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はじめに  作者: 名鳥 佑飛
3/3

はじめへ

尾張と今田は二人で公園を歩いていた。よく上った坂道以外この公園については知らなかった。池が見えるスポットがあることや桜がよく見えるスポットがあること、そして木々に囲まれた小道があること。歩いているとき、今田は終始俯いていた。先程自分が言った「…もっと早く言ってよ」が良くなかったのかと思っていると、今田の携帯が音を鳴らしている。

「はい…はい…はい、はい!はい!!」 今田が応答するとその声が次第に大きくなっていることに気付いた。今田より七歩くらい前を歩いていた尾張でもハッキリと嬉しい事があったと分かる声がして、尾張は振り向いた。

「やった~!今テープ送った会社から連絡来た、今度歌いに来てくれって」

「本当?良かったね」

「俺頑張るわ!」

「頑張ってね」

尾張は、言おうとしていた本当のことを打ち明けようと尾張に話した。

「最後にはじめに一言!」

「なんだよ?」

「私もまた…」

その時、ここまで見ていた綺麗な景色とは裏腹に何か良くないことが起きるんじゃないかと思った。三人組として活動していた頃もずっとこの日々が続いていくと思っていたのにある日突然解散した。明日には何が起こるか分からない。こう考えないといけないんだと思った尾張ははじめに会ってから続けていた嘘を続けることにした。

「いや、なんでもな~い」

「なんだよ~?」

「そろそろ時間だから行くね!じゃあ」

この時、出発時間は三時‬間前だった。この後一緒に歩いた坂道に行こうとしたが、上るのが辛くなるからここでサヨナラをしたいと思った。

「いつでも待ってるから!たまには帰って来いよ!」

この言葉に尾張は嘘を塗り固めた。

「帰ってくるもんか~」

「次会うまでには絶対ビックになってやるからな!」

尾張が言った後、急ぐフリをしてはじめを見なくなったが、もう一度はじめに振り返った。その表情は自身に満ちていた。まるでこれからの日々を楽しもうとしている。東京に行くのが嫌な私よりも余程マシだ。尾張は三人組でよくやっていたポーズをして別れようとした。手を握り、親指を立て、腕を上げる、そしてその手を今田に向けた。この思いは本当である。ただ、最後はやっぱり嘘をついてしまう。

「バ~カ」

こうして、尾張は本当は行きたくない東京に向かうのであった。


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