友達でキスするのはおかしいのか?
「全く...あなたはいつもそそっかしいんだから」
「あはは...お騒がせしてすみませんでした!」
青年の叫び声にパーティーメンバーの何人かが集まり、説明するはめになった
ちなみに説明する間、ムルトは全員から蔑んだ目を向けられていた
...別に俺が悪いわけでもないのになんだこの罪悪感
「とにかく!やましいこととかおっそろしい拷問とかなんもないから!」
相棒の下心がポロリしたけど
「はいこれにて終了、散った散った!」
「でもミーアさんのほっぺた腫れてるよ?」
メンバーの治療士である最年少のブハが傷跡に触れる
「鼻から血が出た跡もあるし...消してるけど何かやましい事あったんじゃない?」
いやそれはティヲ君見て興奮した跡だから
にしても水で流したのによく分かったな...やっぱりパーティー制度優秀なんだな~...?
ミーアの思考をよそに議論は白熱する
「そういえばさっき隊長、片方に下心あるけどって言ってましたよね?」
「それは本当?どちらに下心があっても許されないわね
ムルトにあるなら本当に最低だし、ミーアにあるなら女心を弄んでるようなもんだし!」
「俺にあるわけないだろ!?」
こんなやつにと言いかけてハッと気づく
本人から恋心がないってキッパリ言われたら流石に傷つくよな
こいつ力任せなところあるけど心自体は繊細だし
「総長...あんたがいつも東門で酒飲んでいたのは知ってましたが流石にこれは...」
東門は街からミーアの家へ行く時に通る門だ
...ちょっとストーカーみたいで友がした行為とはいえきもいぞ
「惚れた相手に何してるのよ!!」
「そーだ!そーだ!」
「隊長、俺の後ろに隠れてください
けだものの前では隊長であろうと女は男に守られるべきです!」
「お、おいそろそろ止めてやれよ
ムルトがっつり落ち込んでるし、な?」
ズゥゥン...という効果音が目に見えそうなほど落ち込んでいる
「それに俺が力勝負で負けるはずないだろ!」
「でも隊長、総長に両手を片手で抑えられてたじゃないですか」
「あ、あれは...本気だしてなかったんだ!」
やっべ声震えちゃった
もちろん皆からは嘘と見抜かれ
「ミーアは自覚なさすぎよ
男はみーんな危ないのよ?
あなたがいかに男らしくいても、ムルト総長があなたの友達だとしてもね」
ムレミアの豊満な胸が体に密着する
いつもならジョークの一つでも飛ばすのだがな
「そうです!隊長は優しいし危ない橋も渡るしで...もう少し自分を大切にしてください!!」
ガシッと肩に手を掴まれる
うんまぁ危ない橋渡ってる自覚はあるよ?
情報得るためにさっき賭け事してた連中ともつるんだ経験あるし、金欠時は違法な闘技場に入り浸ってたこともあるよ?
でもさ、それって
「しゃーなしだしなんかあっても自業自得だって分かった上でやってることだし、それに性別は関係ない
それを優しいって言われるのはお門違いだぞ」
そこに自分を大事にする必要はない
「とりあえず手を離してくれない?暑苦しい...。」
青年から発せられる熱量もあってきつい...
「あ、おいこら!ガキィ!!待ちやがれ!」
「ミーア!!どこ!?」
!
この声は!
「!ここにいたんだ!!
ミーア大丈...ぶ...」
扉にいたのはボロボロの服の上にマントを被った金髪の少年
「ティヲ!なんでこんな所に!?」
リブならティヲを連れて行ってくれると思っていたんだが...はぐれたのか...!?
「うわぁぁああ!!!ミーアをはなせぇ!!!!」
ん?なんかデジャブ...
「うわっ!お、落ち着いて!別に我々は隊長に危害を加えるつもりは」
聞こえていないのかはなせはなせと身近にあったものを投げつけてくる
「イタッちょっと坊や、落ち着きなさい」
そう言うとムレミアは粉末状のものをばらまく
「はなせ!はなせ!はなせ...!はな..せ...!は...な...」
粉を吸い込んだティヲは膝から崩れ落ちる
「ティヲ!」
「安心して、魔術で合成された即効性の眠り粉よ」
粉を吸い込まないように布を口元に当てられる
「...この子はもしかして隊長が連れ帰った子ですか?
総長が言っていた子供の特徴があるんですが」
「いや、この子は遠い親戚の子でな
ほら、髪とかリブに似てるだろ?キラキラ光ってて綺麗だよな~」
まずいまずいまずい...
