表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
大陸連邦留学編
90/109

マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編7

マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編7



科学平気の見本市『ムサイカ商会』のイベントに行くアリアたちとヴァーム。

そこはアリアも見たことのないアーマーや新型飛行船などが売られている。

さまざまなアーマーとその用途に感心するアリアたち。

こうして二日目が始まる。



***



 パラ歴2336年 7月18日。


 この日、アリアたちはベルセリクの総合複合商会『ムサイカ』に行った。


 これが、ただの訪問にならなかったのは、やはりアリアが持つ英雄としての素養なのかもしれない。




***



 朝食を繁華街で済ませたアリアとナディアは、午前11時にベルセリク北区にあるブレイスン駅でヴァーム、ルクレティアと合流した。そこから大商会『ムサイカ』までは機工馬車(民間用機動アーマーに馬車がついたもの)で向かう。


 機工馬車は、まだクリト・エにはない。もっとも、大陸連邦でもそう多くはなく軍事施設や大都市以外では馬車や蒸気車が多く使われている。これも余談になるが、第一次大戦後、機工馬車は一気に世に広まる。むろん戦争で使用されたものが流出した結果だ。



「この機工馬車……高いのですか?」

「あら、興味あるの? アリア様」


 ある。オリジナル・アーマーほどではないがエンジン音も静かで安定していて乗り心地も悪くない。市内で使っているということはそれほど高価で特別でもないのだろう。


「維持費を考えれば、馬より効率が良さそうです。これくらいなら輸入できるかも」

「そうね。それはボクも考えていたところ。スピードは馬に劣るけど、戦場じゃあ圧倒的にこっちのほうが便利でしょうね。何せ食べないし、排泄もしないし、逃げないし、寝ないしね」


 生活面でも軍事面でも馬が果たす役割は大きい。馬車は依然庶民の足として使われているし、軍でも輜重や連絡用、個人の移動用、騎兵……と、いたるところで使われる。しかしそれは過去の事になるだろう。アーマーのほうが遙かに速く安全だ。ただしアーマーの問題点は大きさにある。小型のものでも3m、アリアたちが愛機としている<ヒュゼイン>に到っては7mもある。大きいし、市街戦や森林戦などでは使えない場合が多い。だから大陸連邦軍でも騎兵軍団が存在するし、完全にアーマーが騎兵に取って代わるのは第三次世界大戦からだ。しかも聞けば、このカレドニア公国には大陸連邦軍の騎兵軍の総司令部がある。


 30分ほどで、目的の『ムサイカ大商会』のビルに辿り着いた。


 飛行船からアーマーまで取り扱う半民半官の施設で5階建て。その敷地は広大でアルファトロスの政庁やマドリード王城ハーツティスの王宮より広い。それに一フロアーが並みのビルの二倍ほどあり、実質10階建てに相当する大きさがある。



「すごいですね」


 ビルの手前で見上げながらアリアは溜息をついた。半官半民の商会だが、民間でこれほど大きな建物を有する商人はクリト・エではちょっと考えられない。


「個人携帯武器から軍事兵器まで大抵のものは揃っているわ。中々見ごたえがあるわよ。今、特別期間だから」

「飛行船も買えるんだよね?」とナディア。

「買えるわ。ま、現物は置いてないけど、楽しいわよ」

 楽しいとはどういう意味か……アリアとナディアは顔を見合った。





***




 大商会『ムサイカ』の中に入ったアリアたち。


 一階と二階は民間向け総合大型店で、実用本位の衣類や雑貨、そして家具が所狭しと陳列され、多くの人で賑わっている。ここだけでも十分驚きで、その豊富な品揃えに目移りするが、ヴァームは全く意に介さず、奥のエレベーターに向かっていく。


「携帯武器、アーマー、飛行船……どのフロアーがいい? アリア様」

「とりあえずヴァームさんについていきます」


 知らないところだ。色々見るだけでも勉強になる。


「三階が携帯武器。四階がアーマー。五階が飛行船です。三階以降は会員制になっています」と後ろに控えるルクレティアが説明する。今日、この店では彼女はアリアたちの案内役ではなく基本ヴァームと一緒に行動する。ヴァームが購入する飛行船やアーマーの受け取り受領者がルクレティアになるからだ。帰りに持ち帰れる量は限られているし数を買えば用意するまで時間もかかる。だから受領はこの都市に残るルクレティアで、販売元に紹介しなければならない。


