする仕事だもんね。それじゃあ大変か」
「がんばってもう少し強くなるしかないかな。とは思ってる」
「うん・・・まあ、この街のダンジョンはソロダンジョンの筈だからね。がんばれば倒せると思うけど」
「ソロダンジョン?」
「そう、一人用のダンジョン。道幅狭かったでしょ?逆の言葉はパーティダンジョン」
「一人用の逆だと、大人数のダンジョンもあるのか~」
「そう、一人じゃなきゃ駄目って事もないんだけど、精々二人くらいまでじゃないと多分攻略が逆に大変になる筈」
「うん、やっぱり自分の修行不足かな。もうちょっと鹿狩ろうかな」
「それもいいけど、多分さ、羊って殴打に強いんじゃない?そして山羊は術系だから打たれ弱いと思う」
「ふむ?多分そんな感じ」
「じゃあ、斬るか突くタイプの武器強化すればいいんじゃない?」
「ああ、自分だと剣鉈になるかな。ナイフの時は突く感じだったけど最近は斬る感じも強くなってきた」
「一つはそれだね。もう一つはさ、その鞭だけど、もっとトゲトゲのやつにしたら?」
「トゲトゲの鞭???凶悪じゃない?」
「凶悪だけど、多分羊にもダメージちゃんと入るんじゃない?」
「言われてみれば、そうかも。殴ってももふもふされちゃうけど、トゲトゲなら、確かにいけるかも」
「それなら、バザー行ってみたら?トゲトゲの鞭見たことある気がするよ?」
「ホント?じゃあ、行ってみるわ!」
「え?じゃあ、ココにはバザーに行ったって伝えておくね!」
「うん、ありがとう!」
言うが早いがバザーに向かう。
流石に若い人たちは発想力が違う。トゲトゲの鞭で羊を狩るなんて考えもしなかった。
痛そうだもんな~トゲトゲの鞭。
そんな事を考えながらバザーを眺めていれば、あったトゲトゲの鞭。
売っているお姉さんはハーフモヒカンに、ピアスだらけで、中々寒そうな露出の多い服だ。
「すみません。そのトゲトゲの鞭おいくらですか?」
「あら?あなたは冷やかしじゃないのね?」
「へ?冷やかし?」
「アタシのファッションを見て、なんかナンパしたり絡んだりしてくるやつがいるのよ」
「ああ、ピアスがいっぱいだからきっとお金持ちなんですね。アクセサリーて高いって聞いてます」
「え?コレは何の効果も無いファッションアクセだからそこまで高くないよ?」
「へー、ところでこのトゲトゲの鞭はおいくらですか?」
「え?それだけ?」
「え?あっ寒そうですね!知り合いに<裁縫>出来る人いますけど紹介しましょうか?」
「いや、いいや。うん・・・。この鞭は〔茨の鞭〕ランク的にはここいらの街とそんなに変わらない森の方のダンジョンで普通に落ちてるものだからね。いくらでもいいんだけど、5kにしておこうか」
「安い!!他の武器と比べたら破格の安さだ」
「プレイヤーメイドの性能のいい武器じゃないからね。でもこの辺りの羊にダメージを与えられる鞭といったらこれだね」
「一応確認ですけど<戦闘鞭>で使える物ですか?」
「大丈夫だよ。もし羊に苦戦してるなら使いなよ」
「買います!ありがとう」
「こちらこそ、ありがとさん」
そして、店から立ち去ろうとしたところで、声をかけられる。
「あっいたいた!S.S.さん!」




