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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
革命賊軍編
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『マドリード戦記』 革命賊軍編 20 国境線4

『マドリード戦記』 革命賊軍編 20 国境線4


<アインストック>で周辺の征圧をするナディアとレイトン。

順調だが、依然クレイド伯のしょうそくは掴めない。


そして着替えを終えたアリアは、再び基地司令レイスと対面する。




 その頃……<アインストック>ではナディアとレイトン中佐がアリア軍の動きについて打ち合わせを行っていた。


「ミタスとザールたちは南西80キロの地点に到着……飛ばせばすぐに合流できる」

「けど、まだ合流予定はない……ということですか?」

とレイトン中佐。

「クレイドの馬鹿が包囲網にひっかかるまではね」

 ナディアは腕を組む。


 ナディアは<アインストック>の機動部隊の半分を哨戒に出し終えたところだ。


 ミタス軍は、すでに三つの貴族賊軍を撃滅してきた。

 それらから事情を聞きだしクレイド伯が軍を解散し傘下の貴族たちにも亡命を薦めたことはわかった。解散した以上賊軍には大きな兵力はない。アリア軍は索敵のため兵力を分散しても対処できる。


 が、クレイド伯は違う。


 旧式だが戦艦を有しているし、ティアラ誘拐犯が合流すればアーマーも持っているだろう。

 よって基本戦略は変わらない。

 まずクレイド伯を発見する。そしてアリアが国境で亡命を封じる。それが完了すればミタス軍と連携して挟撃し、一気に殲滅する。計算では、もうどの部隊が見つけてもおかしくはない時間だ。気は抜けない。


 分からないのはグレントラ基地の動向だ。


 アリアが訪問して一時間になる。まだ何も連絡はない。


「リベス大尉からの連絡はあったんだけど」


 リベス大尉は親衛隊だから、当然全ての報告はナディアが受け取る。


「何かありましたか?」

「アリア様の着替え! そんだけ」

「は……はぁ」

 アリアの今の正装は軍服ではなくドレスだ。王専用の長衣はあるが、その下は王妃用の儀式用ドレスだ。簡単に洗濯できるものではないので、王城パーツティスを飛び立つ時10着積み込んでいる。


 アリアはレイスと剣術試合をした一件をナディアに報せる事を堅く禁じた。ナディアが知ればレイスはナディアの手で半殺しになるだろう。それを止める自信がアリアにはない。





 

 

 午前11時00を過ぎた。


 軽くシャワーを浴び着替えなおしたアリアは、すぐに司令官室に向かった。むろん親衛隊も同行している。


 司令官室では、少し髪を乱れさせたレイスが、アリアがやってくるの待っていた。


 入室してきたアリアを見るならレイスは立ち上がり、敬礼した。


「恐れ入りました陛下。俺の完敗です。ドレスの替えがあって安心しました」

「皮肉ですか?」

「違います。剣を持ち戦われるアリア様は素晴らしいですが、やはり女性らしい姿こそ魅力的です。男としては勇ましいアリア様より女性らしい美しい姿のほうが見ていて嬉しいものです」


 どうやら軽薄な軽口はこの男の自前であるらしい。だが素直な本音で耳障りな感はなく不思議な魅力もあった。嘘ばかりの軽薄才人クレイド伯と違う点はそこだろう。


「約束どおりこの基地は全て陛下の意志に従います。俺についてもいかなる処分も受けるつもりです。何せ未成年の少女を本気で殴りにいった大馬鹿者です。部下として信用されないでしょう?」

「そうですね。これが普通の少女だったら大問題です。ですが私は少女である前に女王であり、軍人です。軍人は戦う事が任務、咎めるのは間違いでしょう。それに、貴方は何か意図があっての事と思っていますが?」


「驚きましたな。どうしてそう思うのです?」


「私には眼があります」


 そう、アリアは観察していた。レイスの態度だけでなく、彼の部下である周りの兵士たちの動きを。

 主君を本気で殴り飛ばそうというのに誰も驚かず、そしてレイスが倒されても尚統率が失われなかったのを。

 レイスはただの自由気儘な将軍ではなく、ちゃんと信頼を得ているようだ。


 そこまでの男があんな茶番をどうして? 

 というのが、アリアがレイスに対して抱いた疑問だった。


 アリアの問いに、レイスは一笑するとアリアの後ろに控える親衛隊たちを指差した。


「親衛隊の皆さんはアリア様より当然強いわけですかな?」

「いえ。間違いなくアリア様がお強いです。親衛隊としてみっともない話ですが。ですが我らのナディア閣下は別です」

「ああ噂の女将軍だね。つまりここにいる誰よりもアリア様は強い。この俺を入れてもね。ならば一人にしても問題ないでしょう?」


「…………」


「ちょっとアリア様と二人で話がしたいんだが、どうです?」

「……分かりました。リベス大尉、部屋の外で待機していてください。どうやら彼は私に用があるようです」


 リベス大尉は頷く。ただ彼は黙って短剣をその場に置いていった。レイスは丸腰だ。


 親衛隊が退室し、アリアが短剣を腰に帯びた時だ。

 これまで飄々としていたレイスの表情から笑みが消えた。

 そして、彼はその場で深く頭を下げた。


「これまでの言動と行為、まことに失礼しました陛下。ひどく気分を害された事でしょう。その責、全てはこのレイス=フォン=クロトクルが負うものです。部下たちには一切の責任はございません」


 突然豹変するが如く態度を改めたレイスに、アリアは少々面食らった。


 だが、その言葉は偽りでないことをアリアだけが知っている。


「この基地は貴方のものでない。全て私のものです。どうして自分の部下を嫌うのですか? そして、貴方のこともですよ?」

「有り難きお言葉、胸に染みました」

 そういうと頭を上げるレイス。その表情に再び飄々とした笑みが浮かんでいた。

「ではアリア様。時間もないことですし用件に入りましょう。まぁちょっと興味深い話が二つほどありましてね。この話、聞く価値はありますからご安心下さい」

「本当ですか?」

「茶番の試合など帳消しになるくらいヤバいネタなのは保証します」

「分かりました。伺います」

「ではちょっと俺に付き合って付いてきてもらえますか。できればアリア様だけが好ましいですね。何せこの一件、俺しか知らない秘密でして」


 そういうとレイスは意味ありげにニヤリと笑った。


 行くしかないようだ。








『マドリード戦記』 革命賊軍編 20 国境線4でした。



今回はちょっと短いです。

現状説明と、次の話のための予告編みたいなカンジですね。

次回、レイス将軍編完結?wです。

どちらかというと政治系の話になります。

これが終われば、ようやくクレイド伯に、ということになります。

ということでついに王女革命編と賊軍編も最後の見せ場に近づいていきます。


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。


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