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四国王

ブハのつけているお面は目の部分が隠れるデザインです

エニがあれよあれよといじられている間にブハはアースパーティーのもとへたどり着く

大きく深呼吸をして心の準備ができたところで笑顔を浮かべ戸を開ける


「こんにちは~」


カシャン


軽い金属音に手元を見る

ある程度予想した通り手錠がかけられており、隣には橙色の髪をした少年が立っていた


「随分なご挨拶だね、マーズ君」

「おっとそれ以上はなーんにも聞く気はないぞ!

アース様から『ブハが話しかけても答えてはいけない』って言われてんだ

へへーん大人しく後ろについてこい!」


ぐいぐいと引っ張られる

どうやらアースに釘をさされていたらしい


(マーズ君なら騙せれると思ったんだけどな...)


門番の彼は捕まえれたことに浮かれてこちらの様子を伺わずに手錠を引っ張っている

ブハは誰も周りにいない事を確認して自身の胸ポケットからとある塗り薬を取りだし手首に塗りつける




「い、痛い...痛いよ、マーズ君」

「へへーん、なーんにもきこえ...うわっ!な、泣くなよ」


少年が振り返るとお面から雫がポタポタ垂れていた


「ッヒック...酷いよマーズ君...手首に跡ついた...ヒック」

「え、えぇ?」


ブハの手首は確かに赤くなっていた

治療士である彼はいつも薬剤を持ち歩いていた

仮死状態にする薬、新陳代謝を活性化する薬

そして、肌に炎症を引き起こす薬も____


「僕、そういうのには弱いのに...酷いよぉ...」


声が微かに震えており、少年兵が本気で泣いていることに気づく

しかしその涙が嘘偽りに塗り固められたものということまでは気づかなかった


「わ、悪かったよ」

「ふぇぇ...」

「あーよしよし

ごめんな、俺が悪かったよ」

「ヒック...っ...」

「...じゃあ手錠じゃなくて手つないどくか!

俺の方が力強いし、多分アース様もそれくらいは許してくれるよ

うんうん、意外とあの人って優しいし」

「...」

「それでいいか?」

「...うん」


スンスンいう鼻に罪悪感を感じているのか悪かったなと言いつつ、少年は手錠を外す

握る手も彼にしては随分と優しい


「それじゃあ、行こうか」

「あの...その前にちょっと手首回復してもいい?

他の人にしてもらうよりも自分でした方がちゃんと治せると思うし...」


だめ?と涙声で尋ねるといいよ!と首をぶんぶん振られる


今まで誰にも見せたことのないブハの涙に動揺しているようだ

許可を取れたので座ってできる限りゆっくりと治していく


「...そういやなんだけどさ、会談の時になんでいなかったの?

アース様が他のパーティーの所に行くことなんて滅多にないぞ」

「うん、私用があってね」

「私用?なんかあったのか?」

「うん、ちょっとね

ところでアースからは僕のことをなんてきいてるの?」

「えっとね...『俺たちと戦いたくないから逃げたようだ。もし見つけたら話し合いがしたいから捕まえてくれ』って

だから俺てっきりブハに嫌われたのかと思ちゃってさ」

「へぇ...」


マーズ君をたきつけたのか

アースはそこまで頭が悪いタイプではない

マーズ君を心配させないような言い方だって出来たはずだ

そうしなかったということは、彼はまだ僕を引き込もうとしている

本来、小道具を使わないタイプの子だ

手錠なんてものを持ってきた辺りから何かしら察してはいたが


「でも、違ったんだな!

良かった~俺、ブハに嫌われたらやだもん」

「...マーズ君、その...これから話す内容は内緒にしてくれる?」

「?なんだなんだ」


その、あんまり言いたくはないんだけどと言葉を詰まらせておく


「実は僕...アースに酷いことされたんだ」

「...え!?」

「それで、あんまり顔を合わせたくなくて...」

「...。」

「ほら、僕勧誘されてたでしょ?

その時に何回か...ヒック」


ブハは顔を覆う


「そう...だったんだ...」


あのアース様が...?と顔を真っ青にさせたマーズにブハは手の中でにんまりほくそ笑んだ


「誰にも言えなくて、怖くって...

だって相手はあのアースだもん

誰も信じてくれないだろうし、チクったってばれたら何されるか分かんなくて」


えっえっと喉をならす


「...もしかして、アース様の言ってたブハと話し合いがしたいって...」

「多分、また何かされる、かも...」


やだやだと首を振る


「大丈夫だ、ブハ!

俺はお前の味方だ!」

「マーズ君...」


抱きしめてくれる腕の中に寄りかかる

そして心ではこう呟いた


(かかった)




「マーズ、何かあったか?」

「いえ、何も!

異常なしです!」


あの後、ブハがまた来るねと言って去っていった


(いっつも大人っぽくてすごそうなブハが...)


「そうか...来週、北東部にてムルトパーティーに合流する

今回も頼むぞ、一番隊長」

「うっす、アース様」


(ブハがあんな顔見せるのもびっくりだけど、アース様にそんな趣味(虐待趣味)があったなんて考えられないなぁ...)


