弱いだけで守らないで
「ぽぽぽさん!また来てね!」
「ぽ...ぽ...ぽ...」
大きなたてがみのせいか地下へと続く扉をくぐれなかったぽぽぽさん(仮名)は尻尾部分を振りながらどこかへと消えていった。
明るいりんごちゃんが神妙な顔になっていたのが気になっていたけど、女の子には一人になりたい時があるんだ
『女の子には一人の時間も必要なんだぞぉ?』
一応ミーアに言っておこう
もしなにかりんごちゃんに危険な事があったら大変だし
入り口のドアスコープを覗き、ミーアやリブの姿を確認する。
先ほど見せていた泣き顔はどこにもなかった。
「ただいま!」
「おかえり、ティヲ」
「お、おかえりなさい...その、ごめんなさいね」
少し照れくさそうに謝るリブに元気づけるように頭をぽんぽんと叩くミーア
なんだかんだと言っても血の繋がりというのは嬉しいものなんだ
愛の繋がりだけでは説明できない強い力を感じる
「さ、これから働いてもらうからね」
「男の子には倍働いてもらおうかしらネ♡」
どこか不気味な二人にも人間らしい明るさを帯びている
血で繋がった子供が捨てられ、愛で繋がった絆で作られた家族もある
人の関係は今さっき単語を覚えたようにはいかないことがある
「ミーア、りんごちゃんが外にいるんだ
一人だと心配だからこっそり見てきてもらってもいい?」
「...あぁ、分かった
それじゃあ店は皆に頼むよ」
ミーアとりんごちゃんの関係も分からない
りんごちゃんが悪い人に見えないし、ミーアがあそこまで心を乱す理由もよく分からない
嫌ってはいるけどこうやってりんごちゃんを見守ろうとしているわけだし
それに、なんとなくだけど
ミーアはおでやリブよりもずっとりんごちゃんと親しい気がする
ボルマーさんの時と同じように言い合いをすることもまた愛情表現だというのであれば、りんごちゃんはミーアに近い所にいる人なのかも
じゃあ、おでらは?
ミーアにとっておでらは愛でられるペット?
「そういえば私たちは何をすればいいの?」
「ママが出す料理や飲み物をお客さんに出してお話しするのネ♡」
「え、それだけなの!?」
「そう、それだけネ♡
それだけで効果は出るからネ♡」
「...お料理のお手伝いってできるかな」
「?」
そんなの
「雑用もおでに出来る事があるならするよ
男だし」
そんなの嫌だ
助けてもらってばかりが愛じゃない
支え合いたい
力になりたい
「...。」
男であるプライドにも似た意地
目の前の少女に見透かされていそうで胸が苦しい
「あら、私だって出来る事があるならやるわ
料理も一通り出来るし
あと、ティヲ...」
突然、肩をリブに掴まれまっすぐに向き合わされる
「料理舐めてたら...死ぬわよ」
「え!?」
「ま、死にはしないけど大変なのは確かなのネ♡」
「初心者あるあるよ
上級者の手慣れた感じを真似しようとして怪我するのよ」
「ヒェッ...。」
「最初は手伝うんじゃなくて、見ておいたらどうかしら
大体分かってからゆっくりすればいいと思うわ」
「う、うん」
プライドも死の前では無意味である
「はいはい、とにかく貴方たちの本仕事はお客さんとの会話だからネ♡
生気をいれることなのネ♡」
「話すだけで?
本当に?
変な力で魂が吸い取られるとかは...」
「なーい!ないのネ♡
そういう心配はいらないのネ♡」
ほら行った行ったと背中を押される
「おで、うまくできるかな...」
「やるしかないわよ」
それにと言って耳元に口を寄せられる
「さっきのちょっとだけかっこよかったかも」
「!」
耳元に息がかかりゾクリとする
「それだけ!
お互い頑張りましょうね」
そう言った彼女は何事もなかったように席に着いた
少し顔が赤くなった少年を残して
「きゃっほう!りんごちゃんの帰還でありますのよ!」
「ただいまー」
「ちょっと!私がせっかくいかした報告をしたのに、なんですかそれ!
間延びしてんのが休日のおっさん感丸出しですよ」
「お前はアイアンクローしなければ静かにならないのか」
「ひょぇー!ティヲ君お助けを...ってあれ?ティオ君?」
りんごちゃんが顔を覗き込んでくる
咄嗟に腕が前に出てきたがりんごちゃんの怪力によりその行動が無意味と化す
「あららら~?お顔が真っ赤!
かぁいい~」
「俺が休日のおっさんならお前は昼間のおばちゃんじゃねぇか」
「ど~して~♪お顔真っ赤なの~☆」
「...りんごちゃんのこと嫌いになりそう」
「んにゃ!?」
「よーし、それでいいんだ
人を嫌うのは悪いことじゃない
何か好きになるならそれと同じように嫌うことだってあるんだ」
「何ちょっとかっこいいこと言ってるんですか!?」
「はいはい、農薬入りりんごちゃんも働いてネ♡」
「私の扱いの酷さは一体どういうこと!?」
「お前には過去の言動を振り返るほどの脳が詰まってないのか?
...あ、ごめん」
「詰まってます!詰まってますから謝らないで!」
お願い!とりんごちゃんが大声を上げていると
「静かになるほどには脳が詰まってないのかしら?」
周囲に冷気が立ちこめる
発生源は言わずもがなリブである
心なしかリブの相手も寒そうにしているような
「す、すみません...ってあらあら~?」
「...なに?」
振り返らずただ冷めた問いかけをするリブ
しかしその耳は微かに赤らんでいた
「いやいや~あぁそういうことで~
あっはは!うんうん」
「...。」
リブが黙って手を合わせる
そして手を開くとそこには氷柱があった...先端が鋭く刺さったらただではすまないことは子供でも理解できるだろう
懲りていない様子のりんごちゃんに切れたのかただの照れか
「あ、あのリブースさん?」
「おぉもうあんな器用なこと出来るのか
やっぱりうちの妹は優秀だな」
「いやいや感心してないで助けようとか」
「自業自得ネ♡」
「りんごちゃんはデリカシーがなさすぎだよ」
「て、ティヲ君まで!?え、あ...」
今から逃げるには遅すぎるほどリブが近づいていた
前回寝ぼけて書いていたので消して新しく書きました
天狗はまた出ます




