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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 27 革命⑤

『マドリード戦記』 王女革命編 27 革命⑤


前衛部隊であったミタス、シュナイゼンの両隊がついに王城に迫る。


迎え撃つのは暴虐の将軍バロウズ伯。


この傍若無人な敵将をまえに、ミタスは白兵戦の精鋭を率い直接激突する……!



 すでにシーマは王城ハーツティスとその周辺を残し、ほぼアリアの制圧下となっている。もっともアリア軍は完全に首都を占領したわけではなく重要拠点と敵戦力周辺を部分的に押さえたに過ぎない。貴族評議軍に対してはそれで十分だが民衆に対してはやや不安もあった。手を打ちたかったが、幹部のほぼ全員各戦線に散らばり作戦執行中で動かせない。


 後方担当として街の保護を命じられたのはシュラゼン少佐で、歩兵1500を指揮しアリア軍の背後を守った。


 そこでアリアは、ザールが手配した飛行船団に対し、シーマの上空ギリギリを遊弋するよう命じた。


これらはほとんど戦闘力はないが、そのことはアリア軍しかしらない。飛行船を見て国民は安心し貴族評議軍には威圧を与えることが出来る。そして戦闘力はなくても監視の目として全体の動きを集めることが出来る。アリアは本陣にいながら都市全体の動きを知ることが出来た。そしてそれ以上の戦略的理由は都市全体にエルマ粒子を振り撒くことだ。これにより火砲の脅威は減る。


 午前9時すぎ……前線ではついにエルマ粒子によって火砲が使えなくなり始めた。これがアリア軍の攻勢の始まりとなった。



 アリア軍前線の司令官はミタスとシュナイゼンである。


 両者、戦いの中一度直接合流した。


 分かっている事は、アリアの本軍がすぐ近くまで進んできているという事、そして現在目前にある敵を制圧し急ぎ王城内に攻め込まなければ潜入しているクシャナたちが窮地に陥り、迂回してくるナディアのアーマー部隊が孤軍となり攻城攻略作戦に支障が出る事だ。そのためには王城外で分散し篭城抗戦しているパロウズ伯の部隊約1500が邪魔であった。


 これまでの戦いと違い市街戦で白兵戦がメインとなる。アリア軍がこれまでの戦場で優位に立つアーマーによる電撃作戦が主力となりづらい。白兵戦兵力は両軍それほど大差はない。もっとも勢いは圧倒的にアリア軍が高い。


 とはいえ、突破力も破壊力もアーマーが一番強い。


「アリア様が攻城攻略の主力です。その前に我々が露払いをせねばなりませんな」

「俺の部隊は白兵戦得意の連中を集めている。だから俺の本隊が城外部隊を急襲して撃退しよう。シュナイゼン大佐のほうは王城門前にいる一団を蹴散らす。その方針でどうだ?」

「了解」

「こちらはアーマー10機貰う。それだけあれば二時間かからない」

「では残り15機はこちらで運用いたしましょう」


 歩兵はミタスが1500、シュナイゼンが1800率いる事となった。シュナイゼンのほうが兵力は多いが、これは彼のほうが作戦主力となるからだ。この後アリア率いる最大主力部隊、歩兵3000、アーマー40機が続くことになっている。


「差し出た意見ですが、王城攻略は限られた精鋭部隊による攻略となるでしょう。ミタス少将は重要な戦力……あまり無理はなさらず、必ず攻略戦には間に合ってください」


 シュナイゼンは顔色変えずそういってミタスと別れた。ミタスは愛用の戦斧槍を肩に抱きながら苦笑した。簡単にいうが、連戦続きである。しかしシュナイゼンの考えるところ、王城攻略戦にはミタスの戦力が絶対に必要だと言っている。

「じゃあできるだけ早く貴族の馬鹿将軍をぶっ殺してこないとな」

 そういうとミタスも自分の部隊に戻っていった。


 ミタスの行動は早かった。

 もっともバロウズ伯が陣取る城外陣地が近かったこともある。


 ミタスは貴下のアーマー10機を先頭に並べ、レーザービームによる圧倒的な砲戦で敵陣前衛部隊を蹴散らし足並みを崩すと、強力な白兵部隊を率いて敵陣の中に飛び込んだ。それと並行してカルレント少佐率いる第二分隊1000を敵陣後方に配置し挟撃戦を展開した。


