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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 7 第二次リィズナ会戦 ②

『マドリード戦記』 王女革命編 7 第二次リィズナ会戦 ②


 ついに軍を進軍させたアリア。敵は1万5000。アリア軍は4500。

 この3倍の敵を、僅か一日で撃退しなければならない。

 アリアの用兵と運命が試される……!

 第二次リィズナ会戦 2



 12月15日 午前8時35分。

 最初の火蓋がリィズナ南東80キロの、ワーケ平原で起こった。

 クレイド軍・南軍1万5000は、ショパニア=フォン=トロース男爵によって率いられた貴族軍で、移動は飛行艇5隻、騎馬が3000、アーマーが12機、歩兵6000がゆっくりとしたスピードで進軍している。その姿は壮大で、通過する集落では何事が起きるのか、と避難する者や動揺する人がいた。


 ショパニア男爵を司令官とする南軍が、人家のなくなったワーケ平原に入ったとき、南方から高速で迫る集団を飛行艇が察知した。

「アリア軍の飛行艇部隊とアーマー部隊です! アーマーは50以上! 飛行艇は4隻!」

「な……なんだ!? そのアーマーの数は!?」

 第一報を飛行艇<ゴア・ボーア>聞いたショパニアは多少軍事について学んだことがあり、当時の常識として50というアーマーの数……(正しくはこの時59機)は常識外だ。アーマー数だけでいえば5万の歩兵部隊に匹敵する。アリア軍のリィズナ陥落も納得だ、とショパニア男爵は思った。

「砲撃で撃滅してしまえばよい。地上部隊も停止、迎撃体制を整えろっ!!」

 そう命じたのとほぼ同時だっただろう。<アインストック>の主砲が<ゴア・ボーア>の船体を貫いたのは。これが第一射だった。




「主砲、続けて敵飛行艇を砲撃。あと5000m以内でなければ敵も撃ってこない。その間に飛行艇全てにダメージを与えるんだ」

 <アインストック>の艦橋でレイトンは冷静に命令を下す。アリアからすでに戦術は聞いている。完全撃破する必要はない。行動不能にするだけでいい、と。


「レイトン少佐。いいですか? 2万の軍を全滅させるのは不可能です。ようは進行不可能なダメージを与えればいい、それでクレイド伯の本軍と合流できなくなります。戦略目的はそれで十分。最初の艦隊戦闘が要です。お願いします。細かい用兵はお任せします」


 ……僕を信用している……疑っているはずなのに、分からない……。


 だがそう思いつつ、彼の戦術能力は戦争が始まった今、その能力は如何なく発揮されていく。


 午前8時52分。


 アリア軍の飛行艦隊がついに5000mを切った時、他の三艦も砲撃を始めた。南軍の飛行艇も応戦を始めたが、アリア軍の砲撃は的確に飛行艇の動力部や砲にダメージを与え、満足に反撃ができない。

 地上軍もその攻撃に混乱しはじめた。

 その時……午前9時02分。これまで何もなかった前方500mの草原の真ん中から、突然アリア軍の歩兵と騎兵混成部隊、約3000が現れた。トジーユン・ミタスを将とし、第一軍から三軍までの全てが所属する特別白兵戦部隊で、アリア軍が持つ歩兵の全てだ。

 ザールが魔法でカモフラージュして伏せさせていたのだ。

 クシャナとシュラザンはアージェンス改。ミタスとミーノスは騎馬だ。


「全軍! 突撃しろっ!」


 ミタスは先頭で突撃を命じた。


 まずは2機のアージェンス改が先行し、混乱する敵軍歩兵部隊の先頭部隊に突入し、その後ミタスが直接率いる騎馬兵200騎が突入し、さらに混乱を広げた所に歩兵部隊が突入した。

 この場の前方に展開されていた南軍歩兵は、約2000だ。しかも砲撃と、迫り来るアーマーの大部隊に気は完全にとられていたところの奇襲である。戦は勢いである。ミタスの歩兵部隊は、数の上では劣っているにもかかわらず面白いように南軍を撃破していく。

2機のアージェンス改と200の騎兵、数が少ないにもかかわらず敵を混乱させるには十分だった。ショパニア男爵は戦況の把握をしようと思ったが自身が猛烈な艦砲戦の最中であり、前衛部隊は混乱中で手が打てない。


