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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 33 城内の戦い④

『マドリード戦記』 王女革命編 33 城内の戦い④


アリア軍の快進撃続く!


ついに南門を陥落させたアリア軍。


アリア率いる本隊も王城中央門に迫る。


アリアは強固にして巨大な閉ざされた正城門の攻略に入った。


 午後14時を過ぎた。


 正城門の戦いは、ついにアリア軍に帰した。


 そしてようやくシュナイゼン大佐は王城ハーツティス内に足を踏み入れた。


 シュナイゼン隊は門周辺のほか、周囲の内苑城壁も制圧下に置いた。

 シュナイゼンは歩兵部隊に対しては一時進攻を停止させた。受け持つ歩兵部隊は未だ気力を充実させ戦闘意欲は高かったが、すでに2日連続の戦いだ。疲労感は確実にあるし、これからの戦いに間違いが起きてはならない。これからは城内に攻め込むことになる。当然多くの貴族たちとも対する事になるだろうし、王宮という神聖な場所に足を踏み入れる事になる。戦意高い兵士たちが勢い余って不当な行いを巻き起こすかもしれない。アリア軍は統制がとれているとはいえ、国防軍を除いたアリア軍主力は貴族たちに虐げられてきた庶民、奴隷、アダの出身者が多い。歴史的にもそういう暴力行為は攻城戦では幾多も繰り返されてきた。身分差別を受けた者が勝利者の立場をもって復讐の炎を宿らせ報復行為に出ないとは言い切れない。その点、元治安維持担当のシュナイゼンに歩兵部隊の主力を任されたアリアの人選は妙手といえるだろう。


 僅かだが進攻を停止させることで各部隊の高まりすぎた熱を冷ますことにし、歩兵部隊を一旦整理する一方、アーマー部隊には進軍を命じた。3機を残し、残り8機はアリア本隊に合流すべく命じた。その分隊長は彼の副官であり幼馴染のミネルバを任命した。



「いいの? 私が行っても」

「副官の代わりはいる。問題ない」

「いや、そうじゃなくて」

 ミネルバは溜息をつきながら<アージェンス改>のコクピットから上半身を出した。

「アーマーを率いるのなら、アンタのほうがいいんじゃない? アーマーの戦闘力からいえばアンタのほうが戦力大きいわよ?」

 シュナイゼンは指揮官として優れた手腕を発揮しているが、国防軍の隊長として教育と訓練を受け、当然指揮官用アーマーを乗る事が出来る。いや、出来るどころか、その操縦の腕は卓越で、アリア軍の中でも五指に入るだろう。アーマーを得意としているミネルバより上なのだ。もっともその事はシュナイゼン本人が多く語らないからミネルバ他数人の部下しか知らない。


 シュナイゼンもアーマー部隊の重要さはよく分かっている。しかし決断は変わらなかった。ここに残るアリア軍の歩兵部隊の数は多く、さらに比較的近い南門が陥落すれば、シュナイゼンの指揮下に入る歩兵は6000近い。これだけの大兵力を率いて作戦を行える器は、三人の将官が別戦線にいる以上<大佐>の階級を得ているシュナイゼンしかいない。


 功名や武功を欲するならばアーマー部隊を率いるべきだった。だがシュナイゼンは全体の戦略が分かる男であった。


「行け。アリア様もしくはナディア少将に合流し指示を受けろ。第三軍はシュナイゼンが責任を持って預かります、と伝えてくれ」

「…………」

 それだけいうとシュナイゼンはミネルバの<アージェンス改>から離れていった。

 ミネルバは何か言おうとして……そして言葉を飲み込みコクピットに戻っていった。



 ……アミル王とアリア様が対峙する場に居合わせたくはない、という事かしら……。



 勿論それは些細な理由の一つで、主な理由は第三軍掌握にある。しかしミネルバは幼馴染として、国防軍の部下として、シュナイゼンの心境の欠片を悟った。








 午後14時20分頃には、ミネルバのアーマー部隊はアリアの主力部隊に合流した。


 すでにナディアの分隊9機も防衛隊を突破し合流を果たしていた。


 激戦で2機の<ガノン>を失っていたが、アリアが直接率いるアーマーは総数35機となり、その破壊力は他を完全に圧倒する。しかも内9機は貴族評議軍が持つオリジナル・アーマー<アージェンス>より高性能な<ナイアザン>である。これに指揮官用<アージェンス改>が二機、アリアのヒュゼイン白機があるのだ。


