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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
大陸連邦留学編
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マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編4

マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編4


観光都市オクステリアに到着した一行。

そこでアリアはヴァームからある事を教えられる。


実はアリアは旅行というには多すぎる資金を持って来ているが……。




 南海列島オクステリア共和国は、赤道よりやや上にある南海列島最大の島コクトーンにある都市国家で、人口約30万。島全体が港町で都市だ。僅かに山地もあるが、平地は全て町である。貿易と観光、漁業が産業で、穀物や野菜などは全て輸入に頼っている。飛行艇場は山近くにあり、10隻ほどの飛行船が停泊している。


 高速飛行船<ラ・グレヌス>は、出発こそ15分遅れたが、途中調整し、到着はほぼ定刻通りの18時になるとの事だ。


 科学都市……とまではいかないが、国力のほとんどが商業と観光で成り立たせているだけはあって、街は発展し、高いビルがいくつもそびえ、南国独特のテントが広がる屋台文化が創り上げた町の雰囲気はアリアたちを感動させた。ここは完全に外国だ。


 到着し、下船が許されると、アリアもナディアはすぐに外に出た。外に出た瞬間、マドリードでは感じることのできない湿気と気温の高さにまず驚く。そう、もうここは南半球ではない。赤道のやや北に位置する北半球で、季節は真夏だ。


 アリアたちはルクレティアから貰ったガイド本で熱帯気候のことは知っていたが、予想よりずっと暑い。二人共シャツに上着といった格好だったが、ナディアはすぐに上着を脱いで手に持った。



「気をつけたほうがいいわよ。温度差で体を壊す人も結構多いんだから」

 そう言って現れたのは、ヴァームだ。彼はこの暑さの中でも黒いコートを脱がない。

 明日向かうカレドニア公国は大陸連邦の東の中心にあり、夏場でもそこまで暑くない。体感的には真冬から真夏になり、初夏になるわけだ。実際この温度差で自律神経を壊し体調をやられる人間も多い。


 ヴァームはようやく激務から解放されて、アリアたちに会いに来たのだ。むろん、初めて外国に来るであろうアリアたちを色々案内したくてやってきたのだが、用件はそれだけではない。もっと重要な用件があってやってきたのだが、その事はすぐには言い出さない。


 ヴァーム他アルファトロスの乗員も下船許可が出ている。宿はオクステリア共和国屈指の高級ホテル・パルパセアで、13階建ての豪華なホテルだ。さすがに代表であるヴァームだけは極上部屋が充てられ、他の乗員たちは普通の二等部屋だ。もっとも、二等とはいえ観光国のソレだからクリト・エ大陸諸国の王都にあるホテルの一等室に引けは取らない。


「ホテルでも晩御飯は用意してあるけど、折角だから街で食べてきてもいいわよ? どうする? アリア様」

「是非! 街で食べたいです!」

 アリアは無邪気に瞳を輝かせ頷く。こんな南国の街を見て回れるなんて二度とない。食文化も全然違う。きっとすごく楽しいに違いない。


「アンタも来るの?」

とナディア。ヴァームはそれを聞き、大げさに溜息をついた。


「行きたいンだけど、ボク……オクステリアの首相と晩餐予定なの。面白くないったらありゃしない」


 今、この中で一番身分が高いのはヴァームだ。クリト・エで二つしかない科学都市国家の代表となれば、その地位は属領の首相よりやや上だ。訪れれば当然それ相当の歓待を受けなくてはならないし、政治家としてもやらなくてはならない事はいくつもある。むろん本来なら小国とはいえ一国の女王であるアリアのほうが地位は高いし、そうと知ればオクステリア共和国も国を挙げて歓待するだろうが、今回の身分はただの庶民だ。


「羽目を外しすぎないでね、アリア様。一応アリア様がはしゃぎすぎないようルクレティアは連れて行ってもらうけど」

「はい」


 ヴァームの皮肉にもアリアは全く気付いていない。


「あー……でも、その前に一度ホテルでボクを訪ねてきてもらえる? 渡すものがあるから。というよりこれがないと街には出られないから」

「何があるんですか?」

「お金。いるでしょ? まぁクリト・エのマルズが全然使えないわけじゃないけど、基本通貨は大陸連邦のギルスだから」

「成程。そうですね」


 当然だ。しかし言われるまでその事に気付かなかった。それだけ二人共初の外国に気持ちが昂ぶって考えが至らなかった。しかもアリアが持参した予算はちょっとした小遣いではない。


 持ち運べるだろうか……とアリアは疑問に思った。


 実は今回、アリアは庶民とは到底いえない額を持って来ている。


 国費3000万マルズ、プラス二人分の生活費10万マルズだ。


 持たせたのは大蔵大臣ガレット伯だ。



「仮にも一国の女王、何かあっては困ります。持ちすぎて困ることではないですし、時に安全を買うにもお金の力はいりますから。それにアリア様が大陸連邦に行かれるのでしたら、アーマーなり船なり購入する機会があるかもしれません。帳尻と工面は私がしますから、持っていってください」


と、マドリード王国の財政を握るガレット伯がそう言って持たせた大金だ。国家予算の15%ほどにもなる大金だが、ガレット伯はポンと出した。どうやってこんな額を工面したかはアリアも聞かされておらず、ガレットとヴァームの間で行われた取引だ。基本賢い若い娘が大好きなヴァームは、ガレットという経綸を知り喜んだらしい。思えば共に優れた若き経済人だ。



「しかし、そんな大金持ち歩けませんよ?」

と不安を浮かべたアリアに対し、ガレットはちょっと優越感が混じった笑みを浮かべた。

「ご心配はいりません。どうぞお気になさらずに」


 結局そんな感じでガレットはアリアの問いに答えず、意地悪に笑っているだけだった。マドリード国内で、アリアに対して時に優越な態度を取るのはザールとガレットの二人だけだ。ザールは別にして、ガレットは政治と経済では自分のほうが先輩であり、アリアが可愛い妹分に思えて仕方がないのだ。その点、ヴァームも同様だ。幸いアリアはその点素直な女王で、別に腹を立てたりしない。


「ガレットちゃんの言うとおり、大変なことにはならないから心配しなくていいわ」



「…………」



 結局、ヴァームもこの場で教えてはくれないらしい。




 


マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編4でした。



今回、ちょっと短くなってしまいました。

今回重要なのは、アリア様たちが3000万マルズも持って来ている点ですね。

日本円だと30億円くらいです。通貨単位はドルだと思ってもらえると分かりやすいと思います。ただ価値としては19世紀後半くらいの感覚なので、それでいくと300億円くらいの価値になります。今回のシリーズは、ちょっとお金の話がところどころ出てきます。一先ずギルスもマルズも「イコール米国ドル」と思ってください。


次回はお金の話です。

もう少し本編で細かく説明します。

ということでまだアリア様の留学旅行は続きます!


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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