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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 38 王の資格③

『マドリード戦記』 王女革命編 38 王の資格③



盛り上がる革命軍。


そこに冷たい叱責を放ったのは父アミル王だった。


困惑する一同の中


アミルは父として、王として、最後のメッセージをアリアに伝える


 もはやレミングハルトではこの勢いを抑えきれない。



 思わずレミングハルトが後ずさりした時……横にいたアミルがレミングハルトからマイクを奪い取っていた。



「この愚か者め!!」



「…………」



 アミルの一喝が拡声器と無線を通して王城ハーツティス全土に響いた。




 兵士たちの声が、止んだ。



 アミルは一歩前に出ると、アリアを見下ろした。

「この愚か者の親不孝め」

「……お父様……」


 アミル=フォン=マドリードの肉声が国民に届いたのは何年ぶりのことであろうか。しかもその言葉はアリアへの叱責であった。



「マドリード王家に生まれ、王位継承第一位として教育を受けたお前が、軽々しくその地位を棄てるなど口にすべきではない。お前の血も肉も、今そうして乗っているヒュゼインも、全てマドリード王族のものだ。少しばかり奉られて視野を失ったか、アリア」

「…………」

「レミングハルトの弁は正しい。お前はマドリード政府に参加することなくこの戦争を起こした。この私の命を危険に晒し、多くの人間を殺し、扇動し、そして今この王城ハーツティスを破壊しようとしている。それがマドリード王女として相応しいかどうか、他の者に確認する必要もないだろう」


 その言葉に、アリア軍は勿論だが隣にいるレミングハルトのほうが驚きを隠せなかった。アミルがこんな話をするなど予想もしていない。


「このマドリードの権力は全てマドリード国王に帰す。私こそが正統な国王権力者である。だから、国内の全ての問題も全て私の責任である。お前が責任を負うものではない。お前は私とは違うのだ」



「お父様?」





「だからアリアよ。新しい王となって、私を討つがいい」




 そういうと、アミルは微笑んだ。


「行けアリア!! もはや私を助けようと思うな! 自分が正しいと信じる道を行くがよい!! こんな怠惰と強欲で汚れきった私とレミングハルトの権力を討ち破り、この私の屍を乗り越え、国民を束ね、誇りと正義の名の下に堂々と新しい国を築くがよい!! もうお前には恐れるものなどないはずだ!!」

「黙れアミル!」

 レミングハルトは拳を振り上げアミルを制止させようとした。だがアミルはその腕を振り払いバルコニーに先端に立つと、無線機のマイクを握り締め叫んだ。



「軍よ!! 容赦なくこの愚王に刃を向けよ! 国民よ! 我がアミルと評議会に失望せよ!! 最早我らは害毒でしかない!! だがそれも今日までだ! この国は生まれ変わる!! アリアによって!!」



 声は拡声器を通じ王城ハーツティス全域……そして周辺シーマの街中にも聞こえている。


 レミングハルトは渾身の力でアミルにしがみつき引き倒そうとした。だが軟禁され薬物に犯されたアミルのどこにこんな力があったのか、まるで鉄の支柱でもあるかのように動かない。



「我が死は必然! だからお前が苦にする必要あらず!! 全て私の自業自得!! 軍よ! 我を棄てアリアだけを奉じよ!! 行くのだアリア!! 正義の道を!! 王の道を!! お前はただの王女にあらず! クリト・エの宝であり真の英雄なのだ!! アリア、私――」

「黙れと言っているだろう!!」

 レミングハルトは叫びながら懐から小型拳銃を取り出し、アミルの背中に向け引き金を引いた。



 銃声が、鳴った。




 そして、アミルはその場に倒れた……。





「お父様ぁっ!!!」

 アリアは絶叫した。

 この瞬間、定められた休戦は終了した。

 アリアはすぐにヒュゼイン白機のコクピットに飛び込むと、ヒュゼインの右腕に内蔵してあるビーム粒子砲の銃口をレミングハルトに向け、引き金を引いた。ビームは容赦なくバルコニーを襲う。しかし激情したアリアの照準は乱れ、レミングハルトを捉える事ができなかった。レミングハルトはいち早く護衛と共に王宮の奥に消え、さらに護衛たちは撃たれたアミルを連れ逃げていく。


 アリアはすぐにその場からヒュゼイン白機を跳躍させようとした。だが20m前にいた<ローゼンス>がヒュゼイン白機の足を掴み、その跳躍を阻んだ。



「邪魔をするな!!」

 アリアは空中で旋回すると、容赦なく全砲門が開き一瞬にして<ローゼンス>を撃破した。爆発と同時にアリアのヒュゼイン白機は再跳躍しバルコニーの上に降り立った。しかしすでにレミングハルトやアミル、護衛たちの姿は見えない。