ミタスが戦術家として優れていたのは、攻撃に時差をつけ二段階にした事だろう。まず前面のアーマー部隊の猛攻撃があり、壊乱したのを見計らい逃げ腰となったところ後方のカルレント隊が突撃し完全にバロウズ伯の部隊を混乱の極に落とし込んだ。前後挟まれ恐怖を覚えた兵は何の抵抗力も持たない。


「馬鹿貴族の首を討ち取れ!!」


 そしてミタスを先頭にした部隊主力が混乱する貴族評議会軍に襲い掛かった。もはや戦闘ではなく狩りであり、一方的な戦闘であった。狩りと違う点は、降伏が許されている事くらいだろう。戦意を失い死の恐怖に怯えた貴族評議軍は、幹部たちの制御を振り払い続々と降伏していった。



 が……この期に及んでもバロウズ伯の気焔は衰えなかった。



「降伏するような愚物は叩き切ってしまえ!!」


 バロウズは家伝の鉄鎧に身を固め、大剣を握り作戦室にしていた屋敷を飛び出した。直属の白兵戦精鋭の部下たちも揃いの鉄の胴鎧を身につけ、バロウズに従っている。

 ちなみにこの時代、刀剣の精度も高く銃もあり、かつ身につけていてはアーマーにも乗れないので鉄の鎧など着る軍隊などほとんどなく時代錯誤も甚だしいのだが、本人たちはいたって真面目だ。


「貴族としての誇りはどこにやったのか! 平民やアダの軍隊など小うるさい蝿も同然だ! 我ら選ばれた貴族を前に平伏するのが本来だ! 臆し降するなどもはや人ではない!」


 そのような事を叫びながら陣中闊歩していた。この勢いに、多少ミタス軍歩兵も怯んだ。


 が、これだけ目立てば当然その存在はミタスの知るところとなった。



「まあ待て。手を出さず叫ばせろ。俺に考えがある」


 取り巻くだけで手を出さないよう命じた後、ミタスは愛用の戦斧槍を扱きながら駆け出した。


 ミタス隊が戦う気配を見せず周囲を取り囲むだけの状態になり、バロウズ伯の周囲には逃げ集まった貴族軍兵士たちで膨れ上がった。バロウズはミタス隊を「平民の腰抜けども!」と叫びながら自尊心を満足させていた。これが全てミタスの演出である事に矮小な頭脳しか持たないバロウズは気付いていなかった。


 やがてミタスが姿を現した。ミタスは周りの兵士たちを制し、一人悠々とバロウズに向かって進んだ。



「自分はトジーユン=ミタス少将。平民の司令官だ」


「ほう。貴様が名前だけは高名なトジーユン=ミタスか。成程泥人形のような平民共を束ねていい気になっている増長者そのものの不敵で不届きな面構えだな!」

「一度だけ聞くが、降伏する気はないのだな? 降伏すれば命以外の全てを失うが何より大事な命だけは保証してやらんでもないが?」

「戯れ者奴! 貴族が貴族の誇りと地位を捨ててどうして生きている意味がある! 貴様等に乞うて永らえる命に興味などないわ!!」

「分かった。では僭越ながら俺がお相手して差し上げよう。名誉ある一騎打ちだ。光栄だろう」

「ふん! 増長するな! お前など私自身が手を下す価値があるものか!! 私の部下で十分だ若造!」


「怖いのか?」

「誰が怖いか!!」


「じゃあこうしてやろう」そういうとミタスは愛用の戦斧槍を後ろに控える兵士に渡すと、兵士から一般兵用のなんの変哲もない普通の短剣(といっても刃渡りが60cmくらいはあるが)を受け取った。

「偉大な伯爵閣下に敬意を表し、無粋な戦斧槍ではなくこの短剣でお相手しよう。さらに、もし俺を倒すことが出来たらこの場から無傷で解放して差し上げる。我が軍は一切伯爵閣下に手は出さない」