 アリアは配下が<ガノン>だけの時は自身が突出し砲戦を展開していたが、ナディア分隊、ミネルバ分隊が加わると戦略を変えた。

 アリアは一度後退し、オリジナル・アーマーの<ナイアザン>とミネルバ隊にあった<アージェンス改>、合計11機を前面に押し出し列にして一斉砲撃戦を展開した。


 これまでアリアのヒュゼイン白機一機だけを狙っていた防衛部隊は、突然<面>となって攻撃してきたアリア軍に手も足も出ず、瞬く間に壊乱した。その砲撃力も、一気に何倍にもなった上、砲門の数も増え照準する人も増え正確な射撃も増えた。


 防衛隊が沈黙するまで5分とかからなかった。


 次にアリアは歩兵部隊に内苑正門の破壊を命じた。


 鉄とレンガで美しくかつ強固に作られた観音開きの荘厳な内苑正門は、これだけの砲撃を受けながら完全に破壊されていなかった。そこは歴史と苦労が積み重なり築かれた荘厳かつ頑丈な内苑正門である。簡単に壊れては建国の英雄クエス=フォン=マドリードが嘆くだろう。


 アリアはその英雄の直系の末裔なのだが、一欠けらの感傷もなかった。


 予め破壊工作用装備を持った歩兵……この場合工兵だろう……工兵たちは爆薬の入った金属の筒を持ち門に向かい爆破して破壊しようとしたが、これは失敗した。アーマーのビームによる砲撃戦によってエルマ粒子の濃度は高く全て不発に終わった。想定以上にエルマ粒子は充満しているようだ。


「でも、これなら銃も火砲も怖くない」

 その点アリアは安堵した。城内白兵戦に移行したとき敵に銃があれば抵抗も激しく被害は大きくなる。しかし銃が使えなければ白兵戦で抵抗するしかない。アリア軍はアーマー重視で銃隊はほとんどなく格闘戦の訓練を積んで来たから白兵戦だけというほうが有利なのだ。


「しかし門が壊せないと中に入れんだろう姫さん」とミタスが言う。

「アーマーで破壊します」

「鉄の大門だぜ?」


 内苑正門は高さ12m、幅18mにもなる大門で開閉は機械仕掛けである。工兵を突入させて工作する手もあるが恐らく門の開閉装置は壊されているだろう。罠も仕掛けられているに違いなく、寡少な工兵だけに任せていては時間と被害がかかってしまう。


