番外『定時退社』の状況確認
「それで、お嬢さんあいつは大人しく『定時退社』してますか?」
「ええ、はじめは納得いかないようでしたが、最近は大人しく定時きっかりに退社してますわ」
「そうですか、それは良かった。何か趣味でも見つけたのでしょうかね」
「ええ、それがゲームをしているようですよ。私が入る少し前に大きな取引をしたと言う老舗玩具メーカーの新発売のゲーム」
「ああ、あれですか!しかし、あいつがゲームなんて出来るのだろうか?仕事一筋だったのに最近のゲームについていけるのか・・・」
「それが、意外と楽しんでいるらしく、若い方に親切にしていただいているようですよ」
「なるほど、多少抜けた所もあるが吸収力は高い奴だし、人見知りもしなければ、面倒見も悪くない。仲良くしてくれる相手がいれば、安心ですね」
「ただ、話を聞いている限りでは最初の街でずっと生活しているようですが」
「ん?私もそこまでゲームには詳しくないですが、あのゲームはシステムが分りやすい代わりに、広いフィールド、無数のダンジョン、外部から引っ張れるデザインによる装備品の見た目の自由度と中々やれる事の多いゲームの筈。何故いつまでも最初の街に?」
「何でもダンジョン探索をしているとか、その内遺跡を探索して古代の謎を解き明かすとか」
「ん?そんな設定あったかなー???まあソフトの方はうちでやってるわけではないし、あったのかもなー?」
「後、場合によっては長く付き合いのある取引先だからこそ、社員を酷使しているようなら抗議する必要があるともおっしゃってましたね」
「ええええええ!!!!そんな、何を言い出してるんだあいつは・・・まさか、ゲームをしているフリして仕事を?いや、じゃあ何故取引先なんだ?まさかあいつのお節介が遂に取引先にまで!こうしてはいられん、すぐに相談せねば!お嬢さんあいつの面倒を見てくれててありがとうございます」
「いえ、今は直属の部下ですから様子を見るのは当然ですし、勤務態度にも何も問題はありませんので、寧ろ何処の部署からも頼りにされていてうらやましく思っていますわ」
「いやはや、そこまで評価していただけるのはありがたいですが、真面目すぎてやり過ぎないか心配です」
「話は聞かせてもらったよ」
「はっ!まささん!また清掃員の格好して、社員が困るから勘弁して下さいよ」
「何言ってんだい、総務部として会社の何処に不備があるのか常に目を光らせるのは当たり前だろ」
「だからって、清掃員の格好しなくても」
「格好じゃないよ。清掃もちゃんとしてるさ。いつも世話になっている会社を綺麗に保つところから総務部の仕事ってのは始まるんだよ」
「始まるんだよって、総務取締役が自ら掃除しなくても」
「ふん、ただ長くいただけでついた肩書きなんてどうでもいいわ。そもそも長く働いていれば仕事なんて慣れて早く処理できるのが当たり前、にも関わらず、若い奴らが優秀でアタシの仕事はどんどん持ってかれる。今じゃ月に2週間も働けば仕事なんて終わっちまうよ」
「そんな・・・あの量の仕事を2週間て、流石は紅百合のまさ、定年が見えてきて尚越えられるもののいないスーパー社員にして、若い頃は皆一度は愚痴を聞いてもらった皆のお母さん」
「ふん、何がスーパー社員だい。アタシの半分もこの会社で働いてないあいつですら、本気で打ち込めば3週間で終わる量の仕事だよ」
「いや、あいつの本気と比べられても、そもそもあいつの本気の残業量が問題なんじゃないですか」
「そう言えば、そうだったね。しかし取引先にも口だすとなると・・・」
「ええ、問題です。絶対止めないと」
「何言ってんだい?今時は取引先のコンプライアンスや周りからの評価も重要な時代だよ。やるならくれぐれも慎重にやるように諭さないとね!」
「いや!!煽るのはやめてくださ~~い!!」
ここは『株式会社花沢工房』
長く続くが故に家族気質の抜けない所があり、時代遅れと言われることもあるが、妙に社員離職率が低く、優秀な社員や真面目な社員が多いと噂の企業である。




