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蛇とのかけっこ、もうすぐか

ここは暗い森の中

地面には所々謎のオブジェがあり、空はひの形をした葉に覆われている

その道を歩く三人組…いや、実際には一人宙に浮いているのだが。


「ぽ…ぽ…ぽ…」

「じりょく?」

「ぽ…ぽ…ぽ…」

「へ~その赤色で地面から離れて青色で地面にくっつくんだ!」

「ぽ…ぽ…ぽ…」

「でんじしゃく?って言うんだ

顔の名前かっこいいね!」


「何がなにやらさっぱりですが、とりあえずティヲ君が元気そうで何よりです…。」


普段よりもいきいきとした少年の姿と謎の物体との会話に板挟みになってしまったりんご


「というか、その赤色弱点とかじゃないんですね」


そういうとグリンと謎の物体はこちらを見つめ返す


「ヒッ!わ、私は食べてもおいしくないですよ!」

「ぽ…ぽ…ぽ…」

「何言ってるの、りん…あ、りんごちゃんって大抵こんな感じだから大丈夫だと思うよ」

「ちょっとティヲ君!?」

「ぽ…ぽ…ぽ…」

「あなたも安心した…って思わないでください!

なんとなくわかりますからね!?雰囲気とか表情で!」



「ティヲ君~にしてもなんで言ってくれなかったんですか?

そのドリトル先生的な会話能力」

「ドリトルせんせい…?はよくわかんないけど、相手を楽しませようと思ったら普通に話せるよ?

りんごちゃんは…もうちょっと個性をおさえたら楽しく会話できるんじゃないかな

りんごちゃん自身は優しいし」

「ちがーう!

私は『楽しく会話できる能力』じゃなくて、『言葉の通じないひと?と会話できる能力』に驚いてるんです!!」

「…ぷっあはは!

りんごちゃんってば変なの!」


突然笑いだす少年に驚きを隠せない


「な、なにが変なんですか!?」

「だって言葉が違うのは当たり前のことじゃない

ねぇさんとミーアの話している言葉は違うし、なんならうちに来る接待の相手の人のもみんな違うよ?」

「へ?

じゃあ、なんで会話ができて…ハッ!まさか通訳者!?

あれですか、実はむちゃくちゃ頭良くていろんな言語知ってる的な!?」

「?言葉が分からなくても言ってることはわかるでしょ?」

「…へ?」

「さっきりんごちゃん言ってたじゃん

『なんとなくわかりますからね!?雰囲気とか表情で!』

この人は一体何を話してるんだろうって相手のことを考えて考え抜いて、心を一体化させたら何話しているか分かるよね…ってあれ?りんごちゃん!?大丈夫!?」

「…あの蛇野郎め…!」

「え?へび?」

「…なんでもないです、もうすぐミーア達と合流できると思うのでその方を酒場へご案内してください

私はちょっと外の空気にもう少しあたりたいのでここにいておきます」

「うん…。」


ティヲは何かききたげな表情を浮かべていたが、ふよふよ浮いている謎の物体を連れてそのまま暗闇の奥へと消えていった


「…はー…一体、今回はどんなお話しでどんなキャラにしたんですかねあの蛇は」


誰も周りにいないことを確認して大きな独り言をこぼす


「そもそもこちとらこの世界観もいまいちつかめきれてないんですよ

いつもいつも面白おかしい世界を作ったと思えばキャラもおかしいですし…

今回二人が同じところにいてよかったですよ

こんな分かりやすい敵対関係なら二人とも分割されていつのまにか死んでる的なことが起こってもありえなくはないんですからね…」

「全くだな、ところで随分とでかい独り言だな」

「!ってミーアじゃないですか…驚かせないでくださいよ!」

「気づかないお前が悪い」


一人、思考の世界に入り込んだところを邪魔される

が、ちょうどこの人と話したかったところだ。


「それとさっき言ってた敵対だのって話なんだが、実際敵対だったぞ」

「え!?」

「あいつがインキュバス特有の魅力を持ってなかったら俺の手で殺してたかもな」

「ちょっと!?なんでそんなハラハラする展開が!?

この世界で二人とも悲劇を食らってから死なないと神の盃は満たされないんですよ!?」


ミーアは戦場での初めての出会いを思い出す

そしてその後のことも


(もしも、俺があいつを戦場で殺していたら?

もしも、あいつがインキュバスの能力で俺を殺していたら?)


答えは考えたくない


「ほんっと、運がよかったとしか思えない…いや、これもこの世界を作ったあいつの思い通りなのかもしれないな」


あいつという言葉の音には忌々しさが込められている


「…あの蛇が作る世界、だんだん悪趣味なものになっていませんか?

今までだったら二人が悲劇に会う前に絶対に死んでしまうような世界だったのに、今では片割れ側が行動できるようになってますし…。

まるで逃げている私達をあざ笑ってるような、薄気味悪さを感じます」

「あいつは元々薄気味悪いやつだろ」

「まぁ…それは否定しませんが」

「それで?ティヲのことなんか分かったか?

お前は知恵のりんごだろ?

なんかしらわかったことはないか?」

「それがですね

彼は言語を知らないのですが、話している内容はわかるそうです」

「ほー…それの原理とかもわかるか?」

「多分ですが、インキュバスの能力によるものだと思います

インキュバスは夢の中に現れる生き物でしょう?

夢というものは睡眠時に見せる脳の幻影です

インキュバスが一体どのような非科学的な力を使っているかは知りませんが、その脳内の幻影の中に入り込める…ということは対象の脳内を自由に行動できると思われます

その力を行使し相手の脳内のイメージ図を見てティヲ君は話す内容が分かるのかと」

「なーるほどね」

「彼は心の一体化と言っておりましたので多分無意識のうちにやってのけてるのだと思います」

「…だろうね

以前能力暴走させてるし、訓練してるわけでもないからほぼ才能だろうね」

「彼はその力で接待相手の思考を読み取ったとも言ってました」

「…生き残るために無意識につけた力…か」

「?」


なんでもないと腕を振ってみせるミーア


「あなたはどうなんです?

今のところ能力らしい能力は見たことがないですけど」

「ん~…一応、俺も妖怪らしいんだけど」

「らしいとは何ですか!

転生した後にするべきは自分の能力確認でしょう!ステータス!ステータス!」

「いやいや、今さっき発覚したばっかだし」

「今!さっき!?

怠けすぎ!!」

「記憶がほとんどなかったし、身柄がわかるものも身に着けてなかったし、家族は悲劇で亡くなっていたし…」

「ぬぬ!?」

「それに今まで俺違う種族だと思ってたし」

「何ですか!その今まで勘違いしてた種族ってやつは!」

「特殊生命体…向こうの渡れないところにある国のやつ」

「特殊生命体ですか!ならなんかしらスキルあるんですね!

それで勘違いしてたんですね!そうですよねそうですね!」

「わかった!

わかったから顔近づけんな暑苦しい」


暑苦しいと言われて肩をがっくりと落とすりんご

ちゃんと距離を置いてくれたのは助かるのだが


「俺のは表向きは『疾風』だ」

「んんん?表向きは?」


こてんと首をかしげる


「あぁ、足が速かったり風を巻き起こすからそう名付けられてた

実際それは元々の身体能力によるものなんだがな」

「え!?身体能力高いと風巻き起こせんの!?ふぇ!?」

「んで俺の本当のスキルは『凍結』だと思ってた」

「ちょっと待って!身体能力高いと風起こせるってどういう意味!?」

「うるさい

騒ぐならその風で空飛んだことで騒げ」

「その風で空を飛ぶ!?

ミーア、あなたの体は魔改造されてんの!?」

「…妖怪の成り立ちきいたらワンチャンありえるかも」

「なんで身体能力高いと空と」

「うっさい、いったん黙れ」

「…ウィっしゅ」


ミーアのアイアンクローがりんごに決まる

効果は抜群のようだった


「とにかくだな

この酒場で情報収集したらさっさと出るぞ

さっきママさんに話はつけといたからお前も働くんだぞ」

「了解なのですよ!

このりんごちゃんにお☆ま☆か☆せ☆あ☆れ!」

「…やっぱ、りんごなしでもいいかな」

「マジスンマセンした

まじ勘弁してくだせぇ」

「…ったく」


相も変わらずふざけた少女の様子に呆れかえる

彼女のその態度は辛気臭い自分のせいだからなんだろうが、うっとおしいものはうっとおしい

彼女もそう思われていることに気づいていながらそのように行動しているから今更言ったところで何も変わらないのだろう


そして、変わらないものはもう一つ


「絶対にあの蛇野郎から逃げ切るぞ、りんご」





「っへくち…うぅ、風邪かな?」


大きなマントで覆われた人が鼻をすする

ミーアの家に訪れた人だ


「大丈夫?僕、そういうのは詳しいから見てあげようか?」

「平気だよ

これくらいならすぐに治るさ」


その人は小さな子供を引き連れていた


「それにしても君のほうこそ大丈夫なのかい?

パーティーを抜け出してきちゃってさ

ブハくん」


その小さな子供はムルトパーティーの治療士、ブハだった。


「平気だよ

治療士の僕が留守でも大丈夫なように治療がお得意なあるパーティーに依頼したんだ

【交友を深めるためにも共に戦いませんか?】って返事もおっけーだったし多分大丈夫」

「返事をもらったのにどうして「多分」大丈夫なの?」

「ん~そこのパーティーの頭が厄介でね

ミーアさんのことが多分好きなんだろうけど伝えるのがへたくそでさ

その人の言動のせいで周りから見たらパーティー同士が敵対関係っぽい感じになって、それでぎすぎすするのを避けるためにミーアさんが距離置いてそれっきりって感じなんだけど…」

「ふーん?その人、どんなことしてたの?」

「…なんか俺の女になれ的なこと言ったり、お前とタッグを組めるのは俺だけだとかなんとか」

「あー…」


脳内に浮かび上がる言葉、それは俺様の二文字だった


「ミーアさんがいない今のパーティーに真剣に取り合ってくれるのかがわからないんだよね

なんでも総長のことが気に入らないらしいし…多分、二人が恋愛関係だのって噂があったからだろうけど」

「でも、もう引き受けた依頼でしょう?

流石に途中でやーめたはありえないんじゃない?

子供じゃあるまいし」

「…それがありえそうな人だから多分大丈夫なんだよ」

「君も苦労するね」


全くだよという少年に表面上、何とも言えない笑みを浮かべる


(…もっともこの先、僕の手足となってもらうからもっと苦労するけどね)


心の中ではにんまりとほくそ笑んでいた

長くなったので区切ります

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