 9時26分。そこにアリア直属のアーマー部隊主力が南側面……南軍にとっての右翼に飛び込んだ。

 アリアのヒュゼイン白、ナディアのヒュゼイン紅がそれぞれ先頭で突撃し、中軍にあった地上部隊本陣に突撃した。

 この破壊力は大きかった。上空の飛行艇部隊は指揮ができる状態でなく、前衛の地上の歩兵部隊は乱戦中……襲われていない左翼と後方の部隊は状況が分からず動きが取れない。

「ナディア! 貴方たちはこのまま中央突破! アーマー一個小隊、私に続け! 前衛敵歩兵部隊を殲滅するっ!」

「了解♪」

 ナディアはニヤリと笑みを浮かべると、まるで臆することなく敵陣のど真ん中に飛び込んでいった。彼女が目指すのは敵アーマー、そして不時着してくる敵飛行艇だ。敵のアーマーは12機だがどれもオリジナルのアージェンスだ。ガノンとは性能差がある。だがヒュゼインとアージェンスであれば圧倒的にヒュゼインのほうが上だ。何よりナディアは天才的なパイロットだ。

 アリアとナディアは敵アージェンスを見つけると、まずそのアージェンスに標的を定めた。アリアもナディアも護衛機をつけている。この当時、アーマーが集団で戦いを挑んでくるという想定は貴族評議軍にはない。


 9時48分。黒煙が起ちこめるブリッジで、ショパニアは自軍のアーマーが、すでに7機も撃墜されたと聞き、愕然となった。敵アーマーは一機も倒せていないのだ。

「閣下! もはや30分も浮いてられません! こちらの動力の飛行石が破壊、火砲も半分が沈黙です!!」

「私にどうしろというのだっ!! 兵力を見ろ! 数では勝っているじゃないか! 個々に戦って賊を倒せばいいだろう!」

ショパニアは副官に怒鳴り返した。確かに兵力ではまだ圧倒的に上回っている。

 特に、前衛の歩兵たちの戦いは持ち堪えている。むしろ時間が経過するにつれ、優勢の兆しも見え始めていた。すでに乱戦になってエルマ粒子の拡散で火砲は使えないが、兵力は南軍のほうが多く、左翼の一部も前衛歩兵部隊に合流し始めている。

「忘れてたぜ! これが俺の知っている戦争だ」

 ミタスは愛用の戦斧槍を振り回しながら敵陣の真ん中にある。すでに30人以上の敵を屠った。敵も混戦で、組織的な対応ができず、もっとも原始的な……目前の敵を襲うという方法を取っている。この状況は一騎当千のミタスのような豪傑には都合がいいのだ。こんな蛮勇誇る英傑が現れれば、敵の戦意は見る見る低下し、味方の戦意は何倍も膨れ上がる。それだけでなく貴族軍は混乱の極にあり、元々戦意も低く行動も混乱し、上からの統制がないという状況では、実力の20%ほどしか出せないものだ。その点、アリア軍には命令と戦闘目的がはっきりしているし、各指揮官の戦意も判断も高く一糸の乱れもない。そしてアリアがデザインした新デザインの軍服のおかげで同士討ちもない。

「私は、野蛮は嫌いですが」

 ザールは時にアーマーで戦い、時に外に出て、魔法で敵軍を蹴散らした。クシャナも戦い方は似ている。彼女の場合はアーマーと弓だ。まずはアーマーで歩兵の列を乱し、乱戦になると個々の戦闘方法で敵を蹴散らす。


 が、アリア軍にも弱点がないわけではない。


 アリア軍の最大の弱点は、歩兵たちの戦闘力の差だった。


 元々のアリア軍やクシャナの組織は、ミタスやザールによって再訓練されたが、彼らは正規の軍隊訓練を受けたわけではない。さらにフォーレス家やレイトンがつれてきた私兵、そして革命決起後参加した正規の国防軍兵士たちの間では、錬度や戦い方の違いがある。アリアたちは事前に各隊長たちに説明し訓練も行い、一応統一のとれた戦闘行為はできるようになったが、このような乱戦だとどうしても地が出てしまう。歩兵たちは戦意高く恐怖にも怯えず、未熟を士気の高さでなんとかカバーしていた。が、いつ瓦解してもおかしくない。


