待ってて...!
「...ミーアどうしちゃったんだろ」
決闘を終えた後、倒れた女性を抱えたムルトさんに腕を引かれて消えてしまった
『こっち来んな!ガキが!』
「あんなに怖い顔してるの初めて見たよ...。」
「...もし貴方が本当に拒絶されたとでも思っているなら、私は今ここであなたをぶたなければいけないわね」
ギロリと睨まれる
「だ、だって!
君だって、いや君のほうこそ散々言われてたじゃないか!」
周りからの視線が増える
大方、可哀想な恋人と話すうちに大声になったんだろうと、好奇にかられた目は哀れみの色へと変わる
「...ちょっとついてきなさい」
ティヲはリブに腕をつかまれ運ばれる
ムルトがミーアにしていたことと同じなのだが。
「可哀想だな、あんな姉を持って」
「もしかしてアイツ妹のことを慰み者にしてたんじゃねぇか?」
「ははっありえるな」
(違う)
周りの反応は
(ミーアはそんなやつじゃない!)
ティヲ達の心を踏みにじる
(おでを救ってくれた、数少ないヒーローだ...!)
無言でつかつかと夜の街を歩いていく
「...ねぇ!どこ行くの?」
周りからの視線が痛い
「それぐらい考えたらぁ?」
「ぅくぅっ...。」
服をとりに戻った際、店主からおまけにマントをもう一つもらった
いらないと言ったが余りものだと言って頑固になっていた
店から出る時に青年がありがとなと店主に声をかけているのが聞こえる
その声は
『なぁ、じいちゃん!ミーアさんとアミさんの決闘が東門付近で始まるって!』
(...施しのようなマントなんていらない)
「...宿よ
言ってたでしょ、ねぇさんが」
「やど...?」
「ふぅ...あなたって思っているよりも子供っぽいね」
リブはやれやれと頭を振る
「なぁっ!?そんなこと言ったらリブだって!」
「そういう所が子供だって言ってるのよ」
ピンッと頭にでこピンされる
「いい?
言ってることと考えていることが違うときもあるのよ
ねぇさんは私達を助けるために一芝居うってくれたの
...私達、貴方と私...そして対戦相手の子の名誉のためにね」
「ど、どういうこと?」
おでこをさする
「ふん...少しは自分で考えてみなさい
聞いてる限りでは貴方はずっと周りに頼ってばかりで自分から行動することがないじゃない
いつまでも周りが支えてくれると思ったら大間違いよ」
「そんな...急に、厳しく言われても...。」
「...そういう所が似てて...」
ぼそっとリブが何かをつぶやく
「なに?」
「なんでもない...ほらチェックインするわよ」
「う、うん...。」
(ミーアの...考えていること...?)
いつも飄々としていて掴みどころのない人
そんなの分かるわけないじゃないか...。
自分みたいな人を愛でる理由も、どこまでも人のために行動する訳も
「分からないよ...。」
二人分の部屋をとり、リブは先に入浴を始めた
ベッドのシーツに蹲り、頭を抱え込む
何もかも知らない
彼女のことなんて
おでを救った人はみんな光を纏っているんだ
その光が眩しいばかりに助けてもらっても分からない
助けてもらったのは確かだが、誰だか分からない
光が自分さえも包み込んで光の世界に溶け込ませようとする
それがいいことなのかさえも分からないまま
...いや、本当に何も分かっていないのか?
おでは、知っている
リブが好きでたまらないミーアを
ボルマーさんに対して辛らつながらに楽しげなミーアを
こちらに向かって可愛い可愛いと連呼するミーアを
おでは知っている
ミーアは人の幸福のためを思って行動していることを
彼女が人のために動く理由は分からない
でも、いいんだ
彼女が人のために動いているという事実だけで
なら、おでは...
おでが今することは...!
「ふ~気持ちよかったわ
...さっきは言い過ぎたわね」
髪をくせっけの通りに拭いてやる
「ごめんなさい、さっきのはほとんどやつあたりよ
...何もしないでできないでいるのが私みたいだなって思っちゃってさ」
扉の向こうで返事をしない少年に一人語りかける
「ねぇさんに頼ってばっかで...情けないでしょ?
さっき私は貴方のこと馬鹿にしたから貴方も罵倒してもいいわよ
...?」
物音一つしない部屋に違和感を覚える
「ちょっと...ドッキリ?
私も悪かったわよ」
ティヲがいる寝室とリビングの機能を兼ね備えた部屋へ行く
そこには
誰もいなかった
「ちょっと...
...まさかあの子!」
「ハァ...ハァ...」
おまけに貰ったマントに身を隠し宿屋の人に教えてもらった建物へと向かう
「待ってて、ミーア...!」
マントの隙間から金髪がチロリと覗かせる
夜の街にマントで身を窶した小さな背丈の子供が駆けていく