「ああ、そうそう。アリア様はアルファトロスの有力議員の娘って事で会員登録してるから。間違ってもマドリードを名乗っちゃ駄目よ?」

「はい」

「代表。まずは代表が気をつけるべきです。アリア様ではなく、アリアさんです」

「そういえばそうだったわ。お互い気をつけないとね、アリアちゃん」とヴァームは苦笑する。これはこれで彼は楽しんでいるのかもしれない。




***



 ヴァームがまず選んだのは四階のアーマー・フロアーだった。


 案内を受け会場に辿り着いたアリアとナディアは、展示用で並ぶ多彩で豊富な数々のアーマーに目を奪われた。恐らくクリト・エで一番アーマーに精通している王だが、そのアリアも見たことのないアーマーが多い。


 この四階フロアーは普通のフロアーの倍以上の高さがあり、数多くのアーマーの実物が展示されている。軍用のオリジナル・アーマーだけでなく、民間用に改造されたトリエ・アーマー、機工馬車や蒸気馬車、農耕用アーマー、そしてそれら各種のカスタムパーツなど様々なものが並んでいる。この豊富さはクリト・エではちょっとお目にかかれない。


 アリアもナディアも一流のアーマー乗りだ。これだけ様々なアーマーを見せられては、興奮を抑えることができない。


「ボクは馴染みの商会に顔を出すけど……アリアちゃんたちはぐるっと見て回る?」

「あ、はい。そうします」


 アリアは楽しそうに頷く。これはアリアたちに親切なだけではない。いくらヴァームが寛大でアリアと昵懇だといっても他国の代表だ。そしてアーマーの仕入れと販売はアルファトロスの重要な利益の元でもある。アリアがいてはやりにくいだろう。そういう事情はアリアにはすぐ分かった。


 こうして入口のところでアリアたちとヴァームは一旦別れた。


 いざ歩いてみると、このフロアーはかなり広いことに気付く。そして思ったより多くのアーマーがありアリアたちは目を輝かせた。二人にとって見慣れた<ガノン>もあるし、そのカスタムパーツを売る店もある。何せ現状もっとも数が作られているのは<ガノン>だ。純軍用品であるビーム系火砲の販売はさすがにないが、シールドや巨大ランス、採掘用の大爪なども売っている。


「<ガノン>って、こんなに民間用に変更ができるんだね」

 周囲を見回しながらナディアは呟いた。


 アーマーが豊富な大陸連邦だからこそできる発想だろう。クリト・エ大陸では貴重なアーマーを軍事用以外に使う事なんて考えは到底生まれない。アリアですらその発想はなかった。


 確かにあれだけ馬力があれば民間でも十分活躍できるだろう。<ガノン>はずば抜けた特徴はないが操縦しやすく汎用性も高い。農業や工業、林業、採掘など人力より遙かに効率がいい。が、まだ運用が広まってはいないようだ。それはそうだろう、<ガノン>……トリエ・アーマーはまだ開発されて間もない。アーマーはモデルによって微妙に操縦方法が違うし、まずは拡大する帝軍に最優先に回され民間に流れるのはその次だ。もっとも、すでに<ガノン>より高性能で低価格の次世代機<ゲドム>の試作は始まっているから<ガノン>自体は値崩れしているし民間用への換装も進んでいる。そして科学都市は比較的優先的に民間にもアーマーが供給される。後方の重要拠点として開発力が戦争の持続性と補給力を支える原動力になるから、科学都市だけは特別扱いとなっているのだ。それに第一次大戦は、まだ大陸連邦貴族の特権制度は残っていて、自家のオリジナル・アーマーを個人用にカスタムし戦場で使う事は認められていたから、そういった需要があり、こういう見本市を兼ねた大商会『ムサイカ商会』のような店も存在し得るのだ。


 こういうアーマーの見本市が開かれるのは、三ヶ月に一度で10日の期限付きだ。もちろんヴァームの来訪はそれに合わせてのものだ。





マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編7でした。



今回からしばらくが『ムサイカ商会編』になるでしょうか?

アリア様の買い物編です。

3000万ギルス持っていますから色々買えるけです。

買い物を通して、アーマーや飛行戦艦の解説話になっていくと思います。

そしてちょっとした事件も……。


これは本編のお楽しみということで。


これを機会に本作でよく出てくるアーマーや飛行戦艦について知ってもらえればと思います。これからはアーマーや戦艦が重要になってきますから。


ということで買い物編始まりです。


これからも「マドリード戦記」をよろしくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