 アリアは決断した。


「ヒュゼインで強行突破します! すみませんが降りてください。危険ですから!」

「何言ってやがる。姫さんが死ねばこの革命軍自体が崩壊するんだぜ? 無鉄砲を止めるのも俺の仕事だ」

「無鉄砲……にはならないと思います。多分!」

 ミタスは降りる気はないらしい。アリアは言い合いする無駄を悟り黙ると、無線を掴み全軍に命令を下した。



 アリアのヒュゼイン白機が前に出た。



「全砲門!! 正門に集中砲撃!! 10秒!!」

 その命令によって、全アーマーの砲撃が正門ただ一つに集中した。それは横殴りのビームの雨だった。

 小ビームの雨は、重なり合い巨大なビーム粒子の塊になって直撃した。

 ミタスはアリアの意図に気が付いた。


「溶かすつもりか!?」


 分厚い鉄門は超高温のビームの一大集中を受け、真っ赤に変色していく。勿論エネルギーも凄まじい。本来外側にしか開かない鉄門が、内向きに歪み始めた。


 アリアはギアを最高速にセットし、思い切り加速ブースターのペダルを踏み込んだ。


 ビームの弾幕が途絶えるのとアリアのヒュゼイン白機が突進したのは同時だった。


 アリアは前面にビームシールドを最大に展開させ、同時に胸に埋め込まれた大口径ビーム粒子砲が巨大なビームを放った。


 ヒュゼイン白機による、シールドチャージによる強行突破だ。


 もし門が破れなければ、アリアのヒュゼイン白機は逆に激突の衝撃で自分自身の加速エネルギーによって砕け散ってしまうだろう。



 そして、ついにアリアは激突した。


 その場にいた全員が思わず息を呑んだ。


 ヒュゼイン白機の機体が激しく揺れている。


 鉄門にビームシールドが接触し、肉眼でもはっきりと分かるような巨大なビームの傘が出現した。そして尚も加速するヒュゼイン白機はそのエネルギーによって空に浮かび上がっていた。ビームバリアーを用いた『押し合い』だ。


 鉄門が、真っ赤に熱されながら大きく歪んでいく。


「砕けろぉぉぉっっ!!!」


 アリアは絶叫と共に、床が抜けんばかりに力一杯加速ブースターを踏み込んだ。

 ヒュゼイン白機の各部からオーバーロードによるスパークが起きる。


 が……。



「!?」



 今度は全員が目を見張った。



 これまで拮抗し、動きの止まっていた鉄門とヒュゼイン白機が動き始めたのだ。


「門が……壊れ始めた!!」

 ミネルバはそれを見て叫んだ。門は徐々に内に向かって押されていく。と同時に、門に加わったエネルギーに耐え切れなくなったのだろう、門周囲の城壁に巨大な亀裂が幾筋も発生し広がっていく。門だけではなくそれを支えているコントリートや煉瓦でできた城壁のほうが限界に達していた。


「オリジナル・アーマー各機!! 城壁を砲撃! アリア様に当てるなよ!!」


 ミネルバの命令にすぐさま<アージェンス改>と<ナイアザン>は砲火を城壁に加えた。アリア軍でオリジナル・アーマーを任されているものは指揮官の他アーマー操縦巧みな者が選ばれている。すぐに移動しながら城壁にビームを加え始めた。


 ついに、鉄門とその周囲の防御力が限界を超えた。


「おおおーーーっ!!」


 轟音と共に鉄門は内に向かって弾け飛び、大爆発を起こした。爆発と共に周囲の城壁は両脇50mほどに渡って一気に崩壊していく。


 凄まじい粉塵と瓦礫が周囲に降り注いでいく。アーマーはいいが歩兵は溜まった物ではない。すぐに<ガノン>の部隊が歩兵部隊の前に集まり盾となった。しかしそのエネルギーの余波は圧倒的に内側に向き、砕けた城壁や瓦礫は内側の王宮に降り注ぎ瞬く間に破壊していく。



