15.初心者ダンジョン一階層
意を決して、ダンジョンに入っていけば、入り口は下り階段。
降りれば、松明で照らされた土壁の通路。床も土だ。
そう例えるならば、これから自分が埋められる墓。四方を土に囲まれ、狭い通路に嫌な予感しかない。
正面は直線の通路である為、まずテクニックを使用する。
<看破>!指で丸を作り遠くを見通せば、今のところ何も無いようだ。
ゆっくり慎重に真っ直ぐ進めば、左に分岐がある。
覗き込めば何も無さそうだが、一応、
<看破>!
兎と何か木箱がある。
そこまで広い部屋では無い様だが、問題は兎の色が森とは違って茶色い上に角の色が黄色に黒の縞々だ。
何となく察する。多分森の兎とは一線を画する相手だろうと。
しかし、まだダンジョンは序盤ここで勝てなければ諦めるしかなかろう。
鞭を取り出し、兎の前に立つ。
間合いに入り『ハードヒット』で、先制する。
一瞬動きが止まったところで『バインドウイップ』、鞭を離して『ポイズンスタブ』
すぐに鞭を取り『ネックハング』
鞭が兎の首に巻きつき締め上げる。
そして動かなくなる兎。近づいて<採集>しようとすると消えてしまう兎。
やむを得ず、部屋の真ん中にある木箱に近づく。
これが宝箱なのか?一応、
<看破>!
うん、何か宝箱に変な光のエフェクトが出ている。
触れてみれば、箱の蓋部の隙間に光のエフェクトが見えてる。
どういう意味なのだろうか?中のお宝の光が漏れてる?んな分けないか、だって入って一個目の宝箱だぞ?
試しにナイフをその隙間に合わせて差し込んで蓋部の縁をぐるっと回すと何か手応えがある。頭にピロリン!と音が聞こえる。
そして、光のエフェクトが消えたので、蓋を外してみると中に薬液が入っていた。
そして蓋の裏には何か針が仕掛けてあり、そこに繋がった糸が切れていた。
多分あのエフェクトが、罠の印かなんかだったのだろうか?また図書館で調べてみるか。
薬を鞄にしまい、何の薬か確認すると〔薬草液〕だった。
そして、いつの間にか〔迷宮兎の毛皮〕が鞄の中に入っていた。
取り出してみれば、茶色い毛皮だ。さっきの兎の毛皮で間違いないだろう。
少し小部屋で休む。
茶色い兎の強さが分らず一気にテクニックを使ったので、SPの消費が激しかった。
SPが回復した所で、探索を続けると小部屋の奥に更に道が続いていた為、踏み込んでいく。
通路の真ん中にまた兎だ。
さっきの感じであれば、HPが物凄く高いという訳では無さそうだ。
まずは連続攻撃を当てていく。
そして、相手が攻撃するために後ろ足に力を込めるタイミングを見計らって、『ハードヒット』
動きが止まった所で、更に連続攻撃。
コレで倒しきったが、やはり兎は消えてしまう。
鞄の中を確認すれば〔迷宮兎の角〕だ。黄色と黒の縞々の角が手に入った。
そのまま、通路を奥にすすむ。
今度は突き当たりに分岐がある。とりあえず左から確認すると。また小部屋。
一応<看破>!
おっとー!これはなんだ?足元に何か赤い線が見える。
近づいて確認すれば、細い黒い糸が張ってあり、
光のエフェクトがまた見えるので、そこにナイフを当てれば、糸が切れ、矢が一本通過した。
気が付かずに部屋に入れば、矢が刺さったという事か。
もう何も見えないので中に入れば、やはり宝箱。
今度は蓋に手の形で光っている。そこに手を当てれば、MPが吸われる。
ガチャ!
っと、何かが外れる音がするので、蓋を外せばまた薬液が入っていた。
鞄に入れて確認すれば〔初心者ポーション〕となっている!
「うおー!ポーションだー!!」
あの高いポーションがこんな所に入ってるなんて、奇跡か?
いや、ダンジョンは稼げるってお姉さん言ってたもんな。こんな事ってあるんだな。
いや、しかし凄いなダンジョンてやつは、夢しかないじゃないか。
この部屋はここで終わりだったので道を引き返し向かいの通路を進む、そこは更に分岐になっていたのだが、ふと自分がどっちから来たか不安になる。
一応入り口まで引き返せば、ちゃんと戻れたが、これもし道を見失ったら大変だよな。
一応探索をここで引き上げる事にする。道が分からなくなる不安から何か一気にどっと疲れが出たような気がしたからだ。
少々気を張りすぎかもしれない。もっと慎重に浅い所からはじめよう。
そして冒険者事務所
「ダンジョン行ってきました」
「そうですか、もうスキルも育ってきているし稼げたんじゃないですか?」
「ええ、まさかポーションが手に入るなんて思いませんでしたよ。ダンジョンて凄いですね」
「それは良かったですね。魔物の素材を換金されますか?」
「一応毛皮と角なんですけど」
「なるほど、毛皮は50ゴールド、角は100ゴールドで引き取りましょう」
森でちょっとしか手に入らない珍味〔蜂の子〕並みの換金率だと!!
ダンジョン・・・お金と言う欲望でヒトを狂わせようと言うのか。
「あ、あとダンジョンで迷いそうなんですけど地図とか売ってませんか?」
「それならスキルに<地図>が存在しますよ。スキルをセットして歩けば、勝手に地図が更新されてテクニック『マップ』で地図を確認できます」
「それください!」
「100ゴールドです」
即お金が飛んだ。しかしこれはダンジョンに潜るための先行投資。コレで安全にダンジョンに潜れるのなら安いものだろう。