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課金兵だった俺が異世界で無課金兵生活 5

 時間はいつのまにか夕方になっており、太陽らしき光を背に受けている都合上山の中とはいえまだ明るい。

 そして道中は先程の話しの続きだった。

「まず、山でキノコの栽培している人や畑で仕事をしている人が山賊をやっているかもっていう話なんだけど、通行人をずっと見ているからよ」

「ずっと見ているって、見られていたら流石に気付くだろう。そもそも見ていたら栽培や作物を育てられないだろう」

 量にもよるがキノコ栽培は別に放置しているだけでは無い。そういう所もある所はあるだろうがキノコの栽培だけで生活をしようとした時そんな事をしたら虫や動物に食べられてしまう。場合によっては通りかかった人が盗っていってしまう事だってあるだろう。

 室内で音楽を聞かせたりは勿論、湿度や温度調整、風の通りだって重要になってくる。思っている異常に手間暇が掛かっているのがキノコ栽培である。

 そんな中じっと通行人を見ていたら明らかに怪しい上に、そんな暇がはたしてあるのだろうか。

 畑仕事もそうだ、この世界ではどうしているかは分からないが重機で作業していたとしても、うっかり人を巻き込んだら死人がでる。そういう事故は年に何度かニュースで流れていたのを覚えている。

 日々の雑草抜きから始まり虫や鳥、狸や猪といった動物から作物を守らねばならない。また、収穫の時など人出が足りないような仕事なのに通行人を意識して見ている等考えられない。

「タケオさんはタケオさんが住んでいる世界を元にそう思っているのかもしれませんが、ここはタケオさんのいう所異世界に当たります。なのでタケオさんの世界の常識を当てはめられましても困ります」

 それは分かっているつもりだが、どうしても日々の食事に欠かせない農作物を育てている人を悪者には見れない。とはいえ、水と塩で良いだろうと言っていた俺が言っても何の説得力もない。

「そう言われると俺は何も言えなくなるんだが」

「なので口を挟まず聞いてください」

「ああ、分かった」

「まず魔法は農家の方であれば必須と言って良い程重要なので皆さん使えます。その為管理全般魔法に頼る事になります」

 魔法があれば水やりとか楽そうだもんな、イスリアの魔法を見ていて思う。俺も魔法が使えればピンチな可愛い女の子の前に颯爽と現れ護ってあげたいと思う。あわよくばそれでモテたいと考えるのは至極当然だろう。

 下心が無くて助ける奴がいるなんて俺は信じない。それはそういう風に装っているだけで表に出していないだけだ。そしてそういう奴がモテるアニメや漫画が納得出来ない。表に出しているかいないかだけで下心があるのは変わらないのに、見る目がない奴ばかりである。そしてそれはつまり嘘をついているという事だろう?それは意中の相手に対して失礼ではなかろうか。

 そして宝くじを当てるまでの生活は俺も下心は隠してきたつもりだ、けれどモテない。ならさらけだしたら意中の相手にウソをついていないという、誠実な男になるのは確定的に明らかであろう。

 世には肉食系だの草食系だのとジャンル分けされて言われているが、結局最初は皆見た目で人を選ぶものだ。最終的には中身ということもあるだろうがそれは当の本人達にしか分からない。

 見栄を張りたがる人は行き遅れ、金だけもっている人は金が無くなれば捨てられ、売れ残り同士ではどちらも理想を捨てなければ番いにはならない。

 しかし皆結婚にしろ何かしらの夢があるからこそ、それに向かって努力できるのであって無ければ社畜となって社会に飼われるだけの存在になる。そんな世界に生きている意味があるのだろうと考えた事はないだろうか。

 だからこそ人は夢に向かって日々を頑張れるのであって、夢無き人は夢を探すという夢に向かって頑張っている。

 つまり俺が可愛い子に囲まれて過ごしたいという夢も立派な夢である。この異世界なら宝くじを当てて以降努力をしなかった俺でも努力出来るはずだ。

 管理している運営はクソだしレートが頭がおかしい、とはいえガチャで可愛い子と一緒に過ごせる日々と言うのはやる気をださずにはいられない。

「っと言う訳です。分かりましたか?」

 全っ然分からない。そもそも話聞いて無かったし!隣を見ればそれなりに喋った後で喉が渇いたのだろうか、イスリアは器用にも一口サイズの水球を左手の人差し指に浮かべてそれを口に含み、水分補給をしていた。

 これ、聞いてなかったと言ったら怒られるのか呆れられるのか。それとも聞いていた振りをして後で聞いて無かったと分かって怒られるのか呆れられるのか。子供の頃、親に隠し事をしているような気持ちを思い出す。

 子供の頃は後に大抵笑い話になるものだが、ここは異世界。何気ない話すらも命にかかわるかも知れない。素直に聞いて無かったと言おう。

「イスリアすまん、全然話を聞いて無かった」

「二人きりで登っている最中、他に気を逸らす物があったとは思いませんが、話しを聞いて無かったと素直に言った事に免じて今回は許してあげます」

「すまんな、ありがとう」

「ですが今回の様な事がまたあったらそうですね、一回につきご飯のオカズを一品貰いますね」

「イスリアがそれでいいなら俺からは何もない」

「ではそう言う事で。まず農家の場合はウォーターの魔法とウィンドウの魔法があれば水まきが非常に楽になります」

 言ってイスリアは、手の平にウォーターと唱えて先程飲んでいた水球を手の平サイズで出す。やっぱりそれウォーターで良かったんだな。それ単体を敵にぶつけても美味しいから喜びそうなものだが。

