魔法少女・りんごちゃんなのですよ!
遅れてすみません
夏休み満喫してました
「…それで、いつになったらあの国境越えのマジックの種明かしをするの?」
いつもは騒がしいくせして今は静かな姉に対して放ったねえさんという声が少し鋭いのは気のせいではないだろう
言った本人も二人の後を追うティヲも、そして言われたミーアもその態度の訳を知らないわけがない
国境の魔術は完璧なはずだ
そうでもなければ亡命者の数が後を絶たないはず
「いや~実は俺は魔法系強くてな~?」
「魔法が苦手なのはボルマー君との会話で知ってるから
ねえさんがそっち方面に強いとは思えないし」
「い~やいや実は知識だけはばっちりでな~?」
「じゃあこの魔術方程式解ける?
そこそこやってないと難しいやつだけど」
リブースが手を宙にふわりとかざすとあたりをほのかに照らす光の集合体が出てくる
「光の魔術方程式って…解かせる気ないだろ…
てかいつの間にこういうの習ったんだ…」
「時々ボルマー君が来ては教えてくれたのよ
そこそこの知識ならここに詰まってるわよ」
ここと言いながら頭を指さし、少なくともねえさんが継ぎはぎだらけの知識しか持っていないか判断するくらいにはねと続ける
「おのれ、ボルマーめ…
俺の知らないうちにわが妹とイチャコラ家庭教師をしているとは…許せん…!」
「そういうのいいから
それで?無理なんでしょ?
無理なのよね
無理に決まってるわよね
うん、無理よね」
「ちょ」
「はい、ねえさんは解けませんね?」
「…はい」
いつの間にか強引になっている妹に押し切られる
確かに無理なのは確かだが
「ねぇ、その光のまじゅつ?って何?」
ふわふわと浮いている蛍の灯りのようなものをまぶしそうに物珍しそうに見つめ、疑問を投げかける
「うーんとね、この世界にはいくつか魔術があるんだけどそのうちの一つなの
有名なのは無気と有気とか合理とか…まぁとにかくいっぱいあるわ」
触っても害はないわと言い、光がその言葉の意味を分かったペットのようにティヲのもとへスルスル近づいていく
恐る恐る触ると触れた部分の光が少し増す
リブの言葉通り危険ではなく、熱はなく痛みが来るわけでもない
ただ今まで暗闇で生きてきたティヲからしたら光がキツイような目に毒な明るさだった
まぶしそうな少年の表情で悟ったのか眩しいよね、ごめんと言いながらまた手を宙にかざす
すると光は霧散する
「この辺りは不気味なぐらい暗いな…」
「空が見えないし、ドルーワとは大違いね…
ティヲのところもこんな感じなの?」
「うん、灯りはろうそくの上の火だけだよ」
「そりゃ空を知らなくて当然だな」
さ、旅を続けようと歩みを進めようとすると襟首をつかまれる
「ねえさん?それはわざと?
それともねえさんはこんな年から認知症にでもなったのかしら~?」
「おいおい、熱烈なハグだな
よ~し正面で構えてやるからドンと来い!」
「む~…あんなんで私は騙されないわよ、ねえさん
はやく国境越えができた理由を言って!」
「え~…あ~…あれだ」
「…あれってなに?」
明らか言い訳っぽそうな姉の「あれ」
一応この茶番に乗ってあげる
しかし、真実は必ず捕まえてやるとばかりに目はギラギラ輝いている
「…俺、実は魔法少女なんだ☆」
「…もっとましな言い訳を」
つまらない姉の言い訳にツッコミをいれようとしたその時
「キラキラリーン☆
私をお呼びしました!?」
ふりっふりのフリルが付いた淡い赤色の髪の少女が突然目の前に現れる
「…だれ?…ですか?」
唐突の異物混入に固まる三人
そのうちの一人、ティヲが質問をする
「私?
私は魔法少女・りんごちゃん!