「アリア様は!?」



 ミネルバは叫ぶ。だがアリアのヒュゼイン白機は爆発と共に姿を消した。凄まじい粉塵と黒煙で先がまるで見えない。


 ミネルバはすぐにアーマー部隊を王宮内に向かわせアリアを探させた。






「……生きている……ようだな」

 ミタスが目を開ける。4つあるモニターの内、予備モニター二つは死んでいた。だがメインモニターは生きていて、そこからは物凄いスピードで動く空が見えた。


 コクピットでは、アリアが荒い息を吐きながら激しく手を動かしていた。


「着地します!! ミタスさん、頭を抱えて防御してください!!」

 そう叫ぶと同時に、今度は激しい振動と衝撃がミタスを襲った。その衝撃の大きさに、席に座っていたアリアが危うく転がりかけたくらいだ。


 それでもアリアはなんとか制御し、操作しながら減速していった。


 コクピット内にスパークが走り、モニターがもう一つ消えコクピット内が真っ暗になった。しかし機体は止まった。



 闇がしばらく……アリアはどこかを操作すると、コクピット内に光が差し込み、そして明るくなった。



 ミタスは新鮮な空気を感じ、体を起こした。


 ヒュゼインはコクピットのキャノピーを開いたのだ。



「……メインモニターが死んだので……これからは……目視……です……」



 アリアは肩で息をしながら何事もないようにそう言った。まだしばらく彼女の呼吸は落ち着きそうにない。ミタスは起き上がるとコクピットから上半身を出し、後ろを見た。


「……なんと……」

 ミタスは絶句した。ここはどうやら庭園のようだが、内苑正門から距離にして300mは進んでいる。それより驚いたのは凄まじい量の瓦礫で、見れば2mほどもある大きなコンクリート片もごろごろしていて尋常な様子ではない。爆発によって降り注ぐ瓦礫の中最高速まで加速したヒュゼイン白機を減速させながら回避してきたかと思うと凄まじい運動力と反応、信じられないほど高度な操縦だ。ミタスの背は冷たい汗が流れた。アリアの突撃によって正門は100mにも渡り完全に倒壊していた。アリアの疲労は当然だ。


 今も城壁部は連鎖崩壊を続けていて味方がすぐに辿り着けそうにない。


 見渡す限り敵部隊も見えない。しかし抗戦の音や気配はある。これだけ派手に侵入したのだ。当然防衛兵も集まってくるだろう。


「大丈夫か? 姫さん」

「私は大丈夫です。随分無理をしたから……すみません、荒い操縦で」そういうとアリアはようやく顔を上げた。「ビームシールドが駄目になりました。後は左肩の装甲が飛んでいったみたいです。駆動系は……動きますね。多分ビーム砲も生きています」

「モニターが死んだのはいいのか?」

「オーバーロードによる荷重だと思います。これからはこのままキャノピーを開けて戦う事になります」

「屋根なしか。ま、俺はこっちのほうが窮屈でなくて楽だが」

「まだ乗っていくんですか!? 危ないですよ!? もう銃弾も矢も防いでくれません!」

「それは姫さんも同じだ」とミタスは苦笑した。笑われて初めてアリアも自分の発言の滑稽さに気付き苦笑した。


「でも銃はもう心配いりません。あれだけビーム粒子を集中させたんです。エルマ粒子の空中濃度はかなりの量だと思います」


 突破前の段階ですでに爆破できないくらいの濃度があった。今ではもっと散布が広がり城内隈なく広がっているだろう。


「王宮も政庁も、すぐ目の前ですよ」


 アリアはそういうとミタスと同じように立ち上がり、後ろに建つ10階建ての大きなビルを見上げた。ここがマドリード王国の政治の中心である政庁で、その東側に白亜の宮殿作りの王宮があった。



 ついにアリア直属部隊も内苑部への進攻を果たした。



『マドリード戦記』 王女革命編 33 城内の戦い④でした。


ということでアリア様もようやく王城内部に侵入です。


ちなみに図らずもアリア様の突破方法もビームバリアによるシールドチャージだったわけですが、それは二人の乗るヒュゼインという機体は、特に優れたビームシールドを持っているという特性からです。このクリト・エ大陸にはヒュゼインに勝るビームシールド保有機はないので、同じような戦法になったというわけです。もっともシールドチャージをここまで攻撃的に使う発想はナディアが最初に思いつき取り入れられた戦法で、その後もナディアはこの戦い方を多用していきます。


シュナイゼンは英雄豪傑系ではないけど、優秀秀才系の将軍です。結構若いんですけど、落ち着きぶりは老成してますね。よく考えるとシュナイゼンはまともな戦争はこれが初陣な気がします。それにしてはホント落ち着いてるなぁ……(笑



こうしてアリア様も中央に進出しましたが、ヒュゼインは半壊したしほとんど孤軍。まだ敵評議会軍は半分は残っています。戦争はまだまだ続きます。


ということで、「マドリード戦記」をこれからも宜しくお願いします。

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