21.羊の街
乗合馬車で、次の街へ向かう。
狼のいる平原から、道は三つ。どうやら、山の方へ向かう道は鉱山らしい。
そして、森に向かう道は森の中の街に薬草や木なんかが手に入るらしい。
自分達が向かうのは更に広がる平原のど真ん中、道沿いを馬車で走ると不思議と魔物は寄ってこない。
多少両側は小高くなっているが、なだらかで、圧迫感を感じる程ではない。
一台の馬車に今は3人。一人は自分、一人は少年、そして最後は少年の友達の少女だ。
少女は<料理>を得意としてる。
そう『体力溢れる兎汁』の製作者である。いつもお世話になってます!
しかし、まあ少年少女が折角一緒なのに自分が邪魔になって無いだろうか?なんならタイミングをずらして、次の街に向かったのに。
「自分が一緒で良かったのかな?二人は友達なんだろ?」
「ええ、そうですよ。別に一緒でいいじゃないですか、行き先同じなんだし、多分次の街でもお世話になるし」
「いや、いつも自分が世話になってばかりだし、ありがたいけど。なんか歳も大分違うし、邪魔になっちゃうかなと」
「別にそんな事ないですよ?そう言えば、今更なんですけど何て呼べばいいですか?と言うか今まで僕の事、心の中でなんて呼んでました?」
「え?少年って呼んでたよ。名前分らないし」
「少年・・・」
「ブフッ!!」
その時少女の方が思い切り噴出す。何が面白かったのだろう?
「そっかそっか、それで邪魔になってるって思ったんだ!全然大丈夫だよ!私はモコね。名乗ってもいないけど、いつもご飯買ってくれたし、いつもこつこつダンジョン攻略してるの見てたし、私は嫌じゃないよ」
「・・・僕はココ」
「ん?自分はS.S.って最初に設定したね。なんかあだ名とかがいいって聞いたから」
「そうですね。あまり現実の方が想起させない物がいいでしょうね。じゃあ改めてS.S.さん宜しくお願いします。
なんでS.S.さんと行動を共にするかと言うと正直僕達は最前線プレイヤーでも攻略組でもない趣味プレイヤーです。
しかし、ある程度戦闘や素材の収集は出来ないとゲームが進められません。
そこで初心者でコツコツ戦闘と探索をやってるS.S.さんと手を組めたらと思ったわけです」
「手を組むって言っても自分は遺跡を探索したいだけなんだけど」
「その為にはもっと成長して武器防具アイテム揃えなきゃならないでしょうから、損は無いですよ。
手を組むって言ってもそんなガチガチなルールで縛るようなら前線組と同じです。
あくまで協力できる範囲で協力しましょうって事です」
「ああ、それなら全然構わないよ。今まで通りだね」
「そうですね、ところでS.S.さんはその名前に?」
「会社でスーパーサブって呼ばれてるから」
「へー、カッコイイですね」
「いや、不器用で自分だけの道とか仕事が見つからなくて、色々やってるうちに、あちこち手伝う様になっただけ」
「そんな事あるんですねー。逆に器用そうですけどね」
「ところで、ちょっと肌寒くなってきた?」
「ああ、そろそろ次の街が近いんですね。窓から羊が見えますよ」
確かに、馬車の窓から羊たちが草を食んでいる姿が見える。
ふわふわの羊毛を見てると何となく想像できてきた。
「そうか、あの毛を刈って服を作るんだ?」
「はい、そうです。次の段階は羊毛製品なんですよね。この街を越えればスキルも三段階目に突入し始めるので、自由度が上がるんですよね」
「へ~確か<裁縫>だったよね?
「そうです。そこから<縫製>になりました。次は<洋裁>をしたいなと思ってます」
「へ~じゃあ<和裁>もあるんだろうね?浴衣とか着物とかも渋いよね。着方分らないけど」
「じゃあ、僕から洋服買って下さい。正直な所<服>のスキル使っている人が少ないんですよ」
「え?じゃあ、何で<裁縫>にしちゃったの?」
「個人的に将来洋服の仕事につきたいからですけど?一応ローブも作れるので、そっちで稼げばいいかなと。でも服着てくれる人がいるなら色々デザインしたいなと」
「そう言えば、レザークラフトも<裁縫>の流れなの?」
「一応そうですよ。ただ皮小物系は<細工>も必要なんですよね」
「へ~いくつかスキルが必要になっていくタイプか。先の事まで考えると難しいね」
「まあ、一応攻略サイトなんか見ながら、何となく考えてはいますけどね」
そっか、コレだけゲームに詳しいのは日々の勉強の賜物なんだな。攻略サイトをみて将来をイメージする事で夢を叶える。素晴らしいな!
「私はね~自分で料理屋さんやりたいから<料理>やってるんだ。ただ何料理やるかも決めてないんだ~」
なんか楽しそうだが、きっとコレくらい楽しくやりたい事を言える方が夢を叶えるんだろうな。
自分は何がしたいわけでも、目標も無かった。いつも皆何かに向かってがんばってて、輝いてたから、それを手伝えればそれでいいと思ってた。
今自分がやりたい事ってなんだろう?
いつの間にか街の前に馬車が止まり、二人に続いて降りる。
辺りは草原地帯、羊があちこちで草を食み、緑の濃い匂いがする。
吹き抜ける風はちょっと冷たく感じ、軽く身震いしてしまう。




