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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 42 王の資格⑦

『マドリード戦記』 王女革命編 42 王の資格⑦


革命終盤戦……。


レミングハルト候が機動戦艦で逃げるとふんだアリアは戦艦破壊をクシャナ大佐に命じる。


クシャナは失った左腕の事を隠し、その作戦に取り掛かる。


一方、別地方で交戦中のザールVSクレイド軍にも、革命の成功は伝えられたが、敵将クレイド伯は不敵な笑みを浮かべ、意味のない戦争をつづけていた。

王の資格 3

ーーーーーーーーーーーーー





 重ねていう。すでに大勢としての革命戦は終わった。



 貴族評議員たちは揃って自殺し、アミルとレミングハルトは国を捨てる。すでにアリア軍の勝利は揺るぎない物となった。




 が……戦闘と政争が終わったわけではない。






 アリア隊がアリアの命を受け王宮3階の無線室を占領し、クシャナ隊に連絡を取ったのは16時42分の事であった。<ナイアザン>のクロード中尉が出た。



「クシャナ大佐への命令なのですが、クシャナ大佐はおられないのですか?」



『……大佐は今別の場所で休まれています』



「ついさっき無線に出られていたではないですか!? アリア様はクシャナ大佐にとの事です。重要命令なのです!」


『分かりました。しばしお待ちを』



 2分後……クシャナが無線に出た。



『なんでしょうか? ええっと……』


「アリア様直営歩兵部隊グレン=ラストニア中尉です。アリア様からの命令です。<グアン・クイム>出動の危険あり。敵は戦艦で逃走を計画、艦を破壊し逃走を阻む事。作戦は大佐に一任……以上です、大佐」


『了解ですわ』



 命令はそれだけでいい。作戦行動に関する事は上級士官の裁量に委ねられている。クシャナは大佐だから特別の指示がないかぎり自由に作戦を立てられる。




「<グアン・クイム>で逃走……か。機動鍵がなくても動かせるという事ですね……そしてレミングハルト候は、今あれに乗るためこちらに移動している……ということなのでしょう」

 クシャナはクロード中尉の<ナイアザン>からゆっくりと降りながら呟く。


 アリアはクシャナが機動鍵を持っている事を知っている。奪取ではなく破壊しろという事は切羽詰っている事態という事なのだろう。

「クロード中尉! <グアン・クイム>を破壊してください」

「しかし鋼鉄製戦艦ですよ! <ナイアザン>クラスの武装では……」

「エンジン部を外部から攻撃して壊すんです。まだ<グアン・クイム>周辺には私兵団の残党が残っています。もしあの戦艦が本当に動くのなら敵兵も戦艦に集まっていくでしょう。敵残党を蹴散らし、<ミカ・ルル>とも連携して砲撃戦で沈めます! 私が指揮を執ります!!」

 そういうとクシャナは中破した<ガノン>のコクピットに戻っていく。それを見てクロード中尉は慌てた。


 クシャナは疲労が酷い上片腕を失っている。<グアン・クイム>の周りはまだアリア軍もほとんど手を出しておらず兵力も残っていて戦闘は避けられない。アーマーもまだ残っている可能性だってある。クシャナの<ガノン>はビーム砲を失い、白兵戦用の長槍しかなくキャノピーは壊れコクピットは剥き出しだ。危険な上にクシャナの体調も心配だ。

 本来なら交代すべき状態なのだが、すでにアリア軍の幹部は各戦線に出て行き代わるに足る幹部はおらず、空挺場の戦闘を把握している者はクシャナ以外おらず中級士官がこれ以上口出しはできない。


 むろん、クシャナが自分の負傷を言わなかったのも一因である。彼女の負傷を知ればアリアはクシャナを退がらせ代わりにナディアかミタスを派遣しただろう。クシャナもそれを知っていたからクロード中尉にも口止めをして前線に立つ事を選んだ。


 彼女はアリア軍屈指の勇将であり好戦的な上級士官で、誰より貴族を恨んでいた。彼女の性格と気性が後退を許さず、彼女を死地へと向かわせる結果となった。






 ここで一度、ザール軍とクレイド軍に触れる。


 王城ハーツティスが陥落……という報が両軍に届いたのは凡そ16時10分前後であると言われている。むろんこの報は事実ではなくやや早い通報であったが、その事はあまり重要ではない。それに事実としては間違いではない。その報は遅くとも夜には事実となるだろう。別働隊である彼らにとってさほど大きな影響にはならない。


