「マドリード戦記『王女編』」あとがき
「マドリード戦記『王女編』」あとがき です。
アリア様の今後、そしてフィルさんやアーガス君について語ります。
「マドリード戦記『王女編』」あとがき
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無事「マドリード戦記」も『王女編』が完結しました。
思っていたより長かった。
しかしアリア様の軌跡である「マドリード戦記」はまだ続きます。というより、これからが本番です。アリア様は後に女帝となる人です。女王になって、ようやくその階段に脚をかけたところにすぎないのです。
今回あとがきなので、折角なので「マドリード戦記」が生まれた理由と、今後知っておくといい情報を書いてみたいと思います。
●「蒼の伝説」との関係性。
本編中の余談でよく語られた北の大陸、大陸連邦。この大陸連邦も、パラ歴2337年から2340年にかけて、全世界を巻き込んだ内戦に入ります。これが第一次世界大戦で、この大戦中登場した二大英雄がフィル=アルバード(以後フィルさん)とアーガス=パプテシロス(以後アーガス君)の二人です。後世、この二人にアリア様を加えた三人がこの時代の三大英雄となります。
英雄歴史小説『蒼の伝説』は、アーガス君を主人公にした作品で、第一次世界大戦、第二次世界大戦、第三次世界大戦が舞台です。少尉待遇から大陸連邦元帥にまで登りつめまる、なのですごい長編です。パラ歴でいえば2339年から2353年までを描いています。実はアリア様は第二次大戦、アーガス君たちの宿敵マドリード帝国の女帝として登場します。
この『蒼の伝説』は、実は作者JOLちゃんの学生時代に生まれた作品で、第一次大戦を描き終え、第二次大戦の途中まで書き上げました。ワープロでした。それも今では字が擦れて半分も読めないし、データーも残っていないので「書き直そう」と思っているところですが。
元々歴史が好きで、最高の歴史小説、英雄を描きたくて『蒼の伝説』が生まれました。
ただアーガス君はスロースターターなキャラで、英雄としてはすぐ覚醒したんですが、歴史上の人物になるまでには時間がかかり、結局第三次世界大戦までかかりました。
惑星パラは、世界観としては魔法があったり飛行戦艦があったり人型兵器アーマーがあったりするSFファンタジーで、「マドリード戦記」ではあまり登場していませんが竜や竜騎兵なんかも存在します。ただ根本は歴史小説なので、できるだけ細部まで計算して、考察や設定を整えよう……と色々頑張って考えました。そんな時、ふと第二次大戦の宿敵であるアリア様の存在の凄さと波乱の生涯の凄さに気付き、興味を覚えました。これが「マドリード戦記」が生まれる源泉でした。ただこの時はあくまで外伝扱いでした。
頭の中では第三次大戦の完結まで決まっている「蒼の伝説」。しかし自分の文章力が到底追いつかず納得できません。何度か書き直していったある日、ふと「アリア様の大陸統一ってどういう話になるんだろう?」と疑問に思いました。実はマドリード戦記は未着手未完でした。
そこで初めて真面目に「マドリード戦記」を構想してみました。
そしたら面白い!
そこには<歴史>がありました。
アリア様の終末は決まっています。そしてマドリード帝国に出てくるキャラたちは当然います。(今後を楽しんでもらうためアリア様以外の誰かは秘密です)
ただし「蒼の伝説」のポジションに行き着くまでには、様々なドラマが必要です。
それはもう、歴史を書く事そのものでした。自分がそもそも描きたかった<歴史小説>の本分がこんなところにあった、と嬉しくなりました。
そしてアリア様の魅力です。
アリア様の場合、もともとキャラは「蒼の伝説」で女帝になっているので、彼女を女帝にしなければなりません。それだけのカリスマ、才能、そして魅力を入れて逆算して物語を作りました。その結果アリア様は作者でもびっくりするくらい聡明で魅力的な王女となりました。……むしろその人生(女王編にあたりますが)の激動ぶりと波乱万丈を考えると同列のフィルさんやアーガス君が翳んでしまうくらいデス。
結果として「マドリード戦記」は、作者JOLちゃんの作品の中では一番若い作品になりましたが、一番楽しく描かせてもらっています。重要な事件やエピソードはもう頭の中で組み上がっているので、あとはそれを繋いで描いていくだけなのですが、「もっとアリア様を描きたい!」は増えるばかりで困っています(笑 或いは……こうやって「蒼の伝説」の話をしたり、アリア様が女帝になると先を言ってしまったりしているのは、自分の中にある「アリア様への愛」を封じるためかもしれません。こうやって「アリア様の未来を変えるな!」と注意しておかないと、そのうちアリア様が暴走して別の未来を切り開きそうで怖い。今のところ辛うじて踏ん張っています。
