愛情表現ってなんなんだ?
「そんなら腹ごしらえもできたわけだし…早速旅の準備をするか」
腕で鼻元を拭いた後に口元も拭う
「…ミーア殿、浴場の水で洗った方がよいですぞ」
「え〜めんどくさ〜い」
「ねぇさん、顔洗おう」
「はーい」
リブの声にミーアはすぐさま行動する
「あの!ミーア」
「ん?どしたの、ティヲ」
顔だけティヲの方へ向ける
「その…おで、助けてもらったのに…ごめんなさい!」
「…君ならそうすると思ってたからな」
「え?」
「俺な、実は両親のことあんまり覚えちゃいないんだ
だから家族といえばリブだけみたいなところあるんだ」
クルリと体もこちらに向ける
「君も…そうじゃない?
ねぇさんだけが家族だって思ってるんじゃない?」
「…うん」
ミーアはクフフと小さく笑う
「俺たち、ほんっと似たもん同士だな
…だからこそ分かるんだ
リブ一人でどこかに行くなんてさ
ほっとけないって」
ほっとけない
…その言葉がリブにだけでなくティヲにも言ってるように感じた
「…でもごめ」
「ダメ」
「え」
ピッと指でペケマークを作るミーア
「こういう時はありがとうって言うもんだ、な?」
「うんっ…ありがとう」
「よーくできました
…それじゃ!今のうちに考えておきなよ〜」
彼女が歩いた跡には新しい赤い模様が点々と木の床に染み込んでいた
「か、考えるって何を?」
「着る物だよ」
「き、切る者!?」
「そ、お洋服さ」
「え、あ、きるってそっちか…ってお、お洋服!?」
「全く!ミーア殿は拙者に当たりが強すぎますぞ!
拙者は体鍛えてないから痛いっていうのに!」
「フフッねぇさんの愛情表現よ
気が置ける相手だからこそするんじゃない?」
リブとボルマーは皿洗いをしていた
「むむー…そうなんっすかね〜?」
水洗いをするボルマー
「そうよ、きっとそうよ」
食器拭きで水分を吸い取るリブ
「そう…そうっすね!きっとそうっすね!!」
テンポをあげるボルマー
「きっとじゃないわ、絶対そうよ!」
ノリに乗るリブ
「むっふーん!そうっすか!そうっすか!
嬉しいっすね〜!よーしこうなったらさっさかこれを終わらせて会いに行くでござるんるん!」
「いいわ!その調子よ!」
えっさかほいさかと作業を早める
水仕事中にテンポをあげると当然ながら水飛沫が周りに飛び散る
床、料理場、戸棚…そして一緒に作業している人にも
「ふぅ…こんなものっすかね」
「ありがとう、手伝ってくれて!」
「いいんすよ〜研究者見習いの仕事は水洗いから入るんっすからね〜」
「フフッお師匠様のマイトさんは元気そう?」
「はい!そりゃもうピンピンしてるっす
どこで聞きつけたかは知らないっすけど今日、ミーア宅にお邪魔するならリブースちゃんの様子も見てこいって言われて」
「病気の件では本当にお世話になったわ
…師匠とお弟子さん共々ね」
「んふ〜それ言われると嬉しいっすけど…。
拙者が雪女だと解明したこと、お師匠様には内緒にしてくれませんか?
弟子が師匠よりも先に謎を解明したとあればアレですから」
「分かっているわ
これは四人だけの内緒にしましょうね?」
「り、リブ殿ぉ…。
手前の優しさに拙者涙が」
研究所ではしごかれミーアには叩かれ、散々なボルマーは思わずリブに飛びつく
「あらあら、子供みたいね」
よしよしと頭を撫でられる
「ほんっと、子供みたいだなァ?ボルマークン?」
「んん?あ…。」
ポンポンと頭を撫でられる感触に上を見上げると
「ハハッ…今から二人分の服とか移動用の馬車とか食料とか買う予定があるんだけど…。
いや〜ちょっとやること増えちゃったかな〜?」
「あ、その、ミーア殿これは!」
「ミーア、そんなお洋服なんておで…。」
(救世主ティヲ君キタコレ!とりあえずミーア殿の思考逸らしてくださーい!
お願いしまーす!
あれ?なぜ黙られるか?)
「二人ともビショビショだけど寒くない?
大丈夫?」
「んん?うわっ」
ボルマーはそこで理解する
服の前部分がビチョビチョで絞った方がいい状態まであることを
そして
「あ、あらら…夢中になってたみたい」
リブースの服も濡れてわずかに体が透けて見える状態であることを
「…おい
ちょっと表でろ」
「いやいやいや!ミーア殿!!
拙者、狙ってやったことじゃない!
そんなことするわけないじゃないっすか!!」
「うっせぇ!!
する気は無くとも見たもんは見ただろ!
嫁入り前の妹を…!」
ズルズルとドア前まで運ばれる
「いやほんっと!見てない見てない!!」
「研究者見習いがわかりやすい嘘ついてんじゃねぇ!!」
バタンと扉は閉ざされる
扉の向こうでは悲鳴が響いているがミーアの家しかない草原では誰も助けに来ないのだろう
「あの…助けなくていいの?」
ティヲは悲鳴に怯えリブの腕に掴まる
「大丈夫、あれもねぇさんの愛情表現だから……多分。」




