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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
革命賊軍編
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『マドリード戦記』 革命賊軍編 18 国境線2

『マドリード戦記』 革命賊軍編 18 国境線2


国境の国防軍基地グレンドラ。

その将レイス=フォン=クロトクルは一癖も二癖もある男だった。

彼はすんなりアリアの命令に服す気配はない。

だが敵でもない。

緊張するアリア軍。はたして……。


 マドリードの最西端部には、国境国防軍5000人が存在し、レイス=フォン=クロトクル伯爵が将軍の地位を得て国防基地グレントラを統括している。


 レイス将軍は30代前半、実力によって将軍の地位を手に入れた有能な軍人だ。革命戦に際してペニトリー同様完全中立を宣言し傍観者であったが、ペニトリー将軍より職務に真面目で、かつ危機感を持ち戦況を見ていた男だ。そして一筋縄にはいかない男でもある。



 筆者は彼の存在に注目したい。このレイスこそ、アリアの革命戦成就から国内平定に至る間、ガレットと並び立つ才覚者としてアリアと関わることになる人物だ。



 多少、彼について説明せねばなるまい。中々個性豊かな男だ。


 元々10代の頃は不良貴族の国防軍人として国防軍内での評判はよくなかった。レイスがクビにならず国防軍の中枢に存在することができたのは伯爵家出身であるためだ。


 女遊びもし、夜な夜な飲み歩き、職務にも不真面目で一族から白眼をもって見られていた放蕩息子は、どういうわけか母ロサーヌには優しく忠実で、母の前では人変わりしたようだと周囲には言われた。


 そんな中、基地グレントラの中級隊長として赴任した。20代の頃で、アミル王が健全だった頃だ。マドリード政府の強硬論に触発されガエル共和国の暴徒がマドリード国境を犯し略奪事件を起こした。マドリード政府はすぐに軍を発し撃退した。この事件はちょっとした国境紛争だったが、レイスの人生を一変させることになった。母ロサーヌ伯爵夫人がバルト王国のスパイに襲われ、死んだのだ。


 レイスは復讐の鬼と化した。

暴徒を蹴散らし独断進攻しようとしたとき貴族評議会に止められた。もっともすでにレイスは復讐を果たした後であったが。


 彼は自分を止めた国防軍首脳と貴族評議会に対し猛然と反撃し、結果貴族軍人として順調に出世していた彼の経歴はそこで頭打ちとなり、国境の一将軍の地位に甘んじることになった。若い頃はそれに憤りを抱いていたが、年月を経て30代になったころやや落ち着き貴族評議会との関係も修復された。自分の力ではどうにもならない現実を知ったのと、どういう変化があったのか、国防意識に目覚め、ガエル共和国やバルド国を敵視するようになった。自然一番の情報通にもなった。もっともその事を誇らなかったからあまり知られていない。



 こうしてアリアの革命戦が勃発した。



 実はガレットと違って貴族評議会と多少関わりはあった。



「アリア殿下が敗走して逃げてくれば逮捕する。しかしそれ以外は職務外。俺の任務は国境警備で入れるのも出すのも許さん」


 と言って貴族評議軍の参加を拒否した。元々人望があり10年の基地グレントラの勤務で部下は彼に懐いていたから、西部国境は革命戦において沈黙を守った。



 だが、それも終わろうとしていた。



 4月9日午前11時……基地グレントラ上空に<アインストック>が姿を現した。


 いうまでもない。強行軍によっていち早く国境に辿り着いたアリア&ナディアのアリア軍主力の一部である。


 と同時に……レイス将軍の元に別の、不吉な情報がもたらされた。



 ガエル共和国軍が動き出しているという。



 約6000の陸軍と、数隻の飛行戦艦がマドリード国境に向かっているという。



「こりゃあ、随分面白い事になってるじゃねーか。お前ら、戦闘準備をしとけよ」



 レイスはそういうと、男にしては長い髪を捲り上げ一笑した。



 どちらに加勢するのか……それは明言しなかった。部下たちも、レイスがどういうつもりか計りかねていたが、ともかくも戦闘準備を整えた。


 一方……ペニトリー大将軍やガレット伯と違い、すぐにアリアに頭を垂れ幕下に参ずることはなかった。彼は<アインストック>からの協力要請を拒絶した。


「現在基地グレントラは作戦遂行中である。アリア陛下の召還に応じるゆとりはない。以上ご理解いただきたい」


 レイス将軍は<アインストック>からの通達に対しそう返答すると臨戦態勢を取った。







 その返答を受け取ったアリアは、当然レイスの行動を敵対行動だと受け取った。


 が……グレントラ基地が展開する国防軍の動きを見たアリアは、その認識を変えた。


 軍は基地を防衛するでもなく、アリア軍に対するではなく、国境線に向かって動いている。亡命するようにも見えない。


「どういうことなの? あれって」

とナディアは首を傾げた。多少、命令を無視したレイスに対し苛立ちを覚えている。

「レイス=フォン=クロトクル伯爵……か」

 アリアは艦橋で国防軍の動きを見ながら顎に手を当てた。 


 レイス将軍の事は多少知っている。私生活では放蕩の気があるがだらしがないほどではない。軍人としては優秀で国境紛争でいくつか功がある。部下から信任を得ているという点でいえばペニトリー大将軍より人望はある。確か、一度はザールが接触したことがあるらしい。しかし彼はアリア陣営にやってくることはなかった。


 アリアはしばし考え、そしてすぐに作戦を決定した。


「アーマー部隊で哨戒を。クレイド伯だってこの国防基地近くには現れないでしょう。でも、ここが捜索の基点になるはず。ナディアがその指揮を執って。私は親衛隊半分を率いてグレントラ基地を訪問します」


 恐らくレイス伯爵はアリア以外の人間とは対談に応じないと思う。アリアが行くしかない。しかしクレイド伯包囲網の作戦も誰かが指揮しなければならない。それは元帥であるナディアしかいないだろう。ナディアはアリアの傍を離れたくなかったが、他に司令官となる人物がいない以上他に方法はない。ナディアもしぶしぶ了承した。


「大丈夫。レイス伯爵は敵じゃない。きっと彼は自分がどう評価されるかそれを計算してのことだと思う」


 ただし……<アインストック>をグレントラ基地の上空真上に移動させる。もし基地に何か敵対行動が見られたらレイトン中佐の判断で容赦なく攻撃するよう命じた。どちらも牽制しあう形となる。その点アリアだって甘くない。


 アリアが訪問の旨を基地に伝えると、レイス伯爵はあっさりそれを受容れた。



 まさか、この後ちょっとした事件が起きるとは、さすがのアリアも予想しえなかった。





『マドリード戦記』 革命賊軍編 18 国境線2でした。


予告していた通り新キャラ、レイス登場です。


ここからしばらく、アリア様とレイス将軍の話になります。

ちょっとこれまでにいないタイプのにんげんですね、レイスは。

彼の面白味?がわかるのは次回になります。


ということで次回思わぬ展開になると思いますのでお楽しみに。


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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