おい、オタクゴラ…助けろよ…。
ガチャ
「お待たせしましたぞ~リブ殿おっすおっす!」
「ボルマー君…久しぶり
今日も元気そうね」
ボルマーはノックすることなしに入るがリブースは気を悪くすることはない
「むっふ~!元気なのは拙者のいい所ですからな!」
「元気すぎてうるさいくらいだ」
「なっぬ~!?ひどい!さっきから酷身がすぎすぎですぞ~!?」
ボルマーはまたまたぽこぽこと叩いてくる
「はじめましてティヲ君
私はねぇさん、ミーアの妹のリブースよ
気軽にリブって呼んでちょうだい」
「は、はじめまして、リブさん」
「フフッさんはつけなくてもいいわよ」
ミーアがボルマーと仲良くコントをしているうちにリブとティヲは話し出した
「ティヲくんはお姉さんがすきなんだよね?
私もそうなんだ」
「そ、そうなの!?
おでら、気ぃ合うね!」
「フフッもしかしたら好きなものも同じかもね?
好きな色は?」
「色…色…暗めの、オレンジっぽい金色?」
「まぁ!私も暗めの色は好きよ」
「ほんと?ほんと!?じゃあ…好きな音楽は?」
「うーん…音楽って言われたらちょっと違うかもしれないけど、子守唄が好きかな?」
「お、おでも!おでもねぇちゃんが寝る前に歌ってくれる子守唄好き!!」
暖かい光が窓から差し込み二人を照らす
「…。」
「…ミーア殿、可愛い空間なのは分かりみマンだけど鼻血は止めた方がよいですぞ」
「なんか鉄くさいと思ったらそういうことか」
「ミーア殿、言ってることは少しかっこいいけど手前の姿を見たらくっそイメージ壊れるから鼻血は止めた方がよいですぞ」
「ワリィ…どうにも俺には刺激が強くてな」
「ミーア殿、言ってることだけはかっこいいしティッシュあげるんで、早く止めてくだされ
鼻血は止めた方がよいですぞ」
「それよりもティヲと話しただろ、何か手がかり…進展はあったか?」
「話すから鼻血は止めてくだされ、鼻血は鼻の頭を押さえて冷やせばいいですぞ」
ここの室温は少し低いので冷やすものはいらなさそうだと思い、ふぅ…とため息をつき話し始めた
「彼が盲人、夢魔であることは確かだよ
正確に言えばインキュバスという盲人でござる
夢の中に対象と自身を送り込みどちらかが精魂果てるまで性交続ける種族
自身が対象の望む性別であれば能力が発動する
裏を返せば互いが異性であろうと対象の望む性別でなければ能力は発動しないんだ」
「制御する方法は?薬かなんかないのか?」
「…残念ながら薬はないよ。
元々薬というものは化学、生物学が発達したその先の医療学からできた賜物
最近になってやっと広まりつつある魔法学に関する薬はまだないんだ」
「ふぅん…」
「だが、調べていて拙者は一つだけ制御できる方法があると思ったんだ」
「なんだ?」
「…ミーア殿は明晰夢というのを見たことがあられるか」
「?あの自由自在に操れる夢のことか?
そんなん無理にきまって…
!まさか!」
くぃっと大きなメガネをあげる
「そう、そのまさかでござる」
これは数刻前のこと__
「夢の世界を操る…!?」
ティヲは思わず素っ頓狂な声をあげる
「えぇ…夢魔の能力は夢の世界というレム睡眠時の生物世界のものを魔法世界からの影響により…その…色欲的に変えられてるんだ
だったら、根本部分である生物世界を制御すればよいかと」
「で、でもそんなことって」
「そう、簡単には出来ないこと…それにこれはあくまで仮説
うまくいくかは分からないよ」
「…。」
「ノンレム睡眠時も夢を見ないことはないんだけど曖昧な部分が多い
この時は魔法世界からの干渉も小さい…拙者はそう踏んでるよ
レム睡眠とノンレム睡眠は半々なので能力が発動するのは睡眠時間の半分に絞られる
…拙者が出来る助言はこれくらいしか…すまない」
「ううん、色々とありがとうございます
おで、なんにも分かってなくて…周りに教えてもらってばっかりで」
「…君はまだ若い
これからたくさんのことを学びそれから導けばいいさ」
くしゃと頭を撫でる
「…おい、オタクゴラ」
「な、なんだよミーア殿
鼻血垂れたまんまで恐いでござる!