 そして手の平に浮かべた水球を軽く空に投げると、今度はウィンドウっと空に軽く投げた水球に向かって唱えた。

 すると水球は内側からはじけ飛び、水球の大きさと同じだけの量の水が空から雨状になって降ってきた。

「かいた汗を流すのに丁度いいな」

「今はこういう事が出来るっというのを実践しただけですが、本職の方はウォーターとウィンドウを別々の方で唱えて一気に大量の水を畑に撒きます。その際、日が出ていると大きくて綺麗な虹が出来るので素敵ですよ」

「なるほど、そしたら種をまく時はウィンドウを使って一気にばらまくのか?」

「そうですね、偏らないように多少コントロールはするみたいですけど」

 ちょっと楽しそうだなと思ってしまうのは、実際にこの世界で農家の仕事をした事が無いから思えるんだろう。

 宝くじを当てた為俺は働いた事は無いが、楽そうな仕事も実際やってみると大変だというのは散々親に言われてきた。

 俺も街につき次第冒険者として働くのだろう。ゲームならクエストをこなして報酬を貰ってと、お使いクエストが始めは鉄板だがどうなるのか楽しみだ。

「キノコの栽培は、この世界では完全に放置です。正確には胞子を付けたら放置、が正しいですね」

「何それ、聞いただけだとすっごい楽そうなんだけど」

「実際楽ですよ。タケオさんの世界ではどうか知りませんが、この世界のキノコは一度胞子がつけばどれだけ取っても同じ所から取れますから」

「何それすっごい楽だな、もうそれだけで生きていけるじゃないか」

 胞子さえ付けてしまえば何もしないで無限に取れるキノコとか最高すぎるだろ。自家栽培すればそれだけで食べ物に困らない。

「そうですね。そこだけを見れば楽ですが、結構危ないんですよ?」

「危ないって人間を苗床にするなんて言わないよな」

 薄い本にありそうで無い感じの題材だな。

「流石に人間を苗床にするって言うのは聞いたことがありませんけど、一度胞子がついたらそこからキノコが生え続けます。取っても取っても生え続けるんですよ?それが風にのってどんどん広がって行ったらどうなるか分かりますよね?」

 風に乗ってキノコが広がって行ったら食べるものに困らなくて済むし良い事なんじゃ?いや待て、ここは異世界。俺の世界の常識にとらわれてはいけない。どんどん広がってゆく・・・無限に広がるキノコ。取り放題で毎日キノコパーティしか思いつかない!

「毎日キノコパーティが出来るくらいしか思いつかないんだが」

「そんな楽しそうな事にはならないですね。広がり過ぎると土地が枯れてしまうんですよ」

「土地が枯れるって辺り一面砂漠化でもするまいに、枯れたらそもそもキノコ自体が取れなくなるじゃないか」

 土地が枯れるというと、畑に同じ作物を植え続けると作物が育たなくなるというのをどこかで聞いた事がある。とはいえ、キノコ栽培もそれが当てはまるのか俺には分からない。ここは異世界、そもそもキノコの形状すら俺の知っている形と違う可能性だって大いにあるのだ。

「砂漠化はある国の地域で後先考えずに植林せずに伐採した所が実際になっていますが、今話している土地が枯れると言うのはキノコ以外が育たなくなってしまうという意味です」

「ふむ、だがキノコ以外が育たなくなる事に何か問題が?」

「今まで生えていた木や草、花等が枯れて全滅するんです。ですので広がってしまった土地はキノコごと胞子を燃やします。風の影響も考えて実際の被害より広い範囲で燃やすので、それを専門に仕事にしている人もいるくらいです。それと燃やした時に出た灰にはキノコが吸った栄養が詰まっているので痩せた土地が元に戻ります」

「もはや災害だな、それにしても燃やすのを専門の仕事にしているって何だが物騒な気がするんだが」

 俺の住んでいた世界では災害が起きれば自国のみならず、他国からも援助等があった。しかし、この世界ではそんな災害を専門に仕事とする人達がいるとかどうなんだ。

「災害では無いですね、良くある事なのでタケオさんで言う所の火災の様なものです」

 火災も災害の一つだと思うんだが、自然災害では無いものの人為的な災害であろう。異世界というだけで災害の認識も違う物なのか。

「火災も災害だと思うんだが、仮に災害で無いとしてそれを専門に仕事とする人がいるくらいなのだからそれなりの頻度で発生するって事か」

「頻度で言えば年に1、2回程度じゃないでしょうか。とはいえその地域での回数ですので、それを仕事にしている人達は各地域をぐるぐる回って常に燃やし続けていたと思います」

 俺の住んでいた世界では一度そう言う事があれば二度目が無いように対策したりするのが一般的だが、魔法が発達しているからこそ異世界では適当になっているのかもしれない。

「なるほど、各地を回るとなると大変な仕事だな。燃やすだけだけど」

「そうですね、燃やすだけです」

 たしかに聞いていれば時間があるから山賊をやる事も出来るだろう。だが一つ疑問が残る。襲わなくとも育てた農作物で生きていけるだろうに、何故危険を冒してまで人を襲うのだろうか。

 金銭を狙うにしても魔物が普通に出る世界だ。山道であれば常に警戒をしているだろう相手に、危険を承知で襲う事の意味が分からない。




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