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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モブ女とイケメンがクリスマスに話すだけ

作者: ばいじん

 



 12月24日。街はイルミネーションで彩られ、恋人がいる人たちは腕を組んだりして、仲睦まじそうに歩いてゆく。私はというと…恋人はナシ、ゆっくり家でドラマでも見ようと思っていたのにあろうことか残業。ようやく仕事が終わり、やけ食いでもしてやろうと思いながらキラキラした街を早歩きで歩いていた。


 歩いている途中目に止まったのは、街の真ん中にある一際目立つクリスマスツリー…のすぐそばのベンチに座っているイケメン。金髪とまではいかない明るい茶髪で、海外の血が混ざっていそうなほど端正な顔立ちだ。クリスマスツリーのすぐそばにいるもんだから、雑誌の撮影と言われても納得してしまいそうなくらい絵になっている。



(彼女でも待ってんのかな…リア充してそ〜)



 そう思いながら、やけ食いをするための食料を買いにコンビニへ向かった。







 12月25日。まさかの今日も残業。また今日も帰り道に恋人たちのラブラブを見せつけられてやけ食いコース決定だ。昨日と同じ道をスタスタと歩く。すると、



(あれっまたあのイケメン座ってるじゃん)



 クリスマスツリーのすぐ近くのベンチ、全く同じ場所に、昨日と同じイケメンが座っていた。興味が湧き、少し足を止めてイケメンの観察をし始める。



(うわぁ〜めちゃめちゃ逆ナンされてる〜〜)



 少し見ているだけでも、色んな女性から声をかけられている。その度に、イケメンは少し困ったような苦笑いで断っていた。彼女待ちにしては彼女、あまりにも来るのが遅い。しかも2日連続だとしたら相当時間にルーズなのか。それとも、誰かを待っている訳じゃないのか…?


 ほぼストーカーのようになってしまっているが、この日はなぜかそのイケメンへの興味が爆発した。



「あの、昨日も1人でここ座ってましたよね?」

「……え?」



 なんの脈絡も無くイケメンに話しかけるなんてこと、クリスマスパワーで気分がおかしくなっていないと絶対に出来ない。そしてイケメンはかなりドン引いている。



「……えっと…はい。昨日もここにいました。」

「そうですよね!彼女待ちでも無さそうだし、つい気になって声かけちゃって…すみません」



 近くで見ると相当イケメンだった。そして顔に見惚れていると、急に正気に戻ってきた。私のしていること、相当気持ち悪い。



「あっっすみません!なんか急に話しかけちゃって…私もクリぼっち勢なんで…アハハ…」



 何を言っているんだ私。こんなイケメンとモブ女の私を一緒にするな。



「………好きな人、いるんですけど」

「…はい?」

「絶対付き合えないんです。その人と。」



 悲しそうな笑顔で、イケメンはそう言う。



「………えっ…と」

「…ちょっと待ってて下さい」



 そう言うとイケメンは、小走りで近くにあるコンビニへ向かい、私は呆然としながらその後ろ姿を見つめた。







「はい」



 コンビニから戻ってきたイケメンは、私に温かいペットボトルの緑茶を差し出してくれた。



「へ?」

「あなたも今日1人なんでしょう?…ちょっと話相手になってくれませんか?」

「あっっハイ!もちろん!」



 イケメンに誘われれば断る理由がない。私とイケメンは、ツリーに照らされているベンチに隣合って座った。イケメンは俯きがちに、自分の分の飲み物のキャップを弄りながら、ポツポツと話し始めた。



「…僕、会社の同僚とルームシェアしてまして。その同僚の事が好きなんですよね。」

「ほう…」



 めちゃめちゃ同僚と仲良しなんだなぁ…その同僚の人が羨ましい。こんなイケメンに好かれているなんて。…でも、なんで『絶対付き合えない』んだ?



「その人、恋人がいるんです。」

「あぁ…なるほど…」

「だから、うちに来るってなってもいいように僕は家を空けてるんです。外にいる方が気が紛れるってのもありますけど」



 健気!凄い優しい人!自分の好きな人が彼氏と出かけてるの、メンタルきっついだろうな…2日間同じ場所にいた事の謎が解けた。



「でも!あなたすっごいかっこいいし!チャンスはあるんじゃないですか?」

「ハハッ…どうかなぁ〜」



 乾いた笑いをして、諦めたような声色だった。



「絶対無理なんてないですよ!」

「いや…うん。でも、おはようとおやすみ言えるとか、一緒に出かけられるとか、それでもう充分なのかもしれないです」



 ルームシェアって役得でした、と笑いながらイケメンは言う。



「でも…っ」

「……………………………」



 まだイケメンを励ます言葉を言おうとしたが、イケメンの顔を見て止まった。



「………彼と付き合えるなんて、儚い夢なんです。どう頑張っても叶わない」



 イケメンは潤んだ瞳で、ペットボトルを握りしめる。



「あっ…」

「話してた同僚って、男なんです」



 ようやく全て理解した。だから絶対無理なんだ。



「…っ……初めて誰かに話しました。結構言葉にすると…キツいですね」



 少し震えていた声を、必死に抑えながら言葉を紡いでいる。



「…あ」



 メールが来たのか、イケメンは携帯を取り出す。



「……あいつからです」



 携帯の画面を私にも見せてくれた。



『今日は夜飯いらねえわ!あと泊まるから明日帰る!鍵閉めちゃっていいよ(^o^)』



 私の方が泣きそうになってしまう。何気ない文章だが、イケメンを酷く苦しめるメールだ。上手い言葉が出てこない。



「いいんです。俺に彼女の代わりは無理だし…あいつが幸せなら、いいんです。」



 私の目をしっかり見て、眉毛を下げながらイケメンは笑った。まるで映画のワンシーンのようで、その笑顔はとても綺麗だった。







「ありがとうございました。こんな遅くまで付き合わせてすみません」

「全然!気にしないでください」



 気づけばもうあと1時間でクリスマスの日は終わろうとしていた。



「初対面のあなただから、気にせず全部話せました。スッキリした。本当にありがとう」



 そう何度かお礼を言ってから、イケメンは振り返らずに歩いていった。結局何時間も話し込んでいたのに、お互いの名前すら知らない。もう会うことも無いだろう。



「よっし!チキンでも買うか!!」



 チラリと私達がさっきまで座っていたベンチを見てから、今の時間でもやっているファストフード店を検索しながら歩き始めた。

急に思いついて書いただけの低クオリティです。誤字や読みにくい部分多々あると思います……少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

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