「俺が行く!!」



 ミタスはそういうと愛用の戦斧槍を抱えヒュゼイン白機のコクピットから飛び出した。


 ミタスがバルコニーに降り立つと同時に置くからレミングハルトの私兵団、30人ほどが姿を現した。それらはレミングハルトの身辺を固める精鋭たちであったが所詮は歩兵だ。アリアは躊躇することなく砲撃を歩兵団に加え瞬く間に半数を戦闘不能にした。そして陣形が崩れたところにミタスが殴りこんだ。


 体勢が崩れたところの奇襲である。そして白兵戦闘力随一のミタスの突撃だ。勝負にならない。ミタスは戦斧槍を小枝のように扱い、一閃で確実に一人を仕留めていく。


「一人は生かして捕えてください!! レミングハルト侯の行き先を聞きます!!」

「了解だ」

 バルコニーの戦いはミタスに任せていい。アリアはヒュゼイン白機を反転させると、居並ぶ自軍のほうを向き立ち上がり叫んだ。

「全軍!! 卑劣なレミングハルト侯は対談中にもかかわらず父アミルを撃ち、逃げた! この瞬間対談は終わった。だけではなくレミングハルト侯は神聖にして厳粛な休戦対談の儀式を汚した!! もはや遠慮はいらない!! 全軍一大攻勢に出よ!!」


 アリアの言葉は上空の<ミカ・ルル>を通して王城ハーツティス全土に届いている。アリアの号令に兵は沸き、歓呼を上げ、一斉に武器を取った。


 一方、貴族評議軍の戦意は見て分かるほど落ち込み、混乱していた。応じたくとも彼らの将であるレミングハルトは何も宣言せず逃げてしまったのだ。そんな貴族評議会軍に対し、アリアはトドメの号令を加えた。



「レミングハルト侯は卑劣にも父アミルを撃ち、連れ去った!! 娘である私の前で父を撃ったのだ!! もはやこの世で生き永らえさせる理由はどこにもない!! 卑劣で卑怯な貴族評議会軍はこの地に一兵も残さず滅ぼす!!」


 その言葉に、貴族評議軍全てが萎縮した。先程までのやりとりは見えずとも全て聞こえていた。非はレミングハルトにあることは明白だし、目の前で父親を撃たれたアリアの怒りが理解できない者は一人もいない。この上アリアに歯向かう勇気など、出ようはずがない。



「生死は自分で決めろ!! 降伏か死かだ!! 正義も道理もなき愚か者は死ね!!」



 それだけいうとアリアは無線を切った。降伏の一言を入れるあたりアリアも配慮をしている。そして今この状況でアリアの言葉がいかに厳しい最後通牒となるかは馬鹿でも分かる。アリアが敵に対し敬意を表さず感情露に面罵したのもこれが最初で最後の事だ。


 アリアの怒りに満ちた最後通牒は驚くほど効果を生んだ。多くの戦場で貴族評議軍兵士たちは武器を棄て投降し始めた。投降しなかった兵士たちも戦意は低く、もはや集団での作戦などできず、破れかぶれになり逃げ始めた。



 この時降伏した兵力は約5割、残り4割は逃走し、僅か1割が抗戦を続ける……そのような戦況になった。革命戦としては、アリア軍の勝利は確実となった。



 しかしこの戦いは会戦ではなく革命戦である。



 軍としての勝利では戦いは終わらない。



 政治で全ての決着がつくまで、終わりにはならない……。



 


『マドリード戦記』 王女革命編 38 王の資格③でした。



アミル王、ここに倒れる!


今回も革命戦の山場の一つでした。


なんだかんだあったアミル王ですが、彼は彼なりの聡明さがあったわけですね。


アリア様が天才であることは揺るがないことです。その存在が奇跡といっていいほど突然生まれた天才です。ですが、やはりその下地として、両親はそこそこ聡明な人物ではあったということです。


その父を敵として戦わなければならない……これはアリア様にとっては内心かなりの苦痛でした。アリア様は人一倍感受性豊かで優しい王女です。でもそれ以上に正義と才能が彼女をただの王女ではなく英雄として存在するしかない道を選ばせる結果になりました。


ということで、これで再び革命戦は続きます。


もっとも、もはや勝敗はほぼ決したも同然……



ですが、アリア様の苦難の革命伝説はまだ続きます。


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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