ここのパーティーメンバーで敵兵に情けをかけるやつなんて良識をもったムルトと気性が穏やかな治療士のブハぐらいしかいない
「も~う急に粉使うから総長がガードし損ねて眠っちゃったよ!」
グゴゴ...と健康的ないびきが聞こえてくる
...この場は俺が誤魔化すしかないようだな
それがうまくいかなかったら
ティヲが敵兵の子供だとバレたら何されるか...
「ってこの子大丈夫なの!?マントで隠れててわかりづらかったけどがりっがりじゃない!!」
「うわっ本当だ...骨浮いてるって...生でこんな子見たのは初めてですよ...」
...なんか大丈夫そうか...?
「ちょっとちょっと!親御さんは何してたの?これ!」
「話によるとな、両親二人を事故でなくしていたらしくってさ
俺達に頼る親戚いないの知ってるだろ?この子も同じだったみたいでさ
それでようやっと最近になって俺達と縁があることを知って訪ねてきたってこと」
口から出まかせが思いのほかうまくいきそうだ
この二人はどうにも不幸な人というのが見過ごせないタイプだ
ほーほーと頷き最後の方には涙を浮かべる
「わだじ...この子のママになってあげたいわ...ごめんなさい、乱暴なことしちゃって」
「俺じゃあパパになります!」
「お前らみたいな傭兵の親もったら将来碌な子にならねぇよ
それにこの子の思い出の中に素敵な両親がいるんだから諦めな」
それもそうだなと二人とも納得して鼻をかむ
...例え二人が素敵で優しくてかっこよくて綺麗で界隈ではトップのパーティーの一員でも傭兵は傭兵
傭兵は正式な近衛兵ではない、殺し殺され背中にあるのは死神の鎌
時には汚い仕事もしなければならない...子供のうちは金が入るだけで嬉しいから傭兵という道は光り輝くものにしか見えない
でも大人になればなるほど見えてくる
白い光は死者の骸骨の粉で
引き上げてくれた手だと思っていたそれは自身の腕を拘束する鎖で
もがいても他の子が歩む綺麗な世界に戻れない
鎖が上へ上へと引き上げるから
もし綺麗な世界に戻りたいというのであれば、腕を断ち切るほどの覚悟なしではできない
...そういうものだ
「それにしてもリブちゃんは?大丈夫なの?」
「確か病気なんですよね」
「あぁ、ちょっと元気になったから街に出かけたがったからこの子と一緒にお買い物しようって話になってな」
「へぇ、元気になったの?
よかったじゃない!」
「じゃあじゃあ!
もしも病気が完治したら隊長、俺と手合わせしてくれませんか!?」
「僕もお願いあるんだ!リブちゃんに会わせて~
ミーアさんからだと可愛いしか分からないもん...」
「元気になったらな?」
やったー!と喜ぶ二人
...悪いな、その時は一生来ないのかもしれないんだ
「このままリブ待たせるのも悪いし帰っていいかな?」
「はいっ!また会った時にはお手合わせお待ちしてますね!」
「僕も~!」
「今回はあんまりおもてなしできなくてごめんなさいね?」
...本当にすまない。
胸のチクチクとした痛みを悟られないように出来るだけ明るい声を出す
「あ、ちょっと寝ぼすけな総長様にいいかな?」
「うーん...寝てるとはいえ大丈夫っすかね?」
「ミーア、一メートルは離れなさいよ」
「ジー...」
ムルトが起きてなくてよかった
起きてたら絶対無言で泣いてるよ
「大丈夫だよムレミア...ちょっと話すだけだから」
目を閉じた総長に近づく
「...今度街に来るのはいつかわからねぇ、もしかしたら一生会えずに終わるかもしれねぇ」
周りに聞こえない小声で語りかける
迷惑ばかりかけてすまなかった...礼といっちゃなんだが」
閉ざされた唇に触れる、石で切れてしまった唇で
後ろから悲鳴があがる
「...俺はお前の思いを勝手に利用してたんだな、悪かった」
そのまま立ち上がる
と下に引き寄せられる
「勝手に勘違いしてんじゃねぇよ」
「起きてたか」
よくよく顔を見ると水滴がついている
本当に無言で泣いてたのか…。
「...俺はお前に振り回されてばかりだったけど、楽しかったんだ
それを悪いことだと思うな
俺とお前の過去全てをな」
顔を近づけられる
「...お前がまた何しょいこんでんのかは知らねぇが俺はいつでもお前の味方だ
なんかあったらいくらでも俺を利用しろ」
耳元で囁かれる
「そんだけだ」
パッと服を離される
「さっさとどこへでも行きやがれ」
「...あぁ」
長年の相棒に背を向ける
「それじゃあな」
「おう」
ティヲを抱きしめたままリブがいるだろうと推測される宿へとむかった
「そ、総長...」
「あらよかったじゃない
ムルト総長、最後にいいもの頂いて」
「?何がだ?」
「ま、失礼ね
好きな女の子からのキスにそんな反応なんて」
「えぇ!?いや俺はあいつのことそういう意味で好きじゃないぞ!」
「まーたまた~下心あるんでしょう~?」
「俺にあるわけないだろ!?あいつのことは友として好きだ!」
「え~好きなお友達にはキスするの~?」
「あぁ、そうだが。」
ピシャーン...ゴロゴロ...