「...どうした、オレの顔になんかついてるか?」

「いえ!ただ...」


そこではたと思い出す

そういえば彼はミーアという女性が好きだと言っていたが、その女性は随分と男らしかったような...


(まさか...アース様...)


「大丈夫か、顔色が優れないようだが」


額に手をかざされる


「ご心配なく!!

僕は元気なので!」

「?そうか」


突然後ずさりしたマーズにどこか腑に落ちない表情を浮かべるアース


(この人っていわゆる同性愛者ってやつじゃないのか!?)


このアースパーティーは魔術師で構成されているのだが性別は皆男だ

そもそも傭兵で女なんてそうそういないが、それと女の色が見えないのは別だ

アースが女性で噂になったのはミーアぐらいだ

女性とデートしたことないみたいだし


今までは女性に興味がなかったけど、ミーアで恋心が芽生えたのかと思っていたのだが...


『実は僕...アースに酷いことされたんだ』


(まさか、そういう意味なのかー!?)


頭のいい彼が言葉をぼかすことは少なくはない

それに彼がここまで弱るなんて普通ありえない


「...おい、大丈夫か」

「本当に大丈夫っす!」

「じゃあなんでそんな距離あけてんだ」


アースが一歩距離をつめるとマーズは一歩後退する


「ちょっと風邪引いたっぽいんで!

移しちゃまずいでしょ!?」

「やっぱり調子悪かったのか...

全く...その体のままいられる方が困る

来週にはムルトパーティーと初めて一緒に戦うんだぞ?

安心しろ、オレの【スキル】があれば一発で治る

ジッとしてろ」

「一緒に...一発...ジッとして...うわああああーー!!!

やだぁぁあああ!!」

「うわ、暴れんな!」

「どうされましたか!アース様!」


外の騒ぎに気づいた副長が飛び出してくる


「ネプチューン!こいつに変な物食わせたか!?

さっきから様子がおかしいんだ」

「うわああああ!!!

やっぱりどこかおかしいと思ってたんだ!!

どうせアース様とネプチューン様もなんかしらあるんだぁああ!!」

「どういうことです!?」

「俺、お婿に行くまでは清い体でありたいよおおお!!!

ゲイ軍団にはいりたくなああああい!」

「ゲイ軍団ってなんだ!?

オレのパーティーのことか?

オレもゲイ扱いされてんのか!?」

「貴様!アース様を侮辱するな!!

アース様は少しばかり自分のことを気にかけているだけだ

自己愛が少しばかり深いだけで同性が好きなわけではない!」

「うわああああ!!!ナルシストゲイとかもっと嫌だアアアアア!!!」


アースパーティーから響く絶叫はその後も少しばかり続いた




「...なんだか楽しげですね」

「うん?あぁ、ちょっとね」

「なんです

煮え切らない返事ですね」


鼻歌を歌い妙に機嫌の良さそうなブハ

さっきまで質問攻めにあい、採寸されて疲れ切ったエニからしたら苛立ちしか沸いてこない


「そういえばムルトやアース以外にもパーティーはあるんですか?」

「うん、有名な話だと四国王が有名かな」


ブハはスリーブ部分のレースの柄集をペラペラめくっている


「四国王?」

「アースが王権を得るかもしれないって話で他のパーティーの総長も可能性があるんじゃないかってことに発展してできた話だよ

まず華王アース

パーティー制度を作って国民の結束力を強くした彼が一番可能性を感じるね

それに彼は服装でも食事でも貴族っぽく振る舞っているんだ

ちょっと服ダサい気もするけどね...

まっ彼が下克上するのもそう遠くない未来じゃないかな

そして狼王ムルト

戦場で華々しい成果を上げているし、彼のリーダーとしての適正は高いからね

自身についてくる国民のことを考えてくれそうな彼ならばって考える人も少なくはないよ

戦王キルマ

最も戦場に長く立っていて愛国心も素晴らしい

ムルトとアースは定期的に戦場から離れるんだけどキルマは10年も前線から離れていない

そして最後は血王

血のつながりがある唯一の王子様

まっとうにいけば彼が王様になるけど、民がついてくるかどうかはお察しの通りだよ」

「なるほど」

「エニは誰が王様になると思う?」


綺麗なレースを見ながらのお話にしては随分と物騒なお話だ


「順当にいけばアースでは?

他の者は愛こそあれど頭があるとは思えませんね

もしなったとしても貴族との間で諍いが起こるかグズグズな政治をしてもう一度下克上が起こるだけだと思います」

「ごもっともだね

じゃあ補佐官がいるとしたら?」

「補佐官が頭以外何もなかったらおしまいですね

例えば愛とか倫理観とか」

「じゃあさ、もしも新しい王候補がきたらどうなるんだろ?」

「何が言いたいんです?」

「アースは今はまだ傭兵

貴族でもないし、王になるって本当にバカバカしい話なんだ

でもさ、もしも貴族だったらこの話ってありえなくないでしょ?」

「まさか...」


「一つだけ妙な動きをしている貴族がいるんだ

...もしも、その貴族が本格的に動き始めたらどうなるんだろうね?」

アース君の名誉のために一応言っておくけど彼はノンケです。

ちょっと好きな女性に好意を伝えるのが苦手な子なだけです。

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