私が守るもの
「はぁ~…おいしかったぁ~」
手を合わせてご馳走様という彼の前にはきれいに食べつくされたスープとパンが
「だいぶ食べるのもうまくなったなぁ」
「そ、そう?」
「スプーンとかはまだまだだけどな」
「ウッ…。」
「フォークもだめだしね」
「ウグッ…。」
「ナイフ」
「ウググ…。」
「…は危ないから使っちゃだめだ」
「姉さん、そこで甘えるほうがだめよ」
ベッドに突っ伏したティヲにシーツをかけながらだってだってと駄々をこねるとリブからめっ!と言われる
「姉さんは甘やかし上手なところも素敵だけど、そういうのは人をダメにするのよ!」
「大丈夫
俺はダメなやつでも受け止めてやる」
「そーいう話じゃないの」
いい?と真剣な眼差しが心に刺さる
「今、ティヲに必要なのは自立よ
たしかにあの子は外の世界の敵味方も右も左も上も下もわかってない子よ
でも、重ねてきた年は確実にあるものなのよ
姉さんだかなんだか知らないけどティヲはいままで十分すぎるほど甘えてきた子よ
もう自分の頭で考えて自分の足で歩みを始めるべきよ」
「でもあいつはそれと同じくらい苦しんできた
そしてその苦しませた原因は俺たち特殊生命体だ…。」
本当に悔しそうな姉の姿にもう一度理解させられる
この人はどこまでも自分を責めてばかりだ
「あのね、姉さん
戦争に勝てる理由がそれだけだと思わないで
それに戦争は元々むこうが原因でしょ
火竜や氷竜を使ってこの国を滅ぼそうとしたむこうの
その竜達も今はどこにも見る影がなくて勝手に劣勢になっちゃってざまぁないわ」
竜達がいた頃はこの国はひどく荒れていた
続く負け戦
少なくなっていく人々
増えていく犯罪行為
この国の人々の敵国に対する敵意は凄まじい
当然のことだった
「でもそれはティヲ達には関係ない話だ」
「…なんで姉さんがそれを言えるのよ
どん底を味わされた姉さんが。」
話がそれているとわかっていても話さずにはいられない
どこまで他人のために生きるの、姉さんは
「味わされたからこそだよ
また火竜や氷竜が現れたら俺たちみたいな傭兵や不幸な子供ができる
もう俺はこの不幸な連鎖を断ち切りたいんだ
戦わなくていい
剣を握らなくていい
家族に捨てられる悲しみも家族が殺される苦痛にさいなまれることがない世界を
俺は目指してるんだ」
バカみたいな理想論だとはわかっているけどと付け加える
ううんとうなる声に意識が会話からそれる
どうやら寝転がっているうちにティヲは眠ってしまったようだ
「こんなにかわいらしい子を敵なんて思えねぇよ」
「…。」
さらりと額を撫でる手は神父のように優しく、微笑みかけるその顔は聖母のように暖かかった
姉は本気で言っているのだ
仮にも一介一人の傭兵が
大きな夢を
プラトニックな愛を信じる若い淑女のように
「今日は一緒に寝るか?
リブは病気じゃないんだし」
「…ん」
ごろりと二人でシングルベッドに入るとちょっと窮屈だった
「あ、それとさっきのティヲの自立なんだけど」
「これから少しずつ頑張る子だから見守ってやろうぜ…とかでしょ?」
「だいせーかい
やっぱりリブは頭がいいよ~」
さっき綺麗に整えたばかりの頭がわしゃわしゃと撫でられる
ベッドの中は窮屈だし髪はボサボサになった
でも少しも嫌ではなかった
今日だけだと独り言を心で呟いて姉に抱き着く
自分をずっと守ってくれた体は想像以上に逞しくて腕に抱かれたら自分がつぶされそうだなんて考えてしまうけど、実際は誰よりも繊細な心をしていて
私が守らなきゃ
このままだと姉さんがたった一人で消えてしまいそうで怖い
私が姉さんを守り抜く
この新しい力と頭脳で