作者JOLちゃんがこれくらい苦しむくらい、アリア様の魅力はこれからも続きます。少女の純真さに加え王者としての貫禄とカリスマに目覚めていくはずです。そして激動の戦国時代が待っています。彼女はただ一人この中を生き抜きます。アリア様が進むのは孤独の道です。これもアーガス君とフィルさんの違いです。アーガス君にはフィルさん、フィルさんにはアーガス君がいました。だから孤独になることなく、お互いを研鑽しあい、理解しあい、高い次元に昇って行く事が出来ました。しかしアリア様はたった一人で、同じ高みまで行かなくてはいけない。やがて彼女はそこに言葉に出来ない孤独感を覚えるようになります。
時間が出来れば、勿論「蒼の伝説」も書いていきたいです。こちらは時代は同じですが、またちょっと世界観の雰囲気が違います。北の大陸のほうが魔法が盛んで、そしてアーマーも多いですから。そして普通の貴族の次男坊から反帝軍のエースパイロットとなり革命軍の英雄となるアーガス君中心なので、政治物というより兵士目線での戦争物です。そこが王女で歴史政治系戦記のアリア様と違う点です。この二人のルートがクロスした後の三次大戦は歴史政治系戦記になっていきますが。
● 三英雄の違い。
このパラの世界には、三英雄を評した格言があります。
「死ねる。死なぬ。死ねぬ」です。
これは、アリア様、フィルさん、アーガス君……三人のリーダーに仕える事になったとあるキャラが後世に残した格言で、三人の英雄の特徴を現している、いい言葉です。
<死ねる>はアリア様。アリア様のためなら死ねる。アリア様のためであれば死すら恐怖ではなく喜んで死地に行ける……という事です。後に<アリア教>という存在を生むほど、強烈なカリスマと人を陶酔させるほどの魅力を持っていたのがアリア様。
<死なぬ>はフィルさん。居並ぶ英雄豪傑たちですら感心してしまうほど、その政治や戦略は完璧。フィルさんの命令に従えばまず死ぬ心配はない、と思わせる不安の余地のない完璧な頭脳と人格。正に史上最高の天才であるフィルさんだけが持つ魅力。
<死ねぬ>はアーガス君。「この人置いて、おちおち死んでなどいられない」と皆が奮起する。天才性もカリスマも前二人には劣るが、自分の力を120%引き出させる気にさせる。
まるで家族のような温かさと気安さがあり、それでいて「この人が自分たちのリーダーだ」と誇れて本心からリーダーに推せる……それがアーガス君。
三人の個性をすごく言い得ているいい言葉です。アリア様は君主として、フィルさんは政治家として、アーガス君はリーダーとして最高の人材といったところでしょうか? しかし別の言い方をすれば、アリア様が一番時代としては古く、アーガス君が一番時代を先取りしているともいえます。
そしてこの格言の著者は最後にこう締めくくっています。
「この三人だけが、世界を統べることができるだろう。そしてそれぞれ平和な時代を築いたに違いない。ただし、誰が世界を統べるかで、その後の平和の長さは違うだろう」と。
恐らく一番平和が短いのがアリア様。偉大でありすぎるため権力は専制に偏るため後に王座に凡夫が就けば国の制御は難しくなる。フィルさんは完璧な官僚主義の世界を作るだろう。だがいつか官僚は腐敗する。アーガス君は議会政治と官僚主義をうまく使いこなし、一番平和を長持ちさせる……と、言われています。中々面白い話です。
勿論、本当の理想はこの三人が手を組むことでしょう。
王位にアリア様、摂政にフィルさん、元帥にアーガス君……正に夢の体制であり、思想や理想としてはありえなくない話ですしそれが世界をもっとも平和で理想的な世界を創造したと思いますが、生憎歴史はそうなりませんでした。この事は当時も後世の人間も運命の悪戯と不幸に歯噛みすることになりますが。
ちなみにフィルさんはアリア様より一歳年上、アーガス君はアリア様の二歳年下です。本当にこの三人は同世代で、見えない運命の糸で結ばれている気がします。
三英雄の中で、今後アリア様に直接関係するのはフィルさんです。
フィルさんはパラ歴2337年、突然爆誕する英雄です。アリア様の革命成就の半年後です。大陸連邦最大の公国ソニアの公皇子で、彼もまた悲劇の中から生まれます。