 アリア軍のほうにも混乱の兆しが見え始めた時、混戦する激戦区にアリアのヒュゼインと護衛機3機が到着した。


 アリアの登場にアリア軍の士気は一気に上がり、アリア参戦による心的衝撃と純粋な戦力バランスの変動で、南軍の混乱はさらに増した。

 アリアは周辺の敵を蹴散らすと、驚くべきことにコクピットから出て身を外に晒した。これには両軍が驚いた。


 アリアは全軍に聞こえるように声を上げた。


「私はマドリード国23代国王、アリア=フォン=マドリードであるっ!」


「おいおい、マジかよ姫さん」

 ミタスは目の前の敵を切り倒しアリアの元に向かおうとした。が、周りを見て足を止めた。

信じられないことだが、アリアが声を上げた瞬間、この周辺の戦闘が一時止まり、全員がアリアに注目しているのだ。全ての敵味方兵士が、である。


「正義のために戦う、愛する我が軍よっ! これは正義の戦いだ! 正義は我々にあるっ! 全力で戦えば、必ず勝利は我々のものとなるっ!!」


「おおーっ!!」


 大地に響き渡るアリア軍の歓声。

 ミタス……そして他の諸将たちは見た。兵を鼓舞するアリアの体から、うっすらと極彩色の波動……王覇が発せられ、それが大きく広がり全軍に広がっていくのを。王覇を浴びたアリア軍の兵士たちは、内から沸きあがる高揚感と力を感じ、さらに大きな歓声を上げる。一方、南軍の兵士たちは王覇を受けると、どうしてかは説明できないが、明らかに戦意を削られていく様子が見て取れた。


 アリアはさらに続ける。


「貴族評議軍兵士たちよ! 私は皆も愛している! 貴殿たちも、私が守るべき国民であることに変わりはない! 今、運命の悪戯で敵となってしまったことに私は心痛めている! 私が打倒すべきは悪辣な評議員たちであって皆ではない。だが! その評議員を討つためには皆は今、私の前に立ちふさがっている。その忠誠心は良し! だが真の正義は皆にはない!! 愛すべき敵となった国民よ!! 真の正義のため武器を収め、抵抗をやめよ!! そうすれば私たちは皆に危害は加えないっ!!」


 アリアの声は、少女のものとは思えないほど大きく遠くまで響いていく。


 地声だけではない。アリアの声はヒュゼインのマイクから無線へと繋がり、それが各小隊長以上のアーマーに取り付けられた無線機のマイクから流され、さらに上空のアリア軍の戦艦から流されていく。

 アリアの演説は、巨大な1つの声となって平原全域に響き渡った。

 アリアは短剣を抜き、ショパニア男爵が乗る<ゴア・ボーア>を差した。


「戦士としての名誉と誇りがそれを許さない、貴殿たちの気持ちは分かる。ならば堂々と私の軍と、戦うがいいっ! だが忘れるな! 私は敵となった貴殿たちを愛している! そして貴殿たちの誇りのために、私は全力をもって戦いに望む! それもまた、私の愛だ! 敵にならざるを得ないのであれば、全力で私に向かってくるがいい! それもまた、貴殿たちの正義である!」


 アリアはそういうと短剣を収めた。


 その時、劇的な事が起こった。

 低空で漂っていた<ゴア・ボーア>で大爆発が起こったのだ。ナディアのヒュゼインがとりつき、動力部に致命的な攻撃を与え<ゴア・ボーア>は爆発炎上した。その後、息つく暇もなくアリア軍のアーマー部隊の猛烈な攻撃を受け、<ゴア・ボーア>は次々と爆発を続け、一瞬にして完全に撃墜してみせた。アリアの演説を聞いていた全軍から見れば、まるでアリアの言葉によって撃破されたようにしか見えなかった。