鼻血は止めた方がよいでご」
「うっるせぇ!
てめぇ、誰の許可を得てティヲ君の頭撫でてんだァ!?」
「そ、そんなことで」
「そんなことで~?
なんだ?続き言ってみろやオタクゴラ」
「ミーア!ミーア!!」
ボルマーの襟首をつかむのに夢中になっていたミーアは気づいていなかった
「なん…!」
「ゲホ!ゲッホゲホ!」
リブが酷い咳をしていたことに。
「り、リブ!」
「っぇ、ざっぅえほ…うっげほけほけほ」
「リブ、大丈夫か~?
はい、落ち着いて深呼吸~深呼吸~」
ぜいぜい呼吸しだす妹を前に声が震える
「げほっっぅ…」
リブは口を手で覆ったかと思うと
「うぅえぇぇ…」
吐き出してしまった
「り、リブ!?」
今まで吐いてるところなど見たことがないミーアは戸惑いを隠せなかった
(容態がここまで悪化してるとは…!)
「し、しっかり!リブ!
大丈夫だよ~ねぇちゃんが…ねぇちゃんがいるから…ね…?」
頬に雫が伝う
握る手は氷のように冷たくいくら温めようとも決して熱を持たない
「り、リブ殿」
口から出る液体は止まらずあふれ出る
「ミーア殿!洗面器です!早く持ってきてください!!」
「わ、分かった!」
嗚咽の止まらぬ妹をこれ以上見てられなかった
「リブ殿、大丈夫でござるよ~
…?」
吐き戻すリブースの背に手をやるが、その背の冷たさははっきり言っておかしい
明らかに冷たい
体温を持たぬというよりも彼女自身が冷えている
そういえば、何かおかしい
ここの室温
さきほど冷えているから鼻血の対処に冷却する必要はないと思った
だが、ここは南側の窓から光が差す日当たりのよい部屋なのだ
ハッと窓付近に飾られた花束を見る
普通は外から風が吹き込み花びらはうちに舞ってくる
しかしこの花びらは外へ向かっている
室内の方が気圧が高い証拠…室温が低いことを指す
ボルマーはいまだぜいぜい呼吸し、吐き戻すリブースを見る
よくよく見ると彼女が戻した吐瀉物は一般のものと異なる
胃酸の特有の臭いがなく、また近くの机においてあるミーアが持ってきたであろう朝食の消化しきれなかった残骸もない
水と白い塊だ
背を擦りつつその白い塊を見る…と
(氷じゃないか?これ…)
試しに触ってみると手にひんやりとした冷たさが。
水も冬に汲んできたものかと思うほどキンキンに冷えている
彼は今までの研究者としての脳内にあるデータを思い起こしとある考えに思い至る
(もしや…リブ殿の謎の病の原因は)
「おい!持って来たぞボルマー!」
「ありがとう
ささ、リブ殿ここに」
ゲーゲーと吐き戻すリブ
器の中には水と氷ばかりが溜まっていく
「…今までこんなこと…なかったのに…。」
リブースに聞こえない小声でミーアは伝える
「…そのことなんだけど、リブ殿は…」
「…なんだ?もう…なのか?」
「違う
彼女は
彼女は盲人…じゃないかい…?」
「…え?でも、俺は特殊生命体だしリブも」
続けようとする言葉をさえぎるように首を振る
「いや…彼女が盲人だったら全て納得いく
…正確には盲人、雪女だよ」
てことでここまで閲覧していただき有難き幸せ




