『マドリード戦記』 王女革命編 29 革命⑦
『マドリード戦記』 王女革命編 29 革命⑦
ついに城内に突入アリア。
激戦の中、アリアの乗るアーマー、ヒュゼイン白機が爆走、敵陣を突破する。
そしてナディア舞台もついに突入したが……
ナディアの目前に、新型の謎のアーマーが姿を現した!
今回挿絵でヴァームとユニティアをアップしました。
シュナイゼンが整理し空白となった正城門前に、ものすごいスピードで加速するヒュゼインが現れたのは13時11分の事であった。後続の<ガノン>部隊を約100mも引き剥がした独走だ。
そして、上空には仮装戦艦<ミカ・ルル>が迫っている。
ヒュゼインが見えた瞬間、シュナイゼンは全軍にその場に伏せるよう命令を下した。
王城側がヒュゼインを視認したのは早かったが、迎撃用のアーマー<アージェンス>が駆けつけたときは、もう門前に迫っていた。門は先に破壊されたが、王城側はその前に土塁を築き防衛陣地を作り上げている。
王城側は火砲、投石器、巨大ボウガンなどで迎撃を始めた。が、その抵抗は一瞬のことだった。
「落ちろっ!!」
ヒュゼインの大型粒子砲2門、小戦闘用6門が一斉に火を噴いた。
最初の一撃で、正城門前にあった土塁は砕け散った。
ヒュゼイン、猛撃しなから驀進する。ヒュゼインは速度を落すことなくビームの連射を続け瞬く間に王城の攻撃陣地を沈黙させていく。これほどビーム砲を効果的に連射できるなんて、誰も思っていなかった。圧倒的な破壊力と、命中率であった。
王城側はまるで手も足も出ず、アリアのヒュゼインは城内に侵入した。単独突入である。
「オリジナル・アーマーが一機突入されたとて何事がある!」
王城側の指揮官は皆そう思った。アリアのヒュゼインは功を焦る余り単独突入した。後続が続かないかぎり脅威とはいえまい。アリアは城門前を完全破壊したわけではなく自分が突破するに邪魔な場所を破壊しただけで大勢までは変えていない。
が……そう思った王城側……貴族評議軍は甘かった。
アリアが駆け抜けた直後、上空から迫った<ミカ・ルル>の主砲が王城をほとんど無差別に空爆し破壊していった。その破壊力は絶大だった。アリアは<ミカ・ルル>指揮官コーサス大尉に「狙おうとせず地上物を全て破壊する勢いで攻撃を」と命じていたため<ミカ・ルル>は狙うことなくただ一方的な砲撃を王城ハーツティス外苑部に加え、その破壊の牙を余すことなく発揮させた。
そして艦砲射撃によりほとんど瓦礫となり抵抗力が消えた後を、後続の<ガノン>のアーマー部隊40機が侵入していった。
ヒュゼインの突撃から<ガノン>の突入まで、5分と経っていない。
そして、<ガノン>部隊が過ぎ去った後、この間伏せていたシュナイゼンが立ち上がり、全軍進攻の命令を下した。
トドーレス大尉率いる歩兵部隊はシュナイゼン部隊の勇戦を見て混乱を避けるため正城門ではなく、兵力の半分はそこから比較的近い南門に攻撃対象を変えた。こちらはすでにカルレント少佐率いる第一軍分隊が接触し交戦が始まっていたが、兵力差が大きくカルレント隊は無茶することなく助行として攻撃を出している程度で膠着状態であった。そこに兵力2000が加わり、それらはカルレント少佐指揮下となった。そこにアリア部隊直営の20機がアリア隊から別れ外苑部制圧のため周囲に散っていった。
南門も力押しでは攻略しない。
今しがたアリアに続いて入っていった<ガノン>部隊の半分が南門攻略部隊として内部から襲撃し、挟撃によって南門を破壊し、そこに陣取る敵兵を駆逐する作戦になっている。アリアは必勝の策として挟撃作戦を取ることが多いのは彼女の作戦癖といえるかもしれない。しかし効果は非常に大きく自軍の被害は少ない。
そして、オリジナル・アーマーの中でも屈指の性能を誇るヒュゼインを誰も止めることはできなかった。圧倒的な性能差と突破力に加え、貴族評議軍の目にはアリア・ヒュゼイン機の後ろを追う<ガノン>20機が視野にある。その両方の脅威のため、防衛の主眼が定まらず後手に回ってしまっている。
アリアは自分自身の作戦目標は突破のみに定め、他の事は考えていなかった。もはやここに至った以上アリアは戦略家である事を捨て、ただの一パイロットになった。制圧作戦や各戦線の事は信頼する幹部指揮官たちの手に委ねきった。
作戦は今のところほぼアリアの予定通りに進んでいる。
が、アリアは敵の出方に不安を覚えた。
敵の反撃が弱すぎる。そして敵の歩兵の数が少なすぎる。クシャナの諜報で、貴族評議軍は1万ちょっといるはずだ。門前の兵の数は2000ほど、南門のほうも多くて3000。今相手にしている城内兵もざっと1000といったところで、まだ僅か半分である。アリアの計算では、少なくとも敵の8割はアーマーで撃退しないと王城パーツティスを今日のうちに完全制圧できない。
「すごいな、アーマーって奴は」
「ミタスさん!? 寝てたんじゃないんですか!?」
突然声をかけられたアリアは少し驚いた様子……半分くらいはミタスの存在を忘れていた。それだけ戦闘に集中していた。
ミタスはそんな様子のアリアを見て苦笑する。
「狭くないですか? 今は降ろせませんから我慢してもらうしかありませんけど!」
アーマーのパイロットというのは作戦を指示する指揮官と違う。アリアもいつもより昂揚し、忙しい。体力も精神力も使う。僅かにだが、声が荒かった。
「邪魔なら黙るよ」
「いいですよ! 何ですか?」
答えながら、アリアは前方に現れた20人くらいの小部隊を搭載砲で蹴散らす。直後にキンキンキンと何か金属の爆ぜる音が聞こえた。
「何の音だ、これは」
「敵歩兵の銃や矢です。大丈夫、こんなのいくら当たってもヒュゼインに傷はつきません」
……さっきからやたらと煩かったのはこの音だったか。しかしだとすればほとんど敵陣真っ只中じゃないか……と、ミタスは感心した。
対人用の飛び道具は避けるまでもない。アーマーの装甲で全て弾かれる。用心しなければならないのは対アーマー戦用の長槍や大型ボウガン、大砲、移動用粒子砲台の類で、それらは目に入り次第片っ端から搭載砲で沈めている。アリアは先頭を進むから敵の攻撃も集中する。敵にしたってヒュゼインを見れば無関心ではいられない。何せ間違いなくアリアが乗っているのだ。このヒュゼインを撃墜するだけで戦争は終わる。歩兵もアーマーに対して全くの無力ではない。飛び道具ではどうにもならないが、対アーマー用の長槍を持ち懐に入り足の関節などを突き刺せばアーマーを破壊できるのだ。そうさせないためには、敵の中でも留まることなく動き続けなければならず、砲撃だけでなく時に近接武器(爪や手持ち槍など色々あるが)で近づく歩兵を蹴散らさなければならない。アーマーの戦闘力は比類なく大きいが、使いこなすには余程の才能と能力が必要だ。
「誰もがこんな働きができるわけじゃないんだな」
1機で軍全体を翻弄するような働きができるような操縦の腕は他の仲間にはいない。
「ナディアと私だけです」
ヒュゼインありきではなく、純粋に腕としてその域にあるのは本当にアリアとナディアしかいない……そのくらい一線を超えたアーマーの操縦は難しい。
「俺では到底出来そうにないな」とミタスは苦笑する。今だってアリアは両手両足休むことなく動いている。よくもこんなに複雑な動きができるものだと感心してしまう。
「ナディアは……私より凄いです。もっと……化物ですよ」
そう言って珍しくアリアが自嘲の笑みを浮かべた時……はるか前方で、大きな爆発が起こった。
この爆発こそ、<幻の森>を抜け西門から突入したナディア部隊の最初の砲戦であった。
貴族評議軍にとって西門からアリア軍が進攻してくることは予想されていた。8年前アリアは西門から姿を消し、一年前ここからクラリエス王妃が奪還された。そして唯一ここだけが城壁がなく直接王城ハーツティス中央の王宮や政庁に通じている。しかし広大な<迷いの森>があり、道は狭く天然の要害だ。だがその代わり強固な守備兵を森に配置することはできない。
ナディアは、3機一隊として、それぞれ森の中を進ませ、最終的に西門前に集合させるプランを取った。
西門は王城ハーツティスでもっとも古く歴史があり、そしてもっとも小さい門だった。
ナディアが率いる部隊だけあって隠密行動には優れていた。ナディアが特に選んだ最精鋭15人だ。アーマーがなくても十分戦闘力はあり全員士官で構成されている。彼ら(ナディア以外は皆男性兵士なので)は時にアーマーを降り、森の中に点在してあった見張り場や小部隊を静かに排除しほとんど気取られる事なく西門に辿り着いた。
そして13時10分、ナディアは全部隊に突撃を命じ城内に踊り込んだ。
警備兵はアーマー1機、歩兵200、守備兵300と寡少で簡単な防衛陣地しかなかった。ナディア部隊はそれらを火砲でもってあっという間に沈黙させた。
「ぶっ壊れろっ!!」
ナディアのヒュゼイン紅機の荷電粒子砲が防衛陣地と城門を問答無用でなぎ倒していく。城門は木っ端微塵となり防衛陣地は爆発炎上した。置いてあった火薬式火砲の弾薬に引火しての爆発だ。アリアが見た爆発はこれだった。
こうして城内に入ったナディア隊はナディア機を先頭に城内を進む。単騎突入しているアリアと合流するためだ。ルートは先日潜入した時すでに十分調べてある。
……あれが動き出さなきゃ、このまま合流でいいんだけど……。
ナディアはヒュゼイン紅機を進ませながら、南に広がる王宮の奥を見た。
王宮と奥宮の間にある庭園や離宮のある王城ハーツティスの南の奥……そこは広くなだらかな丘になっていて、そこには二隻の飛行戦艦が停泊している。動き出さないのはアリア軍が完全に制空権を握り、飛び出たとしてもすぐ撃墜されるからだ。
しかし地上戦の援護はできる。
城内に進攻を許した時、飛行戦艦は移動基地として活躍することができる。歩兵がどれだけいるかは問題ではない。ただしアーマーがいれば話は別だ。あの飛行戦艦だけは警備が厳しくナディアもクシャナも調べる事ができなかった。この飛行戦艦だけがアリア軍にとって最大の不安要素であった。
予想通り、飛行戦艦は動き出した。この動きはナディア部隊だけが視認できる。
飛行戦艦二隻は、動き出した。一隻はナディア部隊のほうに。もう一隻は城中央に向かって動き出した。
「2小隊はあたしに続いて! 3小隊は向かってくる飛行戦艦を撃墜!!」
ナディアは部隊を半分に分けた。これは当初からの予定通りだ。
だが、敵戦艦から飛び出たアーマー部隊を見たナディアは、先の命令を取り消し、一度止まった。
「何、あれ……アーマー?」
丁度向かってくる飛行戦艦……<スサノーテ>から放たれた、見たことのないアーマーが、ゆっくりと迫ってくる。
全長10mくらいだろうか……大型アーマーだ。これまで見たことがないタイプでオリジナル・アーマーだ。だが問題なのはその事ではない。そのアーマーは低空ではあるが常に浮いているという点だ。そして巨大な砲門と無数の小口径砲門が見える。
「何あのアーマー! あんなの見たことないけど」
この飛行アーマーこそ、誰にも語っていないレミングハルトの隠し手であった。
バルド王国国宝機<ステンベルク>である。
ナディアはすぐに一決した。
「先の命令取り消し! 2小隊、あたしと一緒に来て空挺場の制圧! あたしはあの謎の敵アーマーを墜とす! 3小隊は当初の予定通りアリア様と合流して!!」
そう命じると、ナディアはヒュゼイン紅機の機首を曲げ飛行している敵アーマー<ステンベルク>に向かって進む。その後を6機の<ナイアザン>が続いた。
しかし新型の登場は全く予想にない。こちらも新型の<ナイアザン>をもっているがこちらは所詮オリジナル・アーマーの中では量産機……特別機との性能差は歴然だ。ナディアのヒュゼイン紅機以外、まともに当たれるものではないだろう。
そして……この時もう一つの衝撃と激戦が発生していた。
クシャナの戦いである。
『マドリード戦記』 王女革命編 29 革命⑦でした。
ついにアリア、そしてナディアが戦線突入です!
そして姿を現した敵のオリジナルアーマー!
圧倒的兵力の中突入するアリアははたしてどこまでいけるか!
革命戦本格突入です。
そして潜入していたクシャナたちがついに次回武力蜂起します。
これでアリア軍は王城を全方位から襲い掛かることになります。
激動の革命戦、これからが本番です。
そして今更ながらヴァームとユニティアのラフを公開しました。
ヴァームさんはこんなカンジで、それでいて長身で美声です。
ユニティアの場合ラフをあげたかったというより、彼女が着ている<マドリード軍尉官>の軍服の紹介がメインです。彼女の服は<大尉>です。前回のクシャナは<佐官・少佐>の服です。
<佐官>以上の場合、男女のデザインは同じですが男性用は下に来ている軍服の色はもう少し濃い赤です。女性用がイラストの具合です。襟のところに銀のボタンがついていて、一つが少佐、三つが大佐です。将官用、アリア用はまたちょっとデザインが違います。
ということで今後また男性キャラのラフで軍服の紹介をしたいと思います。
これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。