 これで、南軍の兵士たちの戦意が完全に消失した。


「我が言葉はそれだけ! 新生マドリード軍!! 全軍、総攻撃しろっ!!」


 アリアはそう叫ぶと、ミタスが「全軍、突撃!」と短く命じた。アリア軍は再び喝采の声をあげ、武器を取り南軍に襲い掛かった。アリア自身も再びヒュゼインに搭乗し、南軍に対し向き直ると、歩兵部隊を援護していた南軍砲兵部隊に向かって進んだ。

 が、戦闘の雌雄はこの時すでに決していた。アリア軍が完全の勢いに乗り、南軍は完全に戦意を失った。この瞬間、互角な戦闘は姿を消し、一方的な<狩り>へと変わった。

 ミタス・ザールの二人が率いる歩兵と騎兵混成部隊、ナディア率いるアーマー部隊の攻勢に、数では上回っていた南軍だったが、<ゴア・ボーア>撃破とアリアの言葉によって戦意を奪われてしまい、冷静な抵抗ができず形勢は完全にアリア軍に帰した。

 その後30分の間に、南軍は全アーマーを撃墜され2隻の飛行艇も地上からのアーマーの攻撃と<アインストック>を中心とした戦艦砲撃によって撃墜された。


 午後10時20分。


 南軍は崩壊し、ほとんどバラバラに遁走……撤退していった。

「逃げる兵は追うな! 降伏した兵に危害を加えるな!」

 とアリアは厳命し、その後戦闘域に残る残存勢力の処理に切り替えた。


 こうしてワーケ平原での戦闘が完全に終決したのは午後12時すぎの頃であった。


 アリア軍、アーマー3機大破、11機損傷。死傷289名(うち死者42)

 一方南軍は、飛行艇戦艦を4隻撃墜、アーマー12機全滅、死傷7820人であった。捕虜が約3000近くにのぼり、約4000名が遁走した。司令官ショパニエ男爵は戦死。アリア軍の信じられないほどの完勝だった。


 だがこれで終わりではない。あくまで第一戦である。

 アリアはすぐに全飛行戦艦を地上に降ろす命令を出し、<ロロ・ニア>に自軍の死傷者を収容させるとリィズナに戻るよう指示した。そしてミタス・ザール率いる歩兵部隊を全て飛行戦艦に収容した。捕虜はこの場で武装解除し、『戦闘行為非参加の誓い』の手続きを行いその後はその場で放逐した。降伏した500名ほどの一般兵がアリア軍への参加を希望したので、それらはそのままアリアの歩兵部隊(第三軍)に組み込むこととなった。細部はザールが判断し、手配する。

 その後、アリアはナディアと合流した。

「お疲れ様、ナディア。ありがとう」

「えへへっ♪ それほどでもないよん、アリア様♪ アリア様にはびっくりしたわぁ~、突然戦闘中に演説なんか始めちゃうんだもん」

「ご……ごめんなさい。つい……」

「戦闘区域でエルマ粒子が充満してるとはいえ銃で狙撃されたらどーすんのぉ! 危険なことしちゃ困るよぉ! アリア様に何かあったらあたし、どうなっちゃうかわかんない」

「危険は皆同じです。でもありがとう、ナディア」

 アリアも自分の行動を振り返る。怒られてもしょうがない暴挙だった。だが、アリアは、王者たる者が先陣で取る行動の効果を知っている。事実、あの演説で南軍は戦意を失ったばかりか、3000という通常では考えられない数の捕虜が発生したし、500人という転向者も得た。元々貴族評議軍の兵士たちも評議会に絶対に忠誠を捧げているわけではなく、各貴族領から強引に狩り出され兵士となった人間も多い。捕虜となり送還されれば貴族たちの叱責を受けるだけでいい事は何一つもない。そういう兵士たちにとって、勢いに乗るアリア軍のほうが我が身の安全を得るほうが生き残れる、という打算が出たのだろう。そういう敵兵の転向も多少アリアの計算には入っていた。勝てばこの手の事は増える。

「私の演説より、ナディアが頑張ってくれたから。まさかあのタイミングで敵戦艦を撃墜するなんて。すごいよ、ナディアは」

「あははははっ♪ いやー、あたしも乱戦中だったんだけどね。アリア様の言葉聞いたら、『あ、今が頑張りどころ! 見せ場だ!』ってカンジでノッちゃってさ♪」

「ナディアらしい。お疲れ様」

 ナディアはアリアに褒められ、「あははははっ♪」と照れ笑いを浮かべる。一見無邪気で無鉄砲に思えるが、ナディアは無自覚のうちに戦争の転機や戦術が身についている。アリアだけでなくミタスやザールが一目置く理由だ。