アリア様との違いは、彼は国を捨て一軍人であることから人生をスタートさせた点です。
そしてそこから、大陸連邦最強の軍人になります。しかも瞬く間に、他の追従など完全に無視して。その強さは敵である帝王軍陣営が、「あの男と戦うな」と命じるほどです。そして圧倒的劣勢だった反帝軍を互角にまで押し上げ、最終的に大革命でアーガス君と共に帝王を倒し大陸連邦を手にします。
このフィルさんの登場が、アリア様の人生も変えます。
直接会う事はないですが、アリア様の人生の大きな転換点になります。そしてアリア様にとって宿敵であるザムスジル帝国への無言の圧迫となり、クリト・エ大陸は瞬く間に戦乱に包まれます。その意味でいえばある意味クリト・エ大陸にとっては疫病神なのかもしれませんが、これによってクリト・エ大陸は統一に向かって動き出します。
そして……後に語られる<アリア教>の根幹の一つにもなっていきます。
このような形でフィルさんは本人は登場しませんが、色々随所で出てきて存在感を発揮します。なので、これからの「マドリード戦記・女王編」を読む上で覚えていて欲しい人物です。
● これからの「マドリード戦記」
第二部は『女王動乱編』になります。
マドリードを中心に、トメイル国、ガエル共和国、バルド王国などが関わってきます。
特にマドリードの北にあるトメイル国が主な舞台になります。
勿論、敵はザムスジル帝国です。
歴史群像劇らしく、これからは各国の動きや各国の重要人物などにもスポットを当てつつ話を進めていきます。動き出せば一気に歴史が動いていくので面白い展開になっていくと思います。そして初めは外征など微塵も考えていないアリア様に段々変化が生まれ、彼女の中の覇王の才能が芽吹き始めます。アリア様は自分の才能に、今度は苦しむことになります。結局、平和に過ごすためには剣を取らざるを得ない時代に突入することで、女王であることの責任に苦悩します。
新しい新兵器や新アーマーなど、戦闘の見所も沢山あります。
キャラクターは一気に増えますね。各国の首脳や軍人なんか増えていくので覚えるのが大変かもしれません。時々現在の関係図みたいなものは入れていきます。
ちなみにクリト・エは大陸連邦より50年は遅れていますが、政治面でいえばもっと遅れています。ほぼ地球の近世欧州レベルだと思ってくれば当たっていると思います。大陸連邦はそれでいくと近代20世紀半ばくらいのレベルがあります。帝王や貴族、公国がありますが民主主義も導入しているし、都市には電車もテレビもありますから。
アリア様のすごいところは、大陸連邦を知りクリト・エを一気にその域まで跳躍させた所に偉大さがあります。後に『女王の跳躍』と称されます。
ただファンタジー世界観らしいものもこれからは出てきます。巨大竜神もいるし、幻獣や竜騎士、浮遊都市や、浮き島なども出てきます。魔法使いであるシャーマン・マスターも出てきます。きっと世界観の魅力はこれから広がっていくのでお楽しみ下さい。
長くなりました。
最後に……アリア様は、日本史で言えば織田信長が一番近いと思っています。秀吉も半分くらい入っていますが。フィルさんやアーガス君はあまり日本史にはいないタイプなので比べる人物がいないんですが……アーマー乗りのパイロットとしてはアーガス君はルーデルみたいなものかも(笑 アーガス君は超一流パイロットですが壊すンですよね、この男w 国宝機だろうが最新機だろうが。愛機精神に乏しい珍しい英雄です。
この後、ゆっくりですがアリア様の短編シリーズ『大陸連邦留学旅行編』があり、その後本編である『女王動乱編』があります。
作者の癖で、ある程度書き溜めてから随時公開していくと思います。
完全に完結するまで何年先になるか分かりませんが、お付き合い下されば嬉しく思います。
感想や疑問点などありましたら気軽にもらえると対応します。ネタバレはいいませんが。
ここまで第一部「王女革命編」を見て頂きありがとうございました。
これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。
「マドリード戦記『王女編』」あとがき でした。
一応第一部完結ということで満足しています。
これからちょっとペースは落ちますが、まず「大陸連邦留学旅行編」を公開します。
それが終わったらちょっと休んで、「女王動乱編」を描いていこうと思います。
長いシリーズですし、頑張って最後まで書きたいと思います。
これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。




