とある少年の未来目標ととある少女の過去の記憶
「……おでってダメなやつなんだ。」
そう言うと少年は暖かいぬるま湯の中に頭まで浸かる
昔からそうだ
姉が教えてくれるものだけが世界だと考えて
でも自分から何か聞くことはなくただ教えられるだけで
息苦しくなりプハッと顔を出す
「お、息止めチャレンジか?」
「み、ミーア!?」
顔を出した先にはミーアが……。
ミーア…?
「ん?どうした?」
「え…や…
む、胸が生えてる…?」
ブハッと吹き出すミーア
外からも堪えたような高い笑い声が聞こえる
「あっははは!そうかそうか
君、見てないもんな…でも胸が…生えたって…フフッ」
「そ、そんなに笑うことないでしょ!リブも!」
外から小さくごめんと返ってくる
「ハー…普通胸を潰してたとか思うんだけどな……フフッ」
未だにツボが抜けないのかちょっと笑っている
(普通…か)
自分は常識を知らない
『…君はまだ若い
これからたくさんのことを学びそれから導けばいいさ』
あの時物知りな青年の言葉が蘇る
自分はまだ何も知らない子供なんだ
「ねぇ、ミーア」
「なんだ?」
「おでの依頼、もう一つあるんだけど…。」
そんなの…
「お、なんだなんだ?
言ってごらん」
「なんでもいいんだ
おでに常識を教えてほしい!」
そんなの嫌だ!
「なんでもいいんだ
空の色とか地面の色とか紙の束に書かれているお話でもなんでもいいんだ」
おではもう
「おでに教えて…いや教えてください!」
誰かのお荷物になりたくない
「うーん…常識、か
俺はシュウドンの常識を知らないし…実際盲人のことを知らないわけだし」
「いいよなんでも
教えてくれるなら」
「わかったわかった
わかったから一旦離れよう
俺としては大歓迎だけどなんか危ない図になってんぞ」
なんとしてもと思っているうちに熱が入りすぎたのか彼女の上に乗っかるという二人の性別が反対であればアウトな行動である
「わー!
ご、ごめんなさい!」
「あ、これ指摘しなかったらすんげぇいい状態が続いてたのに
あ〜失敗失敗」
「姉さんダメよ!
ティヲ早く離れなさい!」
「もうとっくに離れてるよ!」
ドンッ!
隣から壁ドンする音が聞こえる
「あ〜…ちょっと騒ぎすぎたな」
「…とにかく二人とも早くあがってね?
私は先に寝ておくから」
「…?」
浴室の扉の向こうの気配が消える
「さっきのって何かの合図?」
「あ、そっか
さっきのはうるさいっていう文句みたいなものだよ」
「へぇ〜…。」
にしても常識…か
一つのことをとっても彼からしたら新鮮なものなんだろう
空の色とか地面の色なんてここの人にとっては知ってて当然だ
さてさて、どうしたものか
子供って見たものを親に質問して学んでいくもんだけど
親から教えるということはまずないし…弱ったな
そもそも俺の仲間でそういう育児経験あるやつ見たことなかったし
「ふ〜んふんふんふ〜ん」
風呂に入っている時に無意識に口ずさむ鼻歌
「…その歌ってなぁに?」
「いや、そんな深い意味はない…あっ」
そうだ
そういえば、ティヲは子守唄が好きだったはず
「俺がよくリブに聞かせる子守唄があるけど…きく?」
「聞きたい!」
そうこなくっちゃ
子供は義務感じゃなくて好奇心で学ぶもんだしな
「甘いりんごが喉をころころり〜よ♩
心温まりぽっかぽか〜♩
さぁあの時の蜜を思い出し〜♩
全てを隠せ一輪の花〜♩」
「…なんだかお腹空いちゃった」
「さっき宿屋のおっさんからもらったやつあるから食べるか?」
「うん!」
元気でよろしいと頭を撫でる
てか、これ子守唄にしては変な歌だよな
まぁ大抵わらべ歌って変なやつばっかだしこれもそれの一つみたいなもんか
『ミーア、まだ起きているの?
お母さん歌ってあげるからこれでおやすみよ?
甘いりんごが喉をころころり〜よ♩
(ジジジ)温まりぽっかぽか〜♩(ジジジジ)
さぁ、あの時の(ジリジリジジジ)』
…?
今、何か…
母さん…?
「…ミーア?大丈夫?」
「あ、あぁこの通り!」
サイドチェストォ!と叫びポーズをとるとまたドンッ!という音が壁から聞こえてくる
「…静かに、だね?」
「…そだな」
タブレットより投稿です