「レミングハルト候も随分とあっけない……もう少し踏ん張ってくれるとは思ったが、さすがはアリア様だねぇ~。私がいないって事がこれほど大きいとは……私も罪なことをしたかな?」

 震える声でその報を告げた参謀コマイセンが見たのは、主人クレイド=フォン=マクティナス伯爵の相変わらず軽薄で中身のない嘲笑だった。

「伯爵閣下! もはやこのような場所で戦争ゴッコに興じている場合ではありませんぞ!! これ以上抗戦されるのは如何なものかと」

「ふーん」

「閣下は武人としてアリア軍と正々堂々と勝負を決したいとお考えかと思いますが、王城ハーツティスが陥ちた以上敵の兵力は増強されます! いかに閣下の智謀をもってしてもこれを覆すのは困難かと愚考します」


「アリア軍だけでも1万は有するしね。しかも最新機動兵器を持つ歴戦の最精鋭ばかり。それに王城ハーツティスが落ちればマドリードの国権はアリア様が握るから日和見だった国防軍も敵になるね」


 マドリード国内の現存国防軍は凡そ6万……そのほとんどは国境警備の任にあるが、それでもアリアが王位に就き号令を下せばその内半分は動くであろう。そうなればいかにクレイドが用兵巧者であっても勝てるはずがない。コマイセンはそこまでは口に出さなかったが、表情ははっきりと自軍の敗北を告げていた。


 だがクレイド伯の表情は変わらず、暢気に前方に陣取るザール軍を見ていた。


「もうじきアリア軍から勧告してくるよ。『降伏しろ』ってね。応じなくていいから」


 クレイドも馬鹿ではない。王城ハーツティスが陥落すればクレイド軍の存在価値が消える事は分かっている。しかし元よりレミングハルト候と連携があったわけではなく、クレイドは彼の独断で戦争をしている。王城ハーツティスの陥落も計算の内だ。


「しばらくはこのまま踏ん張っているといい。ま、君たちは心配しなくていい。ちゃんと考えがあるからね」

「閣下! この上戦いを続けても――」

「心配はいらない。防衛陣地を強化しておいれくれ。こっちから攻め込まなくていいし攻めてもこないだろう」


 この報でアリア軍の優勢は決定的となった。敵将がザール伯であることは諜報でわかっている。


 彼もアリアの指示なく単独で戦える将だが、基本スタイルは堅牢な守勢タイプで奇策を用いるには機動兵力が足りず、この王城ハーツティスを知った以上無理をしてくることはないはずだ。今クレイド軍とザール軍の戦力は拮抗している。この上はアリア軍本隊と合流し圧倒的有利になるまで守勢を貫くであろう。それが必勝の策でもある。


 この数日の対陣でクレイドはザールの動きを観察し、彼が良質の将軍であり用兵巧者であることも確認している。血気盛んなだけの猛将タイプでない事がクレイドにとって残念だった。そういう血気と勇敢さだけを持つ戦術重視タイプであればいくらでも翻弄して遊べたが、アリアはそれだけクレイドを警戒したのか総参謀職にあるザールを司令官にしてきた。クレイド伯は自分の手腕が認められている事に自尊心を満足させていた。



 ……さて……心胆凍えさせるのはこれからだよ、アリア様……。



 この時すでにクレイドの陰謀は動き出していた。


 王城ハーツティスの落城などクレイドの中では一つの経過でしかない。とはいえ、この瞬間こそクレイドの待ちに待っていた報でもあった。



 クレイドは戦争をしばらく参謀長コマイセンに任せ、自室に引き上げていった。




 こうしてクレイドの暗躍が始まる……。




『マドリード戦記』 王女革命編 42 王の資格⑦でした。


今回はちょっと一息ついた話となりました。


クシャナはまた戦いに向かいます。これが革命戦終盤の決定的展開に繋がります。


そしてちょっと長くふれられなかったザール軍とクレイド軍の活動……というよりクレイド伯の行動の前振りでした。そう、この軽薄薄情なクレイド伯だけはまだ軍勢を十分率いています。


とはいえ参謀長のコマイセンが言うとおり、もはや絶体絶命なのですが、クレイド伯はまだ何か策をもっているようです。


そう、革命戦とは別の戦いが、今ここに密かに始まっているのです。


クレイド伯はレミングハルト候よりアリア様を買っています。

当然、負ける気も屈する気も、勿論自殺する気もありません。


さてどうなるでしょう!?


ということでこれからの展開を楽しみにして頂ければと思います。


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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