 一頻り二人は雑談した後、アリアは次の作戦の要になる戦略をナディアに伝えた。

「ナディア。疲れはどう?」

「あたしはそんなにだけど? 他の皆は少し疲れてるかもね」

 アーマー戦は歩兵のように広い戦場を駆けまわったりすることはないが、個人差はあるが、その性質上赴く戦場は激戦となる場合が多く、短時間に集中する分精神的な疲労は大きい。ナディアのようにアーマーの操縦に自信を持っている人間はそうでもないが、一般アーマー兵たちは相当疲労しているだろう。訓練してきたとはいえナディアほど熟練のパイロットというわけではないし、この一連の戦いが初の実戦である兵も多い。

 むろん一番疲労したのは歩兵部隊だ。だからアリアは歩兵部隊を早々に飛行戦艦に収容し、休息と食事を取るよう命じている。

「14時には全軍収容して移動の予定だけど、アーマーも載せてだと、飛行戦艦は人でいっぱいになるから、皆の疲れがどれくらいとれるかがこれからの作戦の問題点なの。今回はほとんど休む間なく連戦になるから」

「そっか……飛行戦艦に箱詰めかぁ……5000人+アーマー60機だもんね……」

 アーマー部隊はこのワーケ地方に自走で前日のうちに来て待機していた。だが今度は全て飛行戦艦に乗せ損傷機体の修理しつつ、全兵士の休息もさせる予定だ。各戦艦に食料や医療物資も載せているのでキャパシティー的にはギリギリなのだ。一般兵のほとんどは個室ではなく収納庫のような大きな空間に枡を区切り休息することになる。快適とはいえない。……もっとも、そんなことをこの時代で危惧するのはアリア軍と大陸連邦くらいのもので、貴族評議軍や国防軍、他のクリト・エ諸国もそんな心配はしたりしないが……

「リィズナには戻らないんだ」

「戻らない。戻れるとすれば、第2戦と第3戦の間に少し……」

「次の戦闘はいつの予定なの?」

 ナディアだけは一日早く出陣していて、昨日の夜行われた全体作戦の詳細についてはまだ聞かされていなかった。アリアは表情を少し引き締め、答えた。

「明日の午後。ファーム山地です」

「明日……か……」

 移動に戦闘準備を入れれば24時間を切る。

「だから、できるだけ皆には休息と食事を取って欲しい。こんな無茶な作戦を立てるなんて、無謀なことしていると思うけど」


 だがそれしか勝ち目がないのだ。


 クレイド軍本隊を入れれば4軍団、全てと戦って、その全てで素早く勝たなければならない。勝つためにはすべて奇襲、奇策を用いて戦術で絶対な有利を得なければならない。そのためには、アリア軍が各個撃破戦略を取っている事、クレイドにそのことを少なくとも本隊と対決するまでは知られたくない。先方がこの情報に接するより早く倒さなければならない。アリア軍の最大の問題点はここにあり、また、アリアがヴァームに語った作戦案の要所でもある。それを可能にするための<アインストック>であり大量のガノンだ。理論上は可能だが、実際は兵士たちの疲労や負傷なども考慮にいれなければならない。アリアの計算が現実的なものか、机上の空論か……アリア自身が試されている。


 12月15日、午後14時30分……アリア軍は出発し、北の空に消えた。


 次の目的地はリィズナより西、45キロにあるファーム山地である。

 




『マドリード戦記』 王女革命編 7 第二次リィズナ会戦 ② でした。


4連戦となる最初の第一戦目です。

アリア様の巧みな用兵戦術と相変わらず?の演説癖で、なんとか計算通り圧勝しました。

しかしこのままうまく進むか、それとも敗北してしまうか、神のみが知る……というところです。この第二次リィズナ会戦のシリーズが、中盤の最大の盛り上がりであり、激戦となります。これからも華麗で勇ましいアリア様の活躍を楽しんでください。


今後も『マドリード戦記』をよろしくお願いします。

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