18.食料を求めて
この先も生きていくには食べるものが必要だ。
まあ、当然だ。
まず、思い当たるのは〔兎の肉〕を売りに行っていた串焼き屋さん。
一本30ゴールドの串焼きをとりあえず10本買っておく。
折角なので、〔兎の串焼き〕で〔体力溢れる兎汁〕を食べれば、中々乙なものだ。お酒が吞みたい。
最近は新入社員を吞みに誘ったりとかそう言う事はパワハラになりかねないらしく、
あまり社員同士で吞みに行ったりとかしないらしい。
自分は会社の人と吞みに行くのは嫌いではないが、大体いつも残業しているので、
皆で力を合わせてピンチを乗り切ったときや大きな仕事を取れた時に吞みに行くくらいだ。
折角、ダンジョンをはじめてクリアしたが、お酒が飲めないのは残念だ。
・・・ご飯を探さなきゃ。
肉と汁はたまに食べるには良いけど、毎日食べるなら主食が必要だ。
でも外で食べる事を考えるなら、パンかおにぎりだな。
パンは前にミトンを売った店で買える。
「すみませんパンっていくらですか?」
「黒パンが30ゴールド、白パンが50ゴールド、食パンが50ゴールドだよ」
「食パンに塗ったり挟んだり出来るものってありますかね?」
「<料理>出来るなら、八百屋か肉屋で買ったらいいと思うけどねぇ」
「自分<料理>出来ません」
「じゃあ、<料理>出来る彼女でも作るんだね」
「いや、今時は女性にばかり<料理>を作らせようなんてのはセクハラですよ」
「でも、あんたは作れないんじゃないか?誰でもいいから作れる人を頼るんだね」
「そうですね・・・ありがとうございます」
うん、確かに毎日コンビニ弁当やお惣菜で済ませて、料理なんて考えた事も無かった。
折角『定時退社』させてもらっているのだ。料理に挑戦してみても良いかもしれない。
冒険者事務所に戻り相談する。
「<料理>してみようと思うんですけど」
「<料理>に関してはある程度知識や経験があった方が有利ですがご経験は?」
「全く無いですけど、折角なのではじめてみようかと」
「そうですか、料理セットが500ゴールドとスキル<料理>が100ゴールドですが」
「背に腹は変えられません。食べるものが無ければ生きていけませんので」
「ご存知かもしれませんが食事には一時的にステータスを上昇する効果がつくので、作って売っている方も多いようですよ?そういった方から買った方が宜しいのでは?」
「あっ・・・バザーでも売っていますかね?」
「売っているかもしれませんね」
「行ってきます」
まさか、バザーでご飯が売ってるなんて思いもしなかった。
装備とか薬が売ってる場所だとばかり。
しかし、自分で作ったものが売れるならご飯が売っていてもおかしくないだろう。
バザーに向かい、店を見て回ると、売ってるわ売ってるわ。
ケーキにクッキー、チョコレート!
おやつか!自分はおにぎりが食べたい!
何でか分らないけど、お菓子を売っているお店が多い。
「あの、ご飯が食べたいんですけど、売ってる店ありませんかね?」
たまらず、一軒のお菓子屋さんで聞いてみる。
「え?ご飯?」
「はい、初心者じゃなくなってしまったので、ご飯が必要なんです」
「ああ、はいはい、そう言うことね!パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」
「おにぎりが食べたいです」
「別にすぐに作れるから、作ってあげても良いけど、一個50ゴールドね」
「20個下さい」
「はいはい、毎度」
と、話しながらも<料理>セットを取り出して、あっという間におにぎりを作っていく。
手は二本しかないのにあっという間に笹の葉にくるんだおにぎりが積みあがっていく。
「凄いですね~それだけのおにぎりを作る技術がありながら、なんでお菓子を売っているんですか?」
「そりゃあ、お菓子の方が売れるからだけど、寧ろおにぎり欲しいって言う人の方が少ないけど」
「お菓子ばっかり食べてたら、体に悪いんじゃ」
「うん、悪いからゲームの中で皆思う存分食べたいんじゃん」
なんていう逆転の発想!!
お菓子を食べたいだけ食べたいそんな人の夢を叶えてくれるゲーム。
これが現実なら絶対出来ない事が出来る。これがゲームか。凄いものだ。
今までやってこなかった事が悔やまれる。
そう、ゲームなら何をやっても良いのだ。もちろん人に迷惑をかけるようなことは控えるべきだが、
そんな事は言わずもがな。取引先としてこんな素晴らしいものに関わってこれた事を誇りに思う。
そして開発者Bさん、あなたは凄いし、間違っていない。
きっと家族と分かり合えるときがくるさ。
「うん、何か急に黙ったり、考え深げになったり、何かを憐れんだりしてたみたいだけど、情緒不安定なの?ゲームのやりすぎは良くないよ?ちゃんと現実で他人とコミュニケーションとらないと」
ゲームのやりすぎも良くないらしい。夢の時間は限られているからいい物なのかもしれない。
今日のところはおにぎりも手に入ったし、ログアウトしておくか。




