91.裏街の異変
師匠と別れた後、外に行こうかと思ったが雑踏をまた歩くのかと思ったら、気分が滅入ったので、拠点近くの探索をしようと思う。
表通りじゃないだけあって昼でも雑然としているが、昼から酒飲んでても悪い人達じゃないのは分かってるので問題ない。
ふと気になったのは裏手が完全にごみ山になってる不思議なお店。看板が出てるからお店だよな?
中に入ると、受付が一つその奥は金網が張ってあって今にも崩れてきそうなごみ山。
「こんにちは。ここは何のお店ですか?」
「あ?ここはジャンク屋だよ。なんでも一個300ゴールド。奥のごみ山から好きな物持っていきな」
そう言って、金網の一部を開いて招き入れてくれる。入ったからには一個くらいは買わないと申し訳ないかと、ごみ山近くに近づく。
すると<採集>ポイントの様に光っている場所があるので、引っ張り出す。
〔未鑑定のガラクタ〕
「それを受付に持ってきたら鑑定してやるよ」
なるほど拾っても鑑定するまで何を拾ったか分からないのか。そしてお金と引き換えに鑑定してもらえると。
じゃあ折角だし10個くらい拾っていくか!
どうせ中身なんて分からないんだしと、適当に10個拾って受付に持って行き、3000ゴールド支払う。
「へ~お兄さん中々の目利きだね~」
そう言いながら渡された物は、
〔ガラクタ〕×3 〔薬草〕×3 〔狂い桜の枝〕×1 〔赫赤の石〕×1 〔青銅の髪飾り〕×1
目利きも何も適当に引っ張り出した物なんだが、いいんだか悪いんだか分からない。
ただ〔青銅の髪飾り〕は師匠への御土産にしてもいいかもしれない。自分は帽子被ってるから使わないし。
お店の人にお礼を言って、退散。その後もうろうろと見回っていると、意外と買取のお店が多い。
皮や木や肉はココ、モコ、リンちゃんに渡すとして、骨や虫の甲殻なんかは使わないし、ここで売ってしまってもいいかもしれない。
そして、下り階段を見つけたので下りていこうとすると両側から体格のいい男が二人。
「ちょっと待ちな兄さん。ここから先は通行止めだぜ」
「何かあったんですか?」
「おいおい……とぼけるなよ。分かるだろう?ここを通ったらどうなるか」
「いや、ここに来たのは初めてなんで分からないんですけど」
「そうなのか?じゃあ俺達がいて良かったな、へっへっへ……」
「ああ、人がいなきゃいけないなんて、そんなに危ないんですね」
「そうだぜ。普段からうっすら霧が出てて余りヒトは近づかないんだが、ここ最近急に霧が濃くなってな。ステータスの心が強い者以外通り抜け禁止にしてるんだ。だがよここだけの話奥に住んでる妖魔がいて、時折頼み事をしなきゃなんねぇ場合がある。俺達も何とかいつもぐらいまで霧が収まってくれないかとは思ってるんだ」
「じゃあ、自分が行きましょうか?初級者の霧くらいなら全く問題ないので」
「そうか?じゃあちょっと奥の様子を見てきてくれ。くれぐれも無理はするなよ」
そうして、二人の屈強な男がどいてくれたので、階段を下りていくと、
ぴこーん!
音が鳴るので、すぐにカードを確認すると『裏街の異変』となっていたので、霧の原因を探ればいいのかな?
確かにひっそりとして、さらに雑然とした地域。最早雑然じゃ無くて放棄された街って感じかな。
ふと建物の陰に気配を感じたので、武器を抜き様子を伺うと、明らかに魔物というか妖獣。
大型犬サイズの鼠かな?牙がやたらと長く口の中に収まってない。
目が完全に逝ってしまっていて、かなりグロテスクだが、多分敵意があると見ていいだろう。
自分に術を掛けて戦闘準備、
鼠がそのサイズには合わない跳躍力で飛び掛ってきたところで、
<字術> パース
秘密のルーンで、相手は自分を見失う。横に回りこみ連続攻撃。
見つかった所でハードヒット!と思ったが、何故か発動しない。
つい焦ってしまい、敵の体当たりを受けてしまうが、どうやらテクニックは使えないみたいなので、ひたすら鞭で殴りつけていく。
その間に剣鉈を仕舞い。買ったばかりの撒き菱を巻けば、あっさり踏み抜いた鼠風妖獣の動きが鈍ったので、一気に攻勢。
とにかくがむしゃら攻撃。何しろ搦め手みたいなテクニック中心で普段戦っているので動きをとめられないって言うのが、かなりハード。
それでも、何とか倒しきり回復タイム。
思った以上にHPが削られてなかったのは、手に入れたばかりの忍白衣のおかげだろうか?
しかし、この術で作った白衣。一回作ればずっと出っ放しなんだけど、どうなってるのかな?
回復しながら調べていると、普通の装備にはない表示がくっ付いていた。
その名もdurable。多分これが白衣のHPでなくなると作り直さなきゃいけないのかな?多分そうだろう。ゲージがあるから間違いない。
さて、一通り回復も終わったし、探索を続けると、
暗い水辺にうっすらと写りこむ灯り。
よくよく見ると一軒の建物から漏れ出しているものだと分かり、その家を目指すことに。
霧の中にある建物なら十中八九妖魔が住んでるだろう。妖魔に悪いヒトはいないので、多分大丈夫。