ちょっとドジかもしれないけど魔法少女のリーダーしている優秀な魔法少女ちゃんです!!」
自己紹介を終えポーズを決めると、後ろでドドン!と小さく爆発が起こる
少女が決まった…とばかりにどや顔している時にはすでに三人の次の行動は一致していた
「さ、早く先を急ごうか」
「もう、ねえさんってば~
教えてよ~」
「え、あのちょっと…?」
「ほらほら、ティヲも行くぞ
手離すなよ」
「え、うん…でも」
「とにかくティヲのお姉さんがどこにいるのか探すところからよね
こればっかりは情報収集するしかないのかしら?」
「あの、あのあの…?」
「俺の知り合いの情報屋がいるかもしれないし、とりあえず酒場いっていいか?」
「情報屋さんってあの?
あの人素直じゃないし、私は信用できないんだけど…」
「ねぇ、ねぇねぇ…?」
「金積まれたらきっちり仕事するし金で動くからある意味信用できるぞ
信頼はしづらいけど」
「えーと…ミーア、リブ…ちょっとは絡んであげない?」
「!!…♪」
ティヲの一言に目を輝かせる魔法少女(笑/?)
その目が潤んでいるのは悲し涙からかうれし涙からか
「よしとけよしとけ、ああいうタイプと絡んでたらこっちまでやべーやつ認定されるぞ」
「それか感化されてああいう人になるのよ
ティヲはだめよ、あんな人になっちゃ」
「…。」
「ちょっと二人とも!さすがにかわいそうだよ!
もしかしたらりんごちゃんさんは勇気を出してやっているのかもしれないし
話くらいは聞いてあげようよ!」
「あの…もういいです…。
どうせ、私なんて…」
「ほら、りんごちゃんさんが泣きそうになってるよ!
謝ろうよ
このままじゃあんまりにもかわいそうだよ!」
「…少年くんの言葉の方がいじめの時に同情する人みたいで心に刺さるんですけど…」
「あー!もうめんどくせぇな!?
わかったよ、でりんごちゃん?
でいいの?」
「!はい!」
「君は我々をどうしたいわけ」
「はい!私は平和を守る正義の魔法少女!」
平和を守るという言葉にリブはとっさに反応する
彼女がこの国境の守り主だとしたら…?
あの魔術はパチモンで、こっちが本命だとしたら…?
高ぶる感情を抑え、自然にそっとティヲの手を握る
汗ばむ手に気づいたティヲがその意図を理解しリブにそっとアイコンタクトを送る
「そして、あなたがたの護衛をしたいのです!」
「…ふぁ?」
「ですから!あなたがたの護衛をさせていただきたくこうしてまいった次第でありまっするん!」
キュルルン☆といってまたポーズを決める
「ということで同行させていただきますます☆」
「は?いらない」
「断るわ」
「ごめん、ミーアで十分だと思う…」
「がっびょびょーん!少年くんまで!?」
逃げる準備をしていた子供たちは拍子抜けする
…いや、もしかしたら彼女は護衛をすると言って油断したときにぐさりとするタイプなのかもしれない
だからこそ初対面で危ないようなあほなような人を装ったのかもしれない
「とにかく俺がいる限り大丈夫だ」
ミーアの強さを知っている二人はその言葉にうんうんと大きく頷く
「…大地と生命を貶めた原因がもうすぐ来るのよ
それでも大丈夫っていうんなら、あなたは愚か者よ」
「…?
もうなによ、この子
ねえさん、ほっといて先行きましょう?」
頭がおかしな子だと判断し、姉を急かす
が、
「いや、待ってくれ」
「ねえさん?
…まさか連れていくなんてこと言わないよね?」
「そのまさかだ」
「…この得体のしれない子を?」
「あぁ、りんごよろしく」
「りんごちゃん☆です!
呼び捨てはめんめなんですよ!」
「随分と直球な名前だな」
「我が主がつけてくれた名前に文句あるんですか~!」
「いや?」
二人がわけのわからない会話をしている最中、ティヲとリブは二人にばれないようにりんごちゃんなるものをかわりばんこで監視しようと話をつける
「ねえさんが何故入れたかはわかんないけど、怪しすぎるわ
国境は越えられないのに付近にうろつくなんて」
「…ミーアの知っている人じゃないの?」
「さぁ?
でも知っている人でも危険よ
ドルーワから逃げたのは確かだから国に売られかねないわ」
「とにかく、僕らが注意しておかないとね」
こうして二人の間に奇妙な絆が固く結ばれた