「ほう……」



 それを聞き僅かにバロウズは頬を緩ませた。さすがにこの男もここまで囲まれた状況で無事突破する自信はなかったに違いない。ミタスの言い分も悪くない。一騎打ちこそ将としての花道であり、それを破り平民共の中を悠々堂々と王城に帰るのも一興ではないか。幸いバロウズは大きな体躯を誇り軍隊を任されるだけはあって剣術は幼少の頃から習い自信がある。


「受けてやる。有り難く思え平民!」


 そういうとバロウズは刃渡り1mもある大剣を両手で握り締め、ミタスの前に立った。そして堂々と上段に剣を構えじわりじわりと間を詰めた。成程動きは玄人のようだ。


「では伯爵閣下。いつでもどうぞ」

 無造作に片手で短剣を構えるミタス。まったく隙だらけだ。周りの兵士たちもミタスのあまりの余裕っぷりに内心肝を冷やしながら両者を見た。



 が……ミタスの動作を「隙だらけ」と見たのは、所詮格が違いすぎたのだろう。



「うおぉぉぉっっ!!」

 バロウズが気合と共に大剣を構え突進した時……俄かにミタスの表情が変わった。


 ミタスは大地を蹴った。


 そして、一瞬の内にバロウズの懐に飛び込むと、目にも留まらぬ速さで短剣を振り下ろし、一瞬にしてバロウズの面長な頭部をかち割ると、そのまま短剣を腹まで斬り下げた。



 両軍とも、その動きの凄まじさに言葉を失い、見入った。



 バロウズはあまりに一瞬の出来事に自分が死んだことを認識できなかったに違いない。大剣を振り上げたまま突然動きが止まり、そのまま横倒しに倒れた。身につけていた鉄鎧が派手な音を立てた時、兵士たちは何が起こったのか理解した。



 次の瞬間、ミタス隊は割れんばかりの喝采と歓声をあげた。



 そして将を失った貴族評議軍はこの瞬間完全に戦意を失い、逃亡する意欲すら失い、次々と降伏していった。


「姫さんの行動の効果が分かったよ」

 ミタスは短剣を兵士に返しながら苦笑した。こういう劇的な光景で戦意を挫く戦術は、アリアの戦闘中の演説行為に似た意図から出たものだ。ミタスはアリアに倣ってみたわけである。


 それにしてもミタスの剣術の腕は凄まじい。本来急所を切り裂いたり突き殺す事を主目的に作られた片手持ちの短剣で正面からの面打ちで頭部を両断し、腹まで切り裂いた。しかもバロウズが身に纏っていた鉄鎧を紙のように切り裂いたのだ。生半可な膂力ではない。もし愛用の戦斧槍であれば見事に真っ二つに両断し、バロウズをただの肉塊に変えていただろう。



 こうしてミタス隊は1時間28分という短時間で城外のバロウズ伯の部隊を無力化させた。



 ミタスは後始末をカルレント少佐に託すと、次の攻略地である南門に進めよう命じ、ミタス本人は一人アリア軍本隊に合流すべく移動を開始した。

 



 その頃、シュナイゼン隊が城門に取り付き激戦の最中にあった。



 


『マドリード戦記』 王女革命編 27 革命⑤でした。


ついに革命世相が始まりました。


今回はミタスがメインでした。


もっとも、武人としてはレベル違いの圧勝でしたが。

思えば元々比類なき白兵戦の達人ということでアリアに見出されたのがミタスです。残念ながらこの革命編では彼に勝てる敵武将はいないんですよね……匹敵するのはナディアだけなんです。ナディアは同僚だし……そう考えると、アリア様の周りは超人・英雄が元々集まっていたわけですね。


まぁ「マドリード戦記」はぶっとんだ武人の物語でなく、あくまで戦争戦記なので戦略戦術のほうが比重をおいています。「蒼の伝説」のほうはちょっと個人武力が語られます。主人公アーガス君は元々白兵とアーマーの達人から立身していくので……。……いつか書きます(笑


ということで本格的に革命が始まりました。


これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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