雷が落ちた
「え〜いやいやだって
...え?」
ムルトがあまりにも真顔だったのでジョークでないとムレミアは悟る
「そ、総長冗談はよしてくださいよっ!
俺にキスとかできないでしょ?」
「ん?しろと言われたらするが?」
ピシャーン...
また雷が落ちる
「え?いやいやいやいや...え?」
「ちょ...ちょっと俺、トイレ行ってきますね」
「…私も」
「?おぉ行ってこいよ」
ムルトのいる部屋から少し離れた廊下でようやっと口を開く
「え、じゃあ総長は隊長がそういう意味で好きってわけじゃないんですか!?」
「そ、そうっぽいわね...ムルト総長って誰にでもああなのかしら?」
「俺、総長のことが心配になってきました」
「…私も」
「あいつら、俺らの仲をなんだと思ってるんだ...ったくこれだから最近の浮ついた連中は」
メンバー二人に妙な心配をかけたムルトはそんな二人の考えなど知るはずもなく、タバコを口に咥える
「どーゆーことなの?」
ムルトと取り残されたブハは大人達の反応がよく分からず頭を捻る
「お前も年食えば分かるようになる話だ」
タバコの火をつける
「ふーん?」
「...まぁ、俺も誰にも教えられずにこうやって生きてきたんだ
昔は常識知らずなヤツってからかわれたしな」
フー...と胸いっぱいに吸った煙を吐き出す
「どーゆーことなの?」
「...いずれお前にも分かるさ
よき指導者無しでやってきたことの辛さがな」
「…ふーん?」
またまた頭を捻る
「うーん…そういうのはよくわかんないよ」
「フッ子供のうちはそれでいいのさ」
「じゃあさじゃあさ、そんな子供からのお願いきいてくれる?」
手をお祈りするように合わせておねだりする気まんまんだ
「お?なんだ?高いものはやらんぞ?」
「ううん、ただね僕ともキスしてってだけ!」
ブハは自身の唇を指差す
「お前もか?」
「ダメ〜?」
「いや、構わんが」
「ありがと〜う」
ンチュと軽く触れる程度のキスをする
「それじゃあもう夜も遅いし、おやすみなさ〜い!」
「んん?あぁ…おやすみ
今日は妙な日だったな」
湿った唇に違和感しかなく自分もトイレへ行って水で洗おうと立ち上がった
「親を事故で亡くしようやっと親戚のミーア達の下へ訪れた…ねぇ。」
自室に入ったブハは事実確認しつつクスリと笑う
「それにしては傷跡がおかしなものばかりですよ、ミーアさん
タバコで焼かれた痕、拘束具をつけた痕…大方彼は奴隷ですかね?」
最年少ながらに治療士である彼は魔法面の才もあってその地位にいるのだが、医療知識が疎いわけではない
「ま、なんであれ戦場で拾った子に間違いないでしょう」
彼は唇に塗ったリップを掬い、謎の模様が描かれている紙へ塗りたくる
「逃げ切れたと思っているみたいですけど…残念でしたね」
リップにミーアの血が混じっておりその血と反応して、模様が淡く光を放ち魔法陣へと姿を変えていく
「別に僕は愛国主義でもなんでもないんでその子がどうなろうとどうでもいいんですけどね
…いいはずなんですけどぉ〜」
自分と同じくらいの年の少年が頭の中に蘇る
突撃する勇気は褒めるべきだろうが、その後の行動があまりに陳腐で彼を漢字で表すと馬鹿なんだろうなと呆れる
明らかに僕よりも劣る彼を救うミーアさんの行動が読めない
なんでミーアさんは僕よりも…
「…僕たちに嘘ついた罰として嫌がらせくらいは受けてくださいね?」
タイトルがもう思いつかないんで登場キャラの心情を書くことにしました